【短歌】文明がいつか滅んでも(2019年自選30首)
てりたまを持ち帰りゆく春の道きょうから我もこの町のひと
ガレージで口笛を吹く日曜のなんかそこはかとなくアメリカ
続刊のために空けてる本棚のドーナツの穴にも似たあかるさ
ガスト行こうあんな男はもうやめてあたしと山盛りポテト食べよう
キープってなんだよいつか使うかもしれない伊勢丹の袋かよ
ボールペン売り場の紙のひとびとの嘆きのごときあああああああ
ドロケイのヒーローだった山本をこんな記事では見たくなかった
そんな恋忘れちゃいなよサビ以外鼻歌になる洋楽みたいに
しらす丼のしらす全部と目が合うの嫌でしょ私を知りすぎないで
なあソジュン、ニュース見てるかおれはあの夏の握手を思い出したよ
ナビきみは知らないんだねそこにもう道は、 三陸のうみ青いね
テニスとは聞くものだった図書室の窓辺まで来る正しさとして
なあガリレオだれも宇宙にこぼさない力を愛と呼んでいいかな
文明がいつか滅んでもキスをしたロッテリアだけ遺ってほしい
いつまでも仕舞われている美しい空き箱みたいに生きてたまるか
プレゼント用か尋ねるマニュアルできょうも誰かの記念日と知る
やたら強いやつばかり居るクリスマスイブのネトゲの戦場に雪
逆エビの決められ方で盛り上がるおとうとだけの二次会がある
おい何もないふるさとがイオンしかないふるさとに進化してるぞ
常夏のくにより来たる旅客機のひとそれぞれの厚着あざやか
草まくら終わりたくない旅がありまだ倒さないままのラスボス
さようなら誰かのセーブデータ1 さよならもう勇者の来ない国
脚だけがやたら多くて組織図はへんな動物みたいな形
新人が会社を辞めて加湿器の水をあの子が替えてたと知る
受付の永山さんも辞め私語をしないペッパーくんが残った
会社員欄に✓をするときの選ばなかったほうのま白さ
たぶんきみの前世はへんな飛行機で空を目指して死んだひとだね
勧められるままに動画を乗り継いでチワワからサバンナまで来ていた
雨それは雲それは海それは川それはあの日の涙 おかえり
アカウント誤爆しているフォロワーの自撮りがちょっと可愛くて春