見出し画像

10月17日うちの子記念日

2021年2月、縁あって四国の香川に移り住んだ私。相方の実家は、思っていた以上に田舎だった。

あまりの過疎さに落胆したが、ものは考えよう。趣味のSAXも吹き放題だし、化粧もしなくて済む。暑い夏は裸族になる相方は、パンイチで庭をうろついても逮捕されない。公然わいせつ罪は10人以上の人がいる場合だそうだから。ここは楽園じゃん。(少し涙目)

こっちに来て、すぐ何か生き物を飼いたくなった。昼間、ガランとした一軒家に一人ぼっちというのが耐えられなかったのだ。相方は犬が苦手。じゃあ猫、実家でも飼っていた猫がいいな。ぼんやり考えていた。

8月の末のこと。近くで保護犬猫譲渡会があると知り、相方と行ってみた。外のテントに犬、室内に10数匹の猫たちがケージに入れられてニャオニャオ鳴いていた。

猫会場には、私達の他に5組ほどの家族連れが見に来ていた。意外と猫を探している人、多いんだなあ。

子猫たちのケージは大人気。手のひらに乗りそうなモフモフたち。それにくらべて、少し大きくなった猫は人気薄。相方は、真っ白で瞳が青い子猫が気になる様子。ボランティアさんの話を熱心に聞いている。でも、私はその白猫を見ても心動かされない。

会場をウロウロしていたら、ケージの奥の隅で寄り添っている二匹の猫に気づいた。よくいるハチワレとロシアンブルーのようなグレイ猫。6ヶ月くらいじゃないかという大きさ。グレイの方は、一見血筋が良さげに見える。他の人もそう見えるのか、大勢が声をかけている。が、しゃがんだまま一向に動かない。ふてくされてこっちを睨んでいるふうに見えた。

私もケージの前で「おいで」と手を差し出してみた。案の定、二匹は知らん顔。ふてくされた顔をして、睨んでいる。「おじいさんが飼えなくなったと連れてこられた子で、兄弟です。二匹一緒に引き取ってほしいんです。でも、この子たち心を開いてくれなくて、初心者さんにはしんどいと思います。」と、ボランティアさん。お前たち、そんな態度じゃ貰い手ないよ。おじいさんに虐められてたのか?二匹の暗い目が少し気になったが、二匹一緒に飼うのは無理だ。

相方が気に入っていた白猫も、姉妹一緒に引き取るのが条件・・・と言われたらしい。私達、猫飼い初心者がいきなり二匹の子猫を世話できるのか?無理でしょ、という結論。その日は会場を後にしたのでした。

それから1ヶ月後。私達は再び譲渡会場に向かった。会場に行く道すがら、「あのふてくされ兄弟、もしまだ居たら引き取ろうか」と私。「僕もあのグレイの子が気になってた。ロシアンブルーみたいでかっこええ」と相方。

会場の隅のケージに、前よりも大きくなった二匹は待っていました。待っていたように見えたのです。

相方とケージの前で座り込んで、ずっと彼らを見ていた。ハチワレは一度も目を合わさず、奥に座ったまま。グレイはケージの中を動き回って、一ヶ月前より人馴れした様子。ボランティアのお一人が私達を覚えてくださっていて、話しかけて来られた。

「この前来られてた方ですよね。初めて飼うなら、やめたほうがいいです。難しい子たちなので。」

「僕は小さい頃から、親がずっと猫を飼っていたし、懐かない野良猫を懐かしたこともあります!」

「私は実家が猫を飼ってますから、世話も出来ますし大体のことはわかります。」(犬は17年飼っていたが猫のことはサッパリだった)

二人ともちょっとハッタリを利かせた。

いつの間にかボランティアさんたちが集まってきて、口々に止めたほうがいいとおっしゃる。懐かないかもしれないと。

貰い手がなければどうなるか聞いてみた。子猫は預かりボランティアの家で見ますが、大きくなると貰い手が見つかるまでシェルターで暮らすとのこと。じつは、この二匹はもう4ヶ月近く、夜間は誰も居ない隙間風の吹くシェルターで、他の保護猫たちと暮らしているらしい。

「この子ら、一生そこで暮らすかもしれん。愛嬌ないからなぁ」と、相方。

連れて帰ろう。うちの子にしなければ!幸せにしてあげられるのは、私らだけや!二匹まとめて、おいでまい!(いらっしゃい:香川弁)

「決めました。家で責任持って育てます。」相方がきっぱり言った。私も横で大きくうなずく。

すると、まわりのボランティアさんたちから、歓声があがった。なんと、泣いてる人がいる。口々に良かったね、良かったねと本当に嬉しそうに二匹を見ている。この子たちたくさん辛いことがあったんだろうけど、ボランティアさんたちから愛情を一杯もらえて良かったな。幸せにしてやるからね。

私と相方の心は決まった。いきなり二匹のパパとママになる不安はあったけれど・・・。一匹も二匹も一緒だろ、遊び相手がいるから、楽かもしれないし。

推定6ヶ月の犬猫は引き渡しの際、去勢手術を受けなければならないとのことで、手術後の引き取りになる。

猫用のケージとベッドやトイレの準備をして待つこと1ヶ月。

10月17日の夜、二匹はやって来た。相変わらず、ふてくされた顔で暗い目をしてた。

ハチワレはモーリー、グレイはシッポという名で呼ばれていたらしい。「しっぽの森」という施設で保護されたからとのこと。

かわいい名前だけど、悲しい名前だね。もっと幸せな名前を考えてやろうってことで、ハチワレは「ふくちゃん」グレイは「ごんちゃん」に決めた。(幸せな名前なのか?苦笑)

ケージから出ると、タンスの後ろに潜り込んで隠れるふたり。近づくとシャーって威嚇するふたり。暗いところ、狭いところに隠れる生活が1ヶ月ほど続いた。

だんだん心を開いてくれて、一年経って名前のとおり、ふくちゃんはおっとり優しくて、ふっくらふくよかに、ごんちゃんは活動派、ゴンゴンわんぱくに育ってくれてる。

相方が大好きで、会社から帰る車の音で玄関まで走るふくちゃん。嬉しいと、ゴロンとお腹を見せて寝転ぶふくちゃん。おやつって言葉にどこに居ても走ってくるふくちゃん。カーテンをよじ登って、爪がひっかかり泣いて私を呼ぶごんちゃん。ムカデと格闘して右手が10倍くらいに腫れたごんちゃん。野良猫さんと窓越しにケンカ始めるごんちゃん。

性格も体つきも違うふたり。本当にふたりは兄弟なのか?と、疑う今日このごろ。ヘッダーはおやつの時間に、ふたりして待ってる画像。

懐かないかもしれませんよ!と言われた猫が、一年後、おだやかな目でこちらを見てくれている。幸せにしてやろうと思っていたのに、幸せにしてもらっている私たち。

もうすぐうちの子記念日。一年目のお祝いしてあげよう。これからも、ずっと一緒に暮らそうね。うちに来てくれて、ありがとう。そして、日々ご尽力くださっているボランティアさんたち、ありがとう!あなたたちのおかげで、幸せな犬猫と幸せな人間が増えていく。本当に本当にありがとう!



#うちの保護いぬ保護ねこ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?