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【保存版】 輸入車(外車)に日本製の高性能なリモートエンジンスターターを自分で取り付ける手順を解説。基本構造から応用まで。

輸入車にリモートエンジンスターターを取り付ける作業は、一握りの専門ショップでなければなかなか取り扱いがありません。しかしこのように私は自分でユピテルのリモートエンジンスターターVE-E9910stをフォルクスワーゲン ゴルフ6 GTIに装着することができました。

この取り付け方法は、ワーゲンに特化した方法ではなくアウディ、BWM、ベンツ、フィアットなど様々な輸入車でも可能な取り付け手順です(注1 一部制約あり)。さらに今回の取り付けでは、エンジンのスタート/ストップに加えてテイクオーバー機能を実現しています。テイクオーバーとは、リモコンエンスタでエンジンを始動後にドアを開けて運転席に乗り込むと、そのまま車を発進して運転ができる機能です。エンスタは標準の取り付け方法ではテイクオーバーはできません。テイクオーバーが無い通常の取り付けではエンスタでスタート後はドアを開けた瞬間にエンジンが停止しますので、出発の際にはエンジンを手動でかけ直す必要があります。

(注1)一部欧州メーカーは制約があります。
  ベンツ  2021年式よりも新しい車種は対応できません  
  FiatとVolvoは2017年式よりも新しい車種は対応できません  
  BMWとRenaultは2015年式より新しい車種は対応できません

取り付けたのは国産メーカーのリモートエンジンスターターですので、電波法や車検適合のガイドラインにも準拠しています。

今回は取り付けた後、正常かつ安全に動作できることが確認できましたので国産のエンスタをできるだけ少ない予算で取り付ける手順をここに記録で残しておきます。

非対応と言われている輸入車に国産のエンスタを取り付けるまでには、リモートエンジンスターターと車両側の仕組みそのものから理解する必要がありました。そこで、せっかくですので輸入車にエンスタを取り付けるために必要な構造から解説をここに残しておきます。

ここまで書こうと考えた理由は、エンスタのしくみから理解できれば私の事例だけでなく他の輸入車にも取り付けが可能になるからです。この事例のゴルフ6はすでに生産終了した車種ですので、この車に取り付けた手順や整備記録だけ書いても参考にできる方が少ないと思います。しかし、なぜこの配線をこのように接続するのか、とか、車にはこのような機能があるのでエンスタはこのように接続するというような一般的な車に共通する構造から説明することで、いろいろな輸入車にもエンスタが取り付けができるようになると考えています。

輸入車の場合、エンスタ取付をショップへ依頼するとそれなりに技術料や工賃がかかります。取り付け方法を研究した自分から言わせると確かに必要な知識量や取り付け作業の手間は価格相応の技術料や工賃であると感じています。そのため輸入車にエンスタを取り付けるショップの価格は決して取りすぎというわけではありません。しかし、自分で取り付けると部品代だけで済みますから、おおよそショップの半額で取り付けが可能です。

今回はエンスタのしくみの理論と取り付け手順の解説を3万6000文字以上(原稿用紙で90枚分以上)、解説画像や写真は60枚以上を使い詳しく書きました。できるだけ詳しく解説を書きましたのでDIYで取り付けをする個人の方だけでなく、輸入車のエンスタ取り付けの事業に参入したいプロでも参考にできる資料であると自負しています。

また、エンスタは無人でエンジンをスタートする機材という性格上、安全対策で注意すべき点もあります。そのため安全上の注意点も説明します。

そもそも輸入車に国産のエンジンスターターを取り付けることは可能なのか?

