【復習Tシャツ】881文字 ⑰
私と二階堂くんは駅のホームで電車を待っていた。
「ふあぁ~、眠い」
「山本さん、最近あくび多くない?」
「ごめん。ここのところ熟睡できなくて。毎晩変な夢を見るの」
「どんな?」
「最初は駅のホームで電車を待ってるの。
電車に乗ると知らない人から『復習できたか?』って聞かれて。
できてませんって答えたら『もう一度やり直し』って言われるの。そして気づいたら、また同じ駅のホームにいるの」
「それって何番線?」
「4番線だったような」
「今、俺たち4番線に立ってる」
ゴトンゴトン、キィーー
電車がホームに到着した。私と二階堂くんが車両に乗り込むと扉が閉まった。他にも乗客がいたはずなのに、乗車したのは私たちだけだった。
誰もいない車両。電車が走り出す。そのとき背後から声がした。
「ちゃんと復習できたか?」
Tシャツを着た若い男が話し掛けてきた。私は夢と同じように答えた。
「できてま…」
途中、二階堂くんが遮った。
「おまえ復習Tシャツだろ?」
男は驚いたように目を丸くして、くるりと背を向けて走り出した。
「山本さん追いかけよう!」
私はわけもわからず二階堂くんと一緒に復習Tシャツを追い掛ける。
「復習Tシャツってなに?!」
「学生の頃、怪談話で聞いたことがあるんだ。4番ホームの4番目の車両に夕方の4時に乗ると、見たことのないつり革が現れる。そのつり革につかまると復習Tシャツに取り憑かれる」
「私たち取り憑かれてるの?!」
「山本さんだけ」
「やだ泣きそう!」
復習T シャツは車両間のドアを開けて、後ろの車両へ逃げて行く。
「どうしたらいいの?!」
「Tシャツに問題が出るから答えて!!」
復習Tシャツの背中に手書きの黒い文字が浮き上がる。
「英単語の意味を答えよ?」
私は息を切らしながら答える。答えたら次の問題が浮き上がる、そして答える。そうしているうちに最後の問題を解いたらしい、復習T シャツの足がピタっと止まった。
「復習できたね、おめでとう」
復習T シャツは半透明になり黒い影になって消えた。床には色褪せた単語帳が残されていた。
「っていう夢をみたんだけど、二階堂くん聞いてる?」
「聞いてる、ふあぁ~、眠い」
リングつきの単語帳って今時の人使うのかな?
スマホがなかった世代なので、単語はもっぱら手書きの単語帳でした。
懐かしいですね~(o^―^o)