コロナ時代の医療・介護事業運営
今、医療・介護事業の経営指標の悪化が強く表面化しています。
3月には既に報告されていましたが、コロナの流行拡大と緊急事態宣言による様々な活動自粛で更に経営悪化が進んでおり、現在注目されているものと考えられます。
今後の医療・介護事業の運営について、現場での意見を聞き、また様々な有識者の話を聞き、ディスカッションしたものを纏めたいと思います。
新型コロナが医療・介護経営に与える状況について
既に多くの指標が発表されています。
患者・利用者減少による医療事業・介護事業の収益の悪化、コロナ患者受け入れ病院の経営悪化、通所系サービス利用者の減少・経営指標悪化等が発表されています。4月の影響までですが、自粛要請期間である4-5月はかなり経営指標の悪化が考えられます。
https://www.hokeni.org/data-docs/2020042400024/
今後の事業運営に当たって考えるべきこと
① 新型コロナのリスクは波のように続くという点
新型コロナ自体は第二・三波が来ると考えて事業計画を策定する。今減少してしまった患者や利用者は緊急事態宣言解除後に戻ってくるのかということを冷静に判断すべきです。減少した来院患者や利用者は待っていてもコロナ以前のようには戻らないという考える有識者が多いです。
② 患者(市民)の考え方・行動様式は変わっていくという点 三密を防ぐような行動様式が定着し、外出機会が減ってしまった(外出を嫌うことも)高齢者も多いです。更にはかぜや下痢等で受診しなくなった患者も多く、その傾向は今後続いていく可能性が高いです。
③ 国の社会保障政策方針を理解して先読みしていく
地域包括ケアシステムの充実、オンライン活用、セルフメディケーション等々、コロナの流行は、皮肉にも国が長期的に進めていた方針を一気に短期的な必要事項にしてしまいました。国の方針をよく理解した上で事業計画を立てないとジリ貧になる可能性が有ります。
その中でどのようなポイントを重要視して事業を継続していくのかということを纏めます。
① 職員を大切にする
医療・介護事業は各業種の中でもヒトへの資金投入(給与含めて)の割合が高い業種です。ヒトで成り立っていると言ってよい業種ですので、ヒト(従事者)を大事にするという基本的な考えは、事業継続を考えるほど基本になりそうです。従事者のモチベーション向上には金銭的報酬以上に、「研修」が有効とされていることも今後の事業方針に組み入れたい事項と思われます。
② 資金面の充実(余裕をもつピンチ時に備える)
患者・利用者の減少は全国緊急事態宣言下の4-5月が最も影響が大きいと考えられます。支払い基金からの報酬振込みは6-7月末になり、その際の資金逼迫が危惧されます。職員の賞与時期も重なってきます。患者・利用者を安定獲得するための方策と同時に、今後の第二・三波を考慮しての資金の余裕を持つこと、何らかの際の借入れ候補先を確保することも重要です。
③ オンライン化への対応
新型コロナで必要性が今後大きく変わった部分です。オンライン診療のみならず家族面談や様々な会議体の中でウエイトが上がっていきます。オンライン診療については例えば患者の医療機関選択の要因にもなると考えられます。オンライン化に対応できないのは大きな経営リスクになると考えられます。第二・三波流行やインフルエンザ等の時期も考えると特にかかりつけ医療機関においては早く準備して広報しておく必要があると思われます。
④ 幅広い連携の構築
将来の事業継続を考える中で、自施設単独主義の事業運営には限界があると考えられます。例えば病院事業での健診や介護事業での通所サービス等、収益性の悪い部分からの撤退等事業の再構築が求められるかもしれません。選択と集中をする程に足りない部分を他の事業者と連携する必要性が生じます。そのような連携のオプションをどれだけ持つかということは患者・利用者満足獲得上も非常に重要です。
⑤ BCPを作成しておく(コロナ発生時、他の同様の感染症、天災時等の事業継続計画)
今回新型コロナという予期しない災害に直面し、想定外の経営悪化に陥ってしまった医療・介護機関が多い状況です。①~④の項目を考慮しながら有事の際の運営方法を予め作っておくことで、安定事業運営が可能になります。
まとめ
現在医療機関・介護事業所の経営救済に国も様々な施策を出してきています。それらは活用できると一時的な経営面での危機に対応可能になる可能性があります。只中長期の事業運営を計画するなら、やはり患者・利用者に求められる医療・介護を提供し患者・利用者を獲得していかなければなりません。
今回、新型コロナ感染症については生活様式の変化とともに多くの産業に改革が求められます。その中でいかに自組織や環境を見直してスピード感をもって対応できるかが重要になりそうです。
状況は今後も大きくかわっていくことが想定されます。私も常にアンテナを張って勉強を継続していきたいと思います。