退職決意と不妊治療休暇
会社の大先輩が体外受精1回目で成功されていた。
その先輩に
「まだ若いし諦める年齢でも無い。もったいないよ」と言われた事があった。
今まで【もったいない】という考えは私には無かった。目から鱗。
やってみてもいいのかも!と前向きに考えるようになったきっかけの一言だった。
ここでやめて、あと10年経った時に「やっぱりあの時もっと治療頑張っておけばよかった」と思うかもしれない。「今やり切ろう」と思った。
その先輩の子供は可愛い。
ご主人もすごく可愛がっていた。
体外受精1回目でその子が産まれた、尊い。
やってみるのはいいが仕事との両立は無理だ。
周りにも迷惑がかかるし、ストレス過多な職場。
仕事に追われ、精神的にも追い詰められる感じが毎日続く。
でも仕事を続けていたのは、やりがいもあったし、妊娠した時の育児給付金や育児休暇の為。
(妊娠もしていないのにやたらと知識だけ増える笑)
そして不妊治療からの逃げ。
仕事はしんどかったが、お給料も貰えて問題が起きても何かしら解決出来る。不妊治療はお金は飛んでいき、解決策どころか原因もぼやっとしてるのに。
が、育児給付金や育休のために働いても、肝心の妊娠しないんじゃ意味が無い。
「環境を変えないと。これじゃ絶対妊娠出来ない。仕事は辞めよう」
何ヶ月も毎日自分に問い、悩んで悩んでそう決めた。
けど、もう少しお金も貯めないと、と思っていた頃に新部署が立ち上がる話が出た。仕事内容は今と変わらない。
「やってみたい。環境も変わるしいいかも」と、異動を即決した。
まぁ想像以上に大変で、帰宅は22時過ぎ。お昼休みも早めに切り上げて、小休憩も取らずに仕事に追われた。
働き方改革で煩い中、残業時間は60時間を超える事もあった。
昇進の話もあったが、正直に不妊治療をしていてあまり長く勤める気が無いことを伝え断った。
止められて、粘られるかと思ったけど、
「それはしゃーないな。旦那さんとか旦那さんの両親とかもおる事やしな。子供は可愛いからなぁ。こんな事大きな声じゃ言われへんけど、それでいいと思うで。でも、もう少しおってな笑」
初めてこの上司に感謝した笑
きっと、家族を大切にしてるんだろうな。
今の状態が落ち着くまではなんとかやらないと、と思い必死になった。キツすぎて病んだし辛かったし泣いたけど、職場の人達に恵まれ、みんなが頑張ってる姿を見て乗り越えられた。
ある日上司が
「来年度から不妊治療での休暇が認められるみたい!詳しい事聞いてこよか?よし、今から行ってくるわ」
と飛び出して行った。
めっちゃ今時の会社やん。
それなら辞めなくてもいいかも・・・
上司はすぐ帰って来た。飛び出して行った時の勢いは無い。
上司「あかんわ。年5日やて」
【゚Д゚】
なんやて?
5日て!笑
そんなん1ヶ月。
いや2週間で使い切ってしまうわ!
上司「取って付けたような制度やな。こんな制度やってます、っていうアピールだけや。
ほんまにこんなんじゃあかんわ。
期待させてごめんな。
しかも、その都度診断書が欲しいって規約に書いてるし。こんなん普通に有給使うわ。
なぁ?有給使うよなぁ?アホや。
もうな、辞めるしかないよな。それでいいで。
自分の人生大事にしなあかん」
と物凄く怒ってくれて気遣ってくれて、嬉しかった。
上司「不妊治療の事何も知らんやつらが考えてるならこんな事なるねん。なぁ、ニコルさん、どれくらいの期間欲しいと思う?」
「最低半年は欲しいと思います」
上司「そうやんなぁ。それくらいは絶対要るよなぁ。女性が多い職場でこれはあかんわ」
調べて見るとJALとかPanasonicなどの超大手は充実していそう。無給なのは仕方がないか。
「不妊治療してます」って言うのは言いにくいし、知られたくない。
6組に1組不妊治療をしていると言われている現代。
誰でも身近なものになる可能性がある。
友達、家族、同僚、隣人...。
制度だけじゃなくて、何より制度を使える風土が必要。
理解して欲しい。
いや、理解して欲しいなんておこがましのかもしれない。せめて尊重はして欲しい。
そしてこちらも感謝しないといけない。
数年前よりかは、不妊治療は浸透しているし、ウチの会社のようにアホみたいな制度だけど一応考えてくれてる会社も増えている。
これからの社会が変わって行くことを切に願う。