便利すぎる舞台役者が足を止めた話。

突然ですが、
私は舞台をがむしゃらに
やっていた日々がありました。

よく出演させてもらっていた
舞台を作っている方が、
舞台をそんなに観ない方でも観やすくて
面白い作品だと私も思っていたので、
皆で大きくなれたらいいなと
夢を抱いてたのを覚えてます。

どうして立ち止まったのか

簡単に言うと、
現実的に収入が厳しいのと…
なかなか強引なコネや
利用しあいの駆け引きの結果に
振り回されていくうちに
段々舞台が終わる日が
待ち遠しくなってしまい、
そんな自分に薄々気づきながらも
ブログ上やお客様の前では
“やりたいことをやれている
楽しい毎日を送る自分“のふりも
疲れてしまいました。

舞台にまた立ちたい。
早く立たないと、私なんて忘れられてしまう。
でも、また面倒ばかりの舞台で
脚本や作品が歪んでいき、
時間だけ過ぎてしまったどうしよう。
お金がない。気持ちの余裕もない。

そして誰にもどこにも、
その気持ちを出せませんでした。

今考えても、そんな状況は
立ち止まって離れてから考える
の一択しか思いつきません。

舞台はまず食べてはいけない

そもそも舞台役者のギャラは
大体、自分を選んでくれた
お客様が購入してくださった
チケットの枚数×○円が
ギャラになるチケットバックが多く、
私も大抵そのパターンでした。

普段はアイドルでもないし、
舞台の上では3枚目がほとんどな私は
なかなかチケットの枚数を
重ねにくいポジションで…
それでも続けているうちに、
早い話がお笑い要員の私を
応援してくださる方に出会えたのは
本当に嬉しかったです。

後はもう友達や家族を呼んで
枚数重ねたりしていましたね。

枚数でそんなに戦力になれないなら、
せめて舞台に尽くそうと
与えられたアドリブパートや
3枚目の仕事を自分なりにはやりました。

初めてご一緒する役者さんが
仕事しやすいよう、感じのいい人を
装ったりしてる時期もありました。
本当は人見知りのおたくです。

そして便利すぎる私になる

何回も出演している内に、
ギャラの詳細を知らないまま
出演が決まるようになりました。

一時期だけ個人事務所に入っていたものの、
ほぼフリーランスだったので
ギャラに関しては事前に自分で確認、
時には交渉するという選択を
知らないままで駆け抜けてしまいました。
今思うと、これがいけないんですが。

相手が芸術家肌というか、
時々なかなか気難しい人だったのもあり
正直聞きづらかったのもあります…

気難しい人という表現がオブラートなので
ちょっと書こうとしたんですけど、
割とこれ書いていいのかな?告発?
みたいになりそうなので…このままで。
今は泣いている人がいないといいな。

一時期だけ、枚数に関わらず
1公演いくらというステージバック方式で
チケットバックの場合よりも
少し多く頂けたことがあったのもあって、
そのまま聞かないままになってしまいました。

ハイリスクノーリターン

ただ、舞台が大きくなると
リスクもそのぶん上がりまして…

純粋に劇場を借りるだけでも
今までとは違うお金がかかるし、
出演者も集客力ある方を呼ばないと
肝心のたくさんの席を埋められないので
ギャラも出番も偏りが出てきます。

それだけ偏らせてリターンが
確実だったらまだよかったんですが…

偏らせた方々が蓋を開けてみれば
集客力が驚きの少なさだったり、
コイツ、いいっすよ!
という根拠なき他人のオススメを
鵜呑みにしてメインに抜擢してみれば、
なかなかの棒で指摘しても掴めず…
何が…いいんだ⁉︎という
珍事が起きたりとまぁ大変そうでした。

愛人でも戦力でもない私は
大きい舞台になると、
はい、稽古初日に台詞全部入った!
ってレベルに縮小されますが
何かまたやらねば…と、
相変わらずいい人ぶってましたね。

その時は地方公演もあったので、
本番期間も長く、いつも以上に大変で。

ギャラの高さや事務所の力が強いと
移動は飛行機や新幹線、宿も1人部屋。
それに該当しないと夜行バス&2−3人部屋。

もちろん私は後者でした。

地方公演は本番が終わっても、
劇場以外でも気は抜けず…
夜は部屋を抜け出して
街へ出ようとする未成年ちゃんを
点呼や連携プレーで食い止めたり。
この辺は頼まれてやってましたね。
私、便利すぎるので。

