【彦星誘拐】862文字 ⑳
昨日、部長が溺愛している飼い犬が脱走した。部長は落胆し能面のような顔で出社してきた。あまりに気の毒で、私と二階堂くんは犬探しを手伝うことにした。
日曜日、人通りの多い商店街で二階堂くんと合流。
「山本さんおはよ。犬の特徴は?」
「犬種はパグで、名前はひこぼし」
「彦星?」
二階堂くんの顔に?マークが出た。私は思わずププっと笑ってしまった。
「ちなみに今日は7月7日。彦星見つけたら良い事あるかも」
私たちは商店街を歩きながら「ひこぼしーー!!」と名前を叫ぶ。そのたびにすれ違う人たちから不思議な顔をされた。小学生のグループにはクスクスと笑われる。その中の一人が私たちに話し掛けてきた。
「お姉さん彦星探してるの?」
「彦星っていう犬がいなくなったの」
私はスマホの写真を見せた。
「こんな顔なんだけど知らない?」
「知ってる。さっきコロッケ屋さんの前にいたよ。でもおじさんが抱っこして連れて行った」
私たちは小学生にお礼を言ってコロッケ屋へ走った。
「親切な人だったらいいけど、そのまま連れ去りだったらどうしよう」
「彦星誘拐?」
コロッケ屋に到着すると、店主に彦星について尋ねた。
「ああ、さっき中年男性が連れて行ったよ。ドッグランがどうのとか言ってたな」
私と二階堂くんは商店街を抜けた先にあるドッグランへ急いだ。そこは小さな空き地にフェンスを張ったシンプルな施設だった。奥のベンチに男性とパグを発見。私は慎重に男性に話し掛けた。
「ちょっとお聞きしたいのですが。そのパグの事なんですけど、知り合いの彦星にそっくりで…」
「ああ、よかった!飼い主探してたんですよ。ドッグランで何度か見たことのある犬だったので、ここに来れば何かわかると思って。正解でしたね!」
こうして私たちは無事彦星を保護した。近くの公園で待っていた部長に彦星を引き渡す。部長は彦星を抱きしめると号泣した。
「う、うっ、ありがとう!!」
「部長よかったですね」
私も思わず涙ぐむ。
「二人にはいつか必ずお礼するよ。でもその前にもう一つ頼み事していいかな?」
「なんですか?」
「ついさっき織姫が脱走した」
#二階堂くんのショートショート 20話 最終話完成しました✨
最後は楽しいお話にして、これからも二階堂くんの日常は続く…そんな感じで終わらせました。
だいたい三日坊主な私が、よく20話まで続いたなぁと思います。それもこれも 全部ぜ~んぶ #毎週ショートショートnote のおかげです。
毎週きちんとお題を出してくれて、締切も設定してくれて、たらはかに様ありがとうございます!
来週からは普通のショートショートがんばりますヾ(*´∀`*)ノ