【文学トリマー】892文字 ⑬
私はいつものカフェでタンブラーを片手に空席を探した。
カウンターに見覚えのある背中があった。二階堂くんだった。本を読みながらアイスコーヒーを飲んでいる。私は二階堂くんの肩を軽く叩いた。
「二階堂くん!」
「山本さん?!偶然」
「ここで読書?」
「そう。家だと集中できないから」
私は二階堂くんの隣に座って、トートバッグから本を取り出した。
「私も。図書館で借りた本読もうと思って。隣で読んでいい?」
「いいよ」
私たちはそれぞれ読書に集中した。何ページか読んだところで見たことのない栞が出てきた。前の借主の物かもしれない。素材は和紙で紫陽花の絵が描かれている。私は目を休める為にその栞を挟んで本を閉じた。
そして隣の二階堂くんを横目でそっと見た。
(相変わらず綺麗な横顔だなぁ。二階堂くんってどこにでもいそうな普通の20代だけど、そう思ってたけど意外とかっこいい?案外モテる?どうなんだろう…)
再び読書に戻ろうと本を開いたとき、私の口が勝手に動いた。
「二階堂くんのことが気になる…」
私は慌てて自分の口を両手で塞いだ。
(私、今なんて言った?!誤解されそう!)
「あの、二階堂くん違…綺麗な横顔に見惚れてしまうの…」
私は再び口を塞いだ。
(また勝手に?!どうなってるの?!)
二階堂くんは本を閉じて私に視線を向けた。私の瞳の奥を覗き込むようにじっと見つめる。そして人差し指を唇に当てて静かにするようジェスチャーで伝えてきた。
(なっ、なに?!)
真剣な眼差しにたじろぐ。体温が急上昇して耳が熱くなってきた。
二階堂くんは私の手から本を離すと、ページをめくり栞を手に取った。
「もう話していいよ」
「今のなんだったの?無意識に口から言葉が出たの」
「古い栞って文学トリマーになるって知ってる?」
「文学トリマー?」
「長い間、純文学の本に挟まれた栞は言葉を学んで、持ち主の頭ん中のモヤモヤを言語化する能力を得るんだ。その栞のことを文学トリマーって言うんだ」
「だから無意識に言葉が出たってこと?そんな不思議なことってある?」
「まあ、信じる信じないは自由だから。俺は信じるけどね。山本さん、俺のこと…」
二階堂くんは片手で自分の口を塞いだ。
『文学』と『トリマー』って組み合わせが、すごく面白かったです。
不思議なお題のおかげで、自分の想像の枠を超える物語ができるので本当にたすかってます。
大変だけど、できた瞬間すごく楽しくて。
私は毎週出るお題にウキウキしております(*´▽`*)✨
初心者の方は最初は難しいと思うかもしれませんけど(私も初心者ですけど💧)、徐々に慣れて発想力が鍛えられて楽しくなりますよ~💕