千秋楽後もすぐに劇場の片付けを始め、
新幹線&飛行機組が間に合うよう
残ったやることを引き継ぎ、
退館時間内に何とか作業完了。

ひと息つく暇もなく、
次は10数人を引き連れて
夜行バスに乗り込むタイムアタック。

ご当地ご飯を味わう余裕はなく、
慌ててコンビニで遅い夕飯を買い、
バスに乗ったら食べようね!と
年下の女の子達に言い聞かせ、
何とかバスに乗ろうとすると
“夜間は食べ物の持ち込み禁止“
とストップをかけられ
大きい荷物と一緒に
しまわれてしまったのでした。

なんて、本当にかなり色々でしたね。

後から知った自分の報酬

ちょうど同じ年に、
地球の裏側まで1人で行ってて
色々見え方が変わった自覚はあったものの、
(それについてもいつか書きたいです)
今後どうしようかな…と過ごしていたら

ある日突然メールが届き、
精算に関してとのことだったので
開けてみたら…内容うろ覚えですが短く、

色々大変なことがあって
結局は赤字でした。

なので今回のギャラは0円です。

みたいな文章と数字を見た瞬間、
心がひやっとしたのを今でも覚えています。

0円…

大きな劇場かつ地方公演だし、
思っていたより枚数が
のびてない人もいるから集客も頑張って!と
メールを貰ったことがあり、
はい!頑張ります!○○枚は届かせます!と
返したことがあるんですが…

本当はもっと面白い作品にできるのに!
と思ってしまっているのに、
力も出番も台詞も少ない自分では
どうにもできない舞台に友人知人を呼べず…
集客はメインの方々が頑張ってくださーいと
途中で諦めてしまったので、
宣言していた○○枚は届かなかったかと。

だから0円という評価
だったのかもしれないです。

目が覚めてしまったあとは

"自分はここで大切にされてはいない"
"このまま耐え続けても何も変わらない"
"0円のギャラは仕事と呼べるのか?"
"それならあの時の私は何をしていた?"
"ボランティア…???"

等、自分がいかにふわふわした希望を
追いかけていたかに気づきました。
たくさん闇も見てきていたのに。

便利すぎる私はついに
消費つくされてしまったのでした。

しばらくして何かの舞台の
オファーを頂いた時に
それっぽい理由を並べて
辞退させてもらい、終わりました。

もう一度別の機会でお誘い頂いた時、
"プライベート落ち着いたので
もう精神の安定は大丈夫です。"
みたいな文章が書かれていたけど
それを鵜呑みにしてじゃあ出ます!
とはならず、地に足ついてました。

前回のギャラには触れられなかったので、
ある意味0円は彼の正当な評価なのか。

収入の少なさは本当にキツかったのと、
あまりにもお金が無くて勢いで始めたバイトで
また新たな世界を知ったり、
今の自分に繋がることもありました。

お金も時間もなかった時、
一時期は稽古終わりから朝まで
働いて始発で帰ったりもしてましたね。

舞台から逃げ、馬車馬のように働いてたら
お金があるのが嬉しくて嬉しくて、
江戸っ子のように生きる散財期もありました。

単純すぎてお恥ずかしい。
その話もいずれまた正直に。

今ではその時期も過ぎて、
収支管理や貯金を頑張っています。

暗い気持ちを出さないまま
そっと舞台から逃げたのに、
今更こんな風に急に書いてしまって…
応援してくれていた方々を
がっかりさせてしまうかなと
申し訳ない気持ちもありますが、
黙っているのもなんだか便利すぎるし、
あったことに変わりはないけど
私は今の私のほうが
ちゃんと自分で自分を守れて
好きだと思っているので書きました。

何かちゃんと書こうと思った時に
これしか出てこなかったのもあります。

もう5年以上前の話ですし、
ブラック企業から離れられて
やったね!よかったね!くらいの
かる~い感じで是非。ゆるゆるとね。

おかげでメンタル強くなったし、
他の場所でも便利に使われにくくなり、
あの日々は無駄じゃないです。

長くなってしまいましたね。
ここまで読んでくださって
ありがとうございます。

次は何について書こうかな。

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