金縛り(11/15)
ブランケットを掛けず左向きに横になっていた。
そしたら誰かが薄紫色の薄いブランケットを掛けに来た。男性の気配がする。右側に立っている。
冷えないか心配して来たのだろうか。
余程心配しているのか、顔以外はくまなく被せようとしてくれる。
随分手つきが丁寧なもので、被せると言うよりは巻きつけるの方が近い表現かも知れない。
私は段々と不快になってきて、私はあえて「(友人の男性)くん、(友人)くんなの?ありがとう。(友人)くんだよね?」と声に出した。
それでも「そいつ」はブランケットに両手を置いてこっちを見ている気がする。
嫌になった私は振り向くことなく左手を「そいつ」の口に突っ込んで、オエっとさせて撃退しようとした。
突っ込んでみたら歯が無い。そして口が入れた4本の指で左右を探れるほど大きい。
「そいつ」は無反応のままだったので、4本指を口の中にかけたまま鼻の穴に親指を入れた。
違和感なく指が入った。やっぱり人間ではない。向こうは噛んで反撃する様子などはなかった。
手を突っ込んだまま左右に動かして抵抗したが、今度は段々と顔が近づいてくる。
「何か言わないと」と、唯一覚えていた祈りっぽい言葉がラテン語の勉強で覚えていたアヴェ・マリアの祈りだったので、それをひたすら唱えてみたが「そいつ」は動じようとしない。
ただただ顔を近づけてこちらを覗いている。私は必死に目を逸らしていたので姿は確認しなかった。
その後の記憶はないが、ただ私が冷えないか心配して手持ちのブランケットを掛けに来たのだったら、やり過ぎたかも知れないとは思った。でも不気味だったからさ。