ねぇ、生きててたのしい?
あるお祭りの出店バイト、朝の準備。
エプロンをつけて身支度している私の横で、煙草を吸いながらお店のリーダーを担うお兄さんが聞いてきた。
パイプ椅子にずんと座って、煙を吐き出しながら、だるそうな顔で、いかにももう色々がめんどくせえ、無理。みたいな経験わりとし終えましたって瞳で、私をみつめてくる。
その目はかなり真っ直ぐだった。
一瞬、どうだろう?
と思った。
「わりと……楽しいです」
体感は3秒ないくらい。
「えっ!たのしいの??」
お兄さんは、びっくりしたように身をすくめ、その後無邪気に笑った。
「アヤちゃんいくつだっけ?」
「34です。今年でなりました」
「へえ、結婚は?彼氏とかいないの?」
「してないしいません」
「結婚したいとか思わないの?する気ないの?もうそういうのどうでもいいかんじ?」
「どうでもいいっていうか……今あまり興味がないというか」
「へえーーー」
お兄さんはパイプ椅子に座りながら精一杯背伸びして両足も左右にピンと伸ばしながら
「俺今年で40だけどもう人生いいかな〜と思ってるわ〜
だって、だるくない?」
もう俺死んでもいいと思うわ〜〜〜とお兄さんは言いながら、煙草を地面に捨てて足でなすった。
私は相手に聞こえたかどうか分からないけど、
「え……生きてくださいよ」
と呟いた。