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都会の空は第二のふるさと

7年住んだこの街は、わたしにとって自由の象徴だった。
引越しそして同棲にあたって、新居へのワクワクはもちろんある。けれど初めて手に入れた自由と、便利さと、気軽さと、この街を離れるのは少しさみしい。


***


引越しまであと3週間。
今日は午前中に引越し用段ボールが届くとあって、少し早起きした。
正確には、まだ暗いうちに起きてしまって普段なら二度寝をするところ、そのまま起きていることにした。

少しずつ明るくなり、電車の音が聞こえ始めた。
この街ともあと少しだし、せっかくだから早朝の街を散策しようか、いや今までやったことないことをあえてやる必要もないか。
結局いつも通りコンビニへ向かうために服を着た。

土曜朝7時過ぎの街は静かで、すれ違う人もまばら。
街がはっきり見える気がした。玄関の電気がついている家、もう起きているのか昨日消し忘れたのかどちらだろうか。

小学生の兄弟か、二人組が自転車で通り過ぎて行った。子供は朝が早い。ラジオ体操でもないだろうに、こんな早くにどこにいくのだろう。

ローソンについた。レタスサンドを買う。ホットコーヒーを注文する。まわりのコンビニは外国店員ばかりだけど、このローソンは日本店員さんに会うことが多い。

店を出ると、さきほど通り過ぎた家のベランダにカラフルなキャラクターバスタオルがたくさん干してあった。向かう時はまだなかったはず、この5分にも満たない間に登場したのかな。お父さんお母さんの朝も早い。


7年住んだこの街は、私にとっては独身時代と自由の象徴。
だけど、もちろん家族連れもたくさん住んでいて、いろんな人がたぶんこの街を好きで、そんなことをなんとなく考えながらゆっくり歩いた。


*****


家近くの十字路までくると、景色に違和感があった。隣の建設中のマンションの上のほう、足場が少し撤去されている。昨日の夜は暗くて見えなかったし、朝コンビニに出るときは背を向けていたからわからなかった。

今まで隠れていた壁が表れた。そうか、紺色のマンションだったんだ。

1年半ほど前か、隣の空き家が撤去されて13階建てマンションが建つと知った時はショックだった。実際、工事の音はうるさく、日当たりも悪くなったし、あまりいいことはなかったけど、完成を見届けてからこの街を去れるのはなんだかうれしい。


7年もいれば、この街を第二のふるさとと呼んでもよいだろう。やはり2番目なので、変わらないでいてほしいとか、どんどん発展してほしいとか、強い気持ちまではないけれど。
ふらっと散歩が楽しい街、のままでいてほしい。


*****


早起きのせいかお腹がすいており、レタスサンドはすぐになくなった。
コーヒーを飲み終わって、ぼーっとテレビをみる。
ニュース、朝ドラ総集編、健康情報。

そうこうしていると、ピンポンがなった。
朝9時、引越し業者の方の朝も、早いなあ。


*****


最近は結婚の話も親の説得完了まではいかないものの、方向性としては落ち着いてきた。本当に本当によかったが、その間様々出来事はあった。自分の喜怒哀楽の起伏も激しく、平日も土日も空いた時間は回復のために寝ていることが多かった。

空は久しぶりに梅雨っぽいが、たまった洗濯と、少しずつ引っ越しの準備がきっとはかどる。






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