デニムができるまでvol.3【染色】
KENZOです。
デニム生地ができるまでの過程
綿の栽培・収穫
紡績
染色
製織(せいしょく)
整理加工
品質検査
このような順序でできています。
私たちの手に届くまでには
多くの過程を踏んでいるんですね。
この記事では染色について解説しています
染色
染色とは、繊維の内部に染料を吸収させて
それを固定することです。
つまり、染色には染料が必要ですが、
その染料にはさまざまな種類があり、
繊維素材によって適した染料が
使い分けられています。
たとえば天然繊維である綿織物であれば
反応染料が多く用いられますが、
デニムには建染染料である
「インディゴ染料」が用いられています。
*建物染料:建てるとは、還元すること。インディゴ染料は水に溶けにくいのでアルカリ性の液中で建てて水溶性に変化させる。
インディゴ染色
インディゴ染料は水に溶けにくい
染色をするにあたり、
染料を水に溶かして(染液)
繊維を染色します。
しかし、インディゴ染料は
水に溶けにくい性質を持っています。
そこでインディゴ染料を
アルカリ性の液中に建てることで
水溶性の性質に変化させることができます。
そうすると、水に溶かせるので
染液が作れるというわけです。
インディゴ染料の場合、
還元材に「ハイドロサルファイト」を使った
ハイドロ建てという手法が多く用いられています。
ちなみに、天然インディゴの場合は
発行建てという手法が古くから用いられれいます。
インディゴ染料は染まりにくい
染色について、『染色とは、繊維の内部に染料を吸収させて
それを固定すること。』と説明しました。
もう少しくわしく説明すると、
インディゴ染液へ綿糸を浸して、
染料を浸透させたあと液を絞り、
空気中で酸化させることで染料が綿糸に固定されます。
この作業は1回染めて終わりではなく、
目的の濃度になるまで複数回繰り返されます。
さてここで、「ジーンズは色落ちしやすい」
ということを聞いたことはないでしょうか?
これは、インディゴ染料が繊維内部への浸透力が弱い(染まりにくい)ことに加え、繊維への吸着力が弱いことから「色落ちしやすい」性質を持つのです。
デニム生地はインディゴ染料の染まりにくい性質と、
ロープ染色などの特殊な染色機を用いています。
糸の中心は白く、表面のみ染色された「中白」状態に
染色されたたて糸を用いることで、独特のアタリ感を
出すことが可能になっています
インディゴ染料の性質が、
ジーンズ特有の色落ちを可能にしています。
染色工程
繊維の染色において染められる物の形状は、
「ワタ」「糸」「生地」「製品」に分けられます。
デニムでは「糸」の状態で染色され、
染色された糸は「たて糸」として製織工程に送られます。
デニムはよこ糸は染色されず白糸のままです。
たて糸のみが染色されて製織されます。
製織前に先に染色しておく必要があるので
先染め織物と呼ばれています。
反対に生地の段階で染色を行う場合は
後染め織物と呼ばれます。
ちなみに製品の状態で染色されるものを
製品染めといいます。
整経
染色の準備を行う工程です。
インディゴ染色で先染めを行う染色機には、
「ロープ染色機」や「スラッシャー染色機」
などの種類があります。
現在では「ロープ染色」が
もっとも一般的に行われています。
各染色の特徴
ロープ染色
糸をある本数ごとの束(ロープ状)にして染色する方法
色ムラでにくい
糸の中心が染まらない(中白)
スラッシャー染色より染色堅牢度がいい
量産と小ロットの両方に対応できる
染色中の糸切れにも、機械の停止が少なく済む
染色前に糸を束ね、染色後に分離する必要がある
コスパわるい
スラッシャー染色
糸を筒状のビームに巻き、1本1本分離し平行にした状態で糊付けまで一体的に染色する方法
ローラーで絞る圧力差により色ムラがでやすい
ロープ染色よりも染色堅牢度低い
短納期に適している
染色・糊付けを連続的に行い直接ビームに巻く
コスパいい
糸切れによる機械停止あり
綛染
糸を綛状にして染色する方法
糸の中心までインディゴ染料が浸透する
糸の中心まで染まる(中白にならない)
濃色の場合、繰り返し染色が必要
連続染色できないのでコスパわるい
ロープ染色
ロープ染色の工程は次のように分けられます。
「精練」→「水洗」→「インディゴ染色」
→「水洗」→「乾燥」
順番に解説していきます。
精練
染液が糸に浸透しやすくなるように、
ロープ整経糸の糸中に含まれる
綿蝋や夾雑物、糸に含まれる空気を除去し、
精練剤を入れた槽の中を通します。
水洗
精練後のロープ糸にも風綿や夾雑物などの
ゴミが含まれるので、それを洗い流します。
インディゴ染色
ロープ整経糸を染色槽につけてインディゴを吸収させます。
マングルという絞り装置で液を絞ったあと、
空気中でインディゴを酸化させます。(エアリング)
インディゴはほかの建染染料よりも
染まりにくい性質があるので
濃度を濃くしたい場合は、
何度も繰り返して染色します。
基本的には回数でコントロールしますが、
染液の濃度でコントロールすることもあります。
水洗
染色直後の糸には未固着の
インディゴ染料が付着しています。
これを水で洗い流し、
洗濯堅牢度や摩擦堅牢度を管理しています。
乾燥
水洗が終わった染色糸は
シリンダー乾燥機で乾燥します。
ロープ状のため乾燥ムラが発生しないように
温度コントロールを管理しています。
分繊
インディゴ染色した糸は、
製織工程への準備として分繊と糊付を行います。
分繊とは染色のためにロープ状にした糸を
織機にかけるためにもう一度バラバラに分離することです。
分繊で分離した糸は、分繊ビームという
巨大糸巻きに巻き取ります。
染色で発生した糸切れもこのときに修正します。
*スラッシャー染色では分繊工程はありません!
糊付
糊付は製織中のたて糸の毛羽立ちをおさえたり、
摩擦を減らして強度を上げたりと
製織効率を向上させることが目的です。
糊にはデンプンやボパール、平滑剤などを使用します。
ポイントは、1本1本の糸にいかに
定量的に均一に糊付できるかというところです。
*スラッシャー染色では染色と連続して糊付も行います。