日本車も輸入車もどちらもクルマ。本質的な内部構造はどちらも同じ。ということは輸入車に日本製のエンスタを取り付けることは可能です。
セキュリティや電装に部分的に輸入車独特の特徴はありますが、エンスタの仕組みを理解して必要な加工を行えば動きます。

国産のエンスタを輸入車に取り付けるためには、エンスタのしくみと輸入車の電装の知識の両方が必要です。両方の知識が必要となるため対応しているショップが少ないのでしょう。しかしエンスタのしくみを理解して組み上げれば個人でもインストールができます。

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リモートエンジンスターターのしくみ

取付方法を理解するためには、エンスタのしくみの基本を理解している必要があります。リモコンのボタンを押しただけでエンジンが始動するリモートエンジンスターターを後付けできるのはなぜでしょうか。

基本的なしくみをエンスタの概念図を用いて説明します。
実際にはエンジン制御を行うコンピュータであるECUなどの部品もありますが、基本概念となる部分に簡略化して説明します。

下図はエンジン系統の電装の模式図です。

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エンジン系統の電装にはイグニッションとスターターがあります。
エンジンには燃料ポンプや点火プラグ、各種バルブ制御などエンジンを動かすために必要な電装品があります。これに電気を供給するのがイグニッション系の電源です。一方でスターターはエンジン始動時にセルモーターを回すための電源です。

エンジンの始動と停止はこれらの電線をON/OFFすることで行います。そのスイッチの役目はスタートボタンやイグニッションキーです。

エンジンをスタートする手順を説明します。
スタート前のエンジンが停止している状態です。

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図をすっきりさせるめスタートボタンの絵は省略しています。
エンジン系統の電気は全てOFFです。このため、エンジンは停止しています。

次にエンジンをスタートさせます。キーをひねったりプッシュスタートボタンを押します。スタートした直後イグニッションのほうに通電をします。そして点火プラグやエンジンECUなどエンジンの動作に必要な基本的な電気が流れ始めます。
これでエンジンを起動する前の準備が整います。

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エンジンの準備が整うと(実際には1秒以下)、次にスターターの電線スイッチも入ります。こうなるとセルモーターが回転します。そしてエンジンがスタートします。

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エンジンのスタートに成功すると、スターターのスイッチがオフになります。これでセルモーターは停止します。イグニッションには電源が流れ続けていますので、エンジンは運転を継続します。

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エンジンを止めたいときはイグニッションの線をオフにします。するとエンジンを制御する電気がとまりますのでエンジンも停止します。

次はリモートエンジンスターターをつけた場合の図です。

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リモートエンジンスターターはバッテリーからプラスの電気をもらいます。そしてそのプラスの電気をイグニッション線とスターター線に割り込ませます。図のように配線すれば純正のスイッチを無視してイグニッションとスターターへ電流を流すことができるというわけです。

リモコンでスタートのボタンを押すと、リモートエンジンスターターが通常と同じ手順でイグニッションとスターター系に電流を流してエンジンを始動するというわけです。

イモビライザー解除

このように基本原理としてはイグニッションとスターターへ電流を流すだけでエンジンがかかってしまうので、盗難防止のため実際の車ではイモビライザーがついています。イモビライザーにより純正のキーと車両側が電波で通信して電子的な鍵照合をしないとエンジンがかからないようになっています。

リモートエンジンスターターでエンジンを始動する場合、車のキーはまだ車内にありませんからイモビライザーの照合ができずエンジンが始動できません。そのためリモートエンジンスターターでは前述のようなエンジン系統の電装への通電に加えて、イモビライザー解除(イモビライザーの無効化)も行います。
イモビライザー解除といってもセキュリティの確保は大事ですので、リモートエンジンスターターがエンジンを始動してアイドリングで待機する間だけイモビライザー解除が動作するようにします。

イモビライザーを解除する一番簡単な方法は、車内に合鍵を隠して格納しておくというものです。車の内部に合鍵を隠し置いておいて、エンスタを使用する時だけ車両側のイモビライザーと鍵が通信するようにします。もちろんこの施工には合鍵が1本追加で必要となります。もちろん鍵を車内に置くので見つからないような場所に隠して設置するよう注意が必要です。

もう一つのイモビライザー解除の方法は、合鍵なしで解除する方法です。これは電子的に車両側のイモビライザーを一時的に無効にする方法です。日本車の場合では国産スターターのイモビ解除オプションキットを取り付けることで可能となりますが、輸入車では工夫が必要です。

