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『吉凶』

私は占い師 統計学とかそういう物では無く
その人の人生の未来、過去が一目見ただけで分かる。

私は30年前に妻を亡くしている。
昔は商社マンとして働いていたのだが妻を亡くしてから働く気力を失い会社を辞めてしまった。

途方に暮れ、公園のベンチに座り子供達が遊んでいる様子を眺めていると「あ、この子コケそうだな...」とか「この子塾をサボって公園で遊んでいるな...」とか小さな予感が的中するようになった。

些細なきっかけで自分は何かが『視える』そんな存在であること気づいた。

次第に自分の能力に気づき占い師になった。
占い師を初めて29年。段々クチコミで話題になり行列ができる程になった。

しかし最近はこのご時世もあり客が一気に遠のいた。

すると1人の客が来た。
「私の前世を占って下さい」

「分かりました
では私の目を見つめて下さい」

「なんかチョット緊張しますね」

なんと言う事だ。
その人の前世は私の妻だった。 
よく見てみると目の下にあるホクロの位置や笑った時にできるエクボが全く同じだった。

「あなたの命のせいで僕の妻は亡くなってしまったんだ」

そう僕は心の中で思ったが平静を装った。

「あなたの前世は小さな鳥で....」

僕はデタラメを語り続けた。
本当の事を言ってしまうと今にも泣き崩れてしまいそうになるから。

そして占いは終わった。
彼女は店を出る前にこう言った。

「気付いてくれなかったんだね」

彼女は走って店を出た。
彼女は手相を見る時に外した指輪を店の中に忘れていた。

僕はそれを握りしめ走って追いかけた。




「ありがとうわざわざ追いかけてくれて」

「.......」

「私結婚するんだ」

彼女は指輪をはめていた。

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