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#105 会話のTPO

会話は、自身の考えを相手に伝える行為のひとつだ。

誰もがそんなことは知っている。

ちなみに会話の意味は「向かい合って話をすること。また、そのはなしのやりとり」である。

会話には場所・立場・関係性などにより、表現方法が異なる。

例えば、初めて会った人と、親友とは会話の表現方法は異なる。また、赤ん坊のように言語をまだ使えなかったり、幼少の子どものように言葉をあまり知らない子に話すときは、オノマトペを多用したりすることで意思の疎通をスムーズに行う。

このように、会話にもTPO(時・場所・場合)が必要なのをご存じだろうか。

当然、知っているだろうが、実践できているかは不明だ。

なぜなら、適切なTPOを行うには、意外と難しいためだ。

次の話を例にとり説明してみたい。

墜落事故


1997年8月5日。

ボーイング747型機。かつて大統領専用機として使われていた機体だ。

801便は、ソウル時間20:30にゲートを出発し、20分後には飛行していた。離陸には問題なし。午前1:30になる少し前、同機は雲間を抜け、乗務員が遠くにちらりと灯りをみた。

「グアムでしょうか?」
機関士が訊ねる。いったん黙った後、再び口を開く。

「グアムだ、グアム」
機長が含み笑いをする。

「いいぞ!」

副操縦士はATC(航空交通管制)に、「当機はチャーリー・ブラボー(積乱雲)を抜けた」と報告し、「滑走路六Lへレーダー誘導」して欲しいと要求する。

同機はグアム国際空港に向けて降下をはじめた。

機長が視認進入すると告げる。

機長はソウル-グアム間を八回飛行した経験があり、つい一か月前にも来たばかりだった。空港も付近の地形も熟知している。

ランディングギアが下ろされ、フラップが10度に下げられる。

1時41分。

機長が「ワイパーをオンに」と命じ、航空機関士が風防ワイパーを作動させた。雨が降っていたのだ。

副操縦士が言った。

「見えませんか?」

機長は滑走路を探していたが、視認できない。その直後にGPWSが電子音で警報を発する。

「500(フィート)」。(約152m)

飛行機は地上わずか152m(500フィート)上空を飛んでいるのだった。
滑走路が見えない?そんなことがあり得るだろうか。

2秒経過。

「えっ?」

航空機関士の驚いた声。

1時42分19秒。

副操縦士が「進入復行しましょう」と言い、着陸を断念して、再度上昇するよう提案する。

1秒後、航空機関士の声。

「視認できない」。

副操縦士がつけ加える。

「滑走路が視認できない。進入復行」

1時42分22秒。再び航空機関士の声。

「ゴー・アラウンド(着陸復行)」。

1時42分23秒。機長もコールする。

「ゴー・アラウンド」。

1時42分26秒。

同機は、グアム国際空港の3マイル手前にある、鬱蒼と植物の茂ったニミッツヒルの台地に墜落した。

機体は2000フィート横滑りし、石油パルプラインを切断、松の木をへし折り、谷間に突っ込んで炎に包まれた。

救助隊が駆けつけたときには、乗客・乗務員合わせて254名のうち、228名の命が失われていた。

引用:「天才!成功する人々の法則 マルコム・グラットウェル著 」


飛行機の墜落事故はご存じの通り高い頻度で起こることはない。

しかし、残念なことに墜落事故が起こることも少なからずある。

それは、多くの要因が関係しているのだが、小さなトラブルと些細なエラー要因の蓄積の結果なのである。

つまり、現実は映画とは異なり、エンジンが火花を散らして爆発したり、方向陀が離陸の衝撃で突然折れることもなどほとんどないのだ。

典型的な事故の場合、人為的ミスが7つ続く。

例えば、飛行機に何らかの不具合があったとしても、それに対応できるようルーチンがくまれているため、大事に至ることはない。

また、機長が体調が悪くなっても副操縦士がサポートができるようになっている。また有名な話だが、機長と副機長は二人同時に食中毒にならないように同じメニューを口にしない。

機械的なトラブル、人為的なトラブルにおいても、それが単独で起こった場合に甚大な事故につながることはない。

しかし、小さなエラーが三つ加わり、四つ、五つ、六つ、七つとエラーが積み重なると大惨事を招く。

そして、これらひとつひとつのエラーは、知識や飛行技術の問題ではない。

墜落の原因となるエラーは、いつも必ずチームワークとコミュニケーションに関係がある。

例えば、機長か副操縦士のどちらかが重要な点に気づくが、もう一方に伝えない。あるいは、片方が間違いを犯し、もう片方がそれに気づかないなどだ。


つづく



参考文献「天才!成功する人々の法則 マルコム・グラットウェル著」


最後まで読んでいただきありがとうございます。

vanさん画像を使用させていただきました。

毎週金曜日に1話ずつ記事を書き続けていきますので、よろしくお願いします。
no.105.2022.2.11




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