エンジンスターターを取り付けるにあたり、イモビライザー解除が最もテクニックが必要な作業です。設定もさることながら盗難防止やセキュリティも確保しなければなりません。

国産のエンスタを輸入車に取り付ける時に起きる問題とは

ユピテルのエンジンスターターは価格も良心的でありながら、車内温度やエンジンの稼働状況が分かる双方向通信も備え、飛距離も世界的にトップクラス、さらに国内の電波法に準拠し車検にも適合します。
しかし、取付適合表を見ると輸入車は一切ありません。このため、国産スターターを輸入車に取り付けるためには以下のような問題を解決する必要があります。どれも問題が難しすぎて一握りのショップ以外では輸入車への国産エンスタの取り付けは断られます。

車種別取付キットがない
輸入車用の車種別の取り付けキットや専用ハーネスの販売がないため、配線を理解して取り付けキットに頼らずに自力で配線を行い取り付ける必要があります。

合鍵を使わないイモビ解除キットがない
国産スターターには国産車用に合鍵なしでイモビ解除をするキットがオプションで用意されているのですが、輸入車用はありません。できれば輸入車でも合鍵なしでイモビ対策をしたいところです。

ドアアンロックが使用できない
エンスタのリモコンには必ずと言って良いほどスタートボタンだけでなく、ドアロックボタン/アンロックボタンも搭載されています。なぜでしょうか。

エンスタにドアアンロックの機能が搭載されているのには理由があります。エンジンが稼働中の状態では純正のリモコンキーではドアをアンロックをすることができません。これは運転中にドアロックが不意に解除されることを避けるために、ほぼどの車種でもエンジン稼働中は純正のリモコンキーによるアンロックはできないのです。

通常はこれでもなにも問題はなくむしろ安全なのですが、エンスタを取り付けた場合は少々問題が起こります。エンジンが稼働中にドアアンロックができないと言うことは、以下のように車に乗る時に困ってしまいます。
1. エンスタで遠隔からリモコンでエンジンスタート
2. 駐車場に置いている車のところまで行き、さあ乗ろうとドアをアンロックしようと試みる
3. エンジン稼働中は純正リモコンキーでドアロックが解除できないので車に乗れない(泣)

こうなってしまいます。このようになった時は、エンスタのリモコンにはエンジンを止めるボタンもありますので、いったんエンジンを止めてから純正キーでドアロック解除する方法をとらねばなりません。まぁこれでも使えなくはないのですが、いちいちエンジンを止めるのも面倒ですね。

そこで、エンスタにはドアアンロック信号を出力する配線があります。仕組みとしては、エンジン稼働中は純正リモコンキーでドアをアンロックできませんが、車内からドアアンロックボタンを押せはアンロックができます。そこで、エンスタからドアの車内側のアンロックスイッチへ配線を割り込ませてドアアンロックボタンの押下を擬似的に車内側から行います。

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エンスタにはドアのロックスイッチに割り込みを入れる電線が用意されています。これによりエンジン稼働中はエンスタのリモコンを使いドアをアンロックできるようになります。

と、ここまでドアアンロックの説明をしましたが、実は輸入車の場合はこれだけではドアのアンロックができません。日本車の場合は先ほど書いたようにドアの車内側にあるドアアンロックスイッチの配線に割り込みを入れることでドアを解錠できます。しかしセキュリティ対策が取られている輸入車の場合は、駐車後に車外からリモコンキーでドアロックした後は車内側のアンロックスイッチを押しても解錠できません。これはデッドロック機能といい、万が一駐車中に車上荒らしにウインドウガラスを割られて車内側のドアアンロックボタンを押されても、ドアロックが解錠できないという機能です。
日本よりも犯罪率が高い外国ならではのロックに対する考え方ですね。

このデッドロックに対処可能なドアアンロックの対策が輸入車には必要です。

リモートスタート時に盗難防止サイレンが鳴る
純正の盗難防止サイレンがついている車両でリモコンスタートをすると、振動検知や不正起動動作としてサイレンが鳴ってしまいます。リモートスタートをするときだけ盗難防止サイレンを一時的に止めるしくみが必要です。

