【記憶冷凍】811文字 ⑫
二階堂は昭和に建てられた公立図書館の扉を開けた。開館直後で利用者はほとんどいない。
正面の壁一面はガラス張りで中庭の新緑が見える。右側には本棚が何列か並んでいて奥まで続いていた。二階堂はそれとは反対の左隅にある”図書館蔵書検索コーナー”で立ち止まった。
長机の上に古いデスクトップパソコンが3台並んでいる。二階堂は中央のパソコンの前に座ると、画面に向かって話し掛けた。
「カノン、久しぶり」
パソコンのメモが起動して文字で答えた。
”二階堂さま、お久しぶりです。高校の卒業式以来ですね”
「そうだっけ?懐かしいな。あの頃は頻繁にカノンに会ってたよな」
二階堂はパーカーのフードを整えながら微笑んだ。
"今日はどんな御用でしょうか?”
「10代の頃に預けた記憶を受け取りに来たんだ」
”10代の頃の記憶冷凍ですね。検索してみます”
パソコン画面に検索結果が次から次へと出てくる。その中の一つにカーソルが移動した。
”二階堂さま、検索結果が出ました。タイトルは『高校生の二階堂』あらすじは『人には見えない物が見える 人には聞こえない声が聞こえる苦悩』です。こちらを解凍してもよろしいですか?”
「いいよ」
”解凍開始は今夜0時です。心身が眠っている状態で解凍が始まります。必ずその時間までに深い眠りについてください”
「了解。」
”二階堂さま、過去を背負うことが強さに繋がるとは限りません。
朝になって、もしもその記憶を重く感じましたら再びカノンがお預かりします。遠慮なさらずに、お申し付けください”
「大丈夫だよ、カノン。俺、大人になったから強さの本当の意味わかってるよ。経験を重ねて、暗い過去の1ページを受け取る準備ができたんだ。汚れてボロボロな1ページだと思うけど、今の俺なら修復できるから」
”そうですか、わかりました。
二階堂さま、人生の本は美しくなくてもいいのです。輝くものが1ページあれば充分です。唯一無二の物語を大切になさってください。それではまた”
【記憶冷凍】連想しやすいお題だわ(*´▽`*)
って思ったけど、いざ考えるとう~ん💧ってなりました(笑)
10代の頃、少年漫画の影響で鍛えれば鍛えるほど強くなると思ってましたけど、大人になって振り返ってみると、ほどほどが一番だなと思う。強さの意味って成長と共に変わってきますよね~(笑)