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以上のように未サポートの輸入車にエンスタを取り付けるには、国産車にはない問題をクリアする必要があります。輸入車に国産スターターの取り付けをショップに依頼すると高額になるのはこのような問題を解決するために知識と経験が必要となるためです。

これらの輸入車の課題を解決して、取り付ける方法を詳しく説明していきます。
説明はリモートエンジンスターターのしくみの理論と、実際の具体的な取り付け手順の理解を深めるために、ゴルフ6の取り付け事例を交えながら解説しています。単なる施工事例ではなく、なぜこのような配線をするのかという理論から説明をすることでいろいろな車種へ応用が効くように書きました。

さらに、純正の配線にできるだけ傷をつけずに加工する方法も書きました。エンスタの施工は車両側の配線に割り込みを入れたり切断したりと結果として純正配線に傷をつけながら施工することが一般的です。しかし本記事では純正配線に一切傷をつけずに施工する独自の方法を書いています。このため、後で何もなかったようにエンスタを取り外して純正戻しをすることも可能です。これはプロショップでもやっていない方法だと思います。

解説を一部有料とした理由について
車の整備やDIYは個人では楽しい工作趣味のひとつとして成り立ちますので、できるだけ公開していろいろな方に役に立つ情報になればと考えていますが、今回はセキュリティと安全性の観点で一部有料のクローズド情報としました。

ひとつ目の理由はセキュリティです。
リモートエンジンスターターは車内に合鍵がない状態でエンジンを始動させます。これを実現するためにはイモビライザーを一時的に無効にする必要があります。防犯の観点からイモビ解除の機構について安易にコピペされることを防ぐため、イモビ解除の方法については有料記事として一般へは非公開とします。

ふたつ目の理由は安全性の確保です。
リモートエンジンスターターは無人の状態でエンジンを始動するため、安全に配慮した施工が必要です。この記事では通常の安全対策に加えて、車の整備中に不用意にエンジンが始動しないようにボンネットオープン時はエンスタを無効にするなど安全策をとっています。今回は記事の分量が多いため、記事の一部だけ適当に読んで真似して中途半端な施工を行い事故を起こされるようなことは無いようにしたいのです。いい加減な施工をしていると最悪の場合、高速道路で走行中に突然エンジンが停止することもあり大変危険です。エンスタは決して危険なものではありませんが、問題となるのは中途半端な知識でいい加減な施工をした場合です。正しい施工をすれば何の問題もありません。そのためきちんと最後まで本文を読み、安全に対する事項や試運転と動作確認の手順に関する事項も読んでいただける方を対象としたいので有料とさせていただきます。

解説の本文は約3万9000文字(原稿用紙で90枚以上)、解説画像や写真は60枚以上を使い可能な限り詳しく書きました。できるだけ詳しく解説を書きましたのでDIYで取り付けをする個人の方だけでなく、輸入車のエンスタ取り付けの事業に参入したいプロでも参考にできる資料であると自負しています。取り付けに必要な知識を全てまとめて書いていますので、本文をお読みいただければ自分であれこれ調べたり人に聞いたりする手間と時間がかなり短縮されるはずです。

では次の章から解説に入りますので、ぜひ読み進めてみください。

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全体の機器構成

はじめにリモートエンジンスターターのシステム全体の構成を説明します。どのような方法で全体を組み立てるかを理解することで、後半で説明する施工手順を理解する助けになると思います。今回は複数のパーツや機器を組み合わせてシステムを作りますので、まずは全体像と各機器がどのように連携してエンスタを実現させるのか理解しておくと、混乱せずに設置作業ができるようになります。

大まかな構成は下の図のようになります。いきなり全ての機材とシステム構成の説明をすると内容の理解が難しく感じる方もいると思い、この章ではしくみの基本の理解で必須となる必ず使用する重要な機材に絞って説明します。その他の詳しい機材と配線についてはこの章で基本を理解していただいた後で、後半で説明する具体的な施工手順にて解説します。

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