#70 2050年の未来(前編)
現在2021年ですが、約30年後の未来はどうなっているのでしょうか。誰一人決定的な解を出すことは不可能ですが、各分野の専門家は現実的なシナリオとして予測データを公表しています。
ただし、これを日本国内にそのまま反映できるかはわかりません。しかし、地球規模で起きていることや、起きるであろうことを知っている必要性はあるのではないでしょうか。
1.人口
世界の人口は現在77億人といわれている。現在の人口から2050年になるまでに人口はどのように推移していくだろうか。国連の「世界の人口推計2015年改正版」によれば2050年の世界の人口は97.7億人と表記されている。
しかし、アメリカの民間データによれば2040年頃に約81億人でピークを迎え、その後減少していくという。どちらが正しいかはわかりませんが、人口が頭打ちする理由に、「自発的に子どもの数を減らすからだ」と述べられています。
これは、経済が未熟な国は発展する時にマンパワーを必要とするので、自然と子どもを多く産む傾向があり、その力が人口ボーナスとなり、経済を活性化させ、結果として国が豊かとなる構造を示しています。
逆に国が豊かになると、子どもにかける教育費が高くなり、量より質を求めるために出生率が下がるのです。
日本もこれにならい、第一次ベビーブームや高度経済期の出生率と現在の出生率では大きく異なります。
かつてわが国が第1次ベビーブームを迎えていた昭和22年から24年(1947~1949年)にかけては、年間260万人以上の出生者があり、出生率33~34.2‰(パーミル:千分率)という高さを維持した。昭和22年の合計特殊出生率は「4.54」を記録していたのである。その後、出生率の低下は急速で同32年には17.2‰となり、昭和30・40年代の「高度経済成長期」には合計特殊出生率が2.13前後の安定した数値で推移した。そして、第2次ベビーブームと呼ばれた昭和48年(1973年)の合計特殊出生率「2.14」(出生数約209万人)を境に今日の我々が直面している状況が静かに進展してきたのである。
引用:愛媛県生涯学習センター(1)進む少子化
現在の日本をみればわかるように、世界的にみても成熟した社会になってきました。その傾向の一環として出生率が1.25までさがったことがあげられます。ならば、経済的に豊かになった国は地域差なく、出生率が低下することは避けられないようにみえます。
ファクトフルネスによれば、現在世界の人口の85%が「先進国」に入っており、残りの15%のほとんどは2つの枠のあいだに入り、全人口の6%の13か国だけが「途上国」に入る。
相対的格差の問題は残るとして、それでも世界の大半は豊かになり成熟しはじめている。
そのため、経済発展中の国々が一定の水準の豊かさを確保すれば、おのずと出生率が下がるのは当たり前のことなので、わたしは2040年を境に人口は一定数まで減少するのではないかと考えられます。
2.地球温暖化
ノーベル平和賞を受賞したアル・ゴア元アメリカ副大統領は、
「今こそ世界規模でリセットをする好機です。経済活動のニューノーマルとして、まずは気候危機を解消していくことから初めるべきです。化石燃料を減らしていくことが、私たちが今すべき最重要課題なのです」
と述べました。彼が地球温暖化にどれだけ貢献したかはわかりませんが、SDGsの13「気候変動に具体的な対策を」にもあるように、世界規模での注目が集まり対策が求められています。
アルバート・アーノルド・ゴア・ジュニア(英語:Albert Arnold Gore, Jr.、1948年3月31日 - )は、アメリカ合衆国の政治家。同国第45代副大統領(在任: 1993年1月20日 - 2001年1月20日)。通称はアル・ゴア(Al Gore)。連邦下院議員、連邦上院議員を歴任した。環境問題の論客として知られる
引用:Wikipedia
このままのエネルギー使用に伴うCO2排出量が増加すれば2050年に地球規模で気温が2度以上高くなるという。
まず現在わたしたちが直面している問題を理解するために、大まかに計算してみよう。科学者の計算によれば、気温上昇を2度以内に抑えるには、エネルギー使用に伴って排出されるCO2の総量を「残されたCO2予算」である6000億トン以内に抑えなければならない。
つまり、今後化石燃料を燃やして大気に放出してもよいCO2の上限になる。しかし、6000億トンというのは1700年代にわたしたちが化石燃料を使い始めてから、蓄積してきたCO2の総排出量の3分の1弱である。
わたしたちは、2010年1年間で、エネルギー使用に伴って320億トンのCO2を排出した。このペースでCO2を出し続ければ、2030年には「予算」を使い切ってしまう。
つまり、現状では2050年には気温2℃上昇は避けられず、現実のものになると思われる。
その主な理由は、残念だがこれは世界規模のプロジェクトのため、世界が足並みを揃え努力して、はじめて回避の可能性が生まれるためだ。そのため、どこかの国が自国の発展を優先し、化石燃料に頼れば他の国々の努力は意味がなくなってしまう。
日本エネルギー経済研究所計量分析ユニットによれば、2016年の世界の二酸化炭素排出量約323億トンのうち、中国が28%を、アメリカが15%、インド6.4%、ロシア4.5%、日本3.5%と続く。
*co2の排出量は、電気やガス、ガソリンなどの使用量に排出係数をかけて求められている。
日本やアメリカは、経済が成熟しこれ以上の二酸化炭素の排出量が莫大に増える見込みはないが、中国やインドなど今まさに人口ボーナス期または、ボーナス期に入るであろう国にとって、二酸化炭素の排出の増加は避けられない。(日本の高度経済成長期は大量の二酸化炭素の排出があった)
一説によれば中国の二酸化炭素の排出量を限りなくゼロにする方法を取らないかぎり、地球温暖化は避けられないという。
そのため、未来を見据える場合、地球温暖化を前提とした社会活動が必要になる。以前、養老孟司氏は竹村公太郎氏との対談で、当時環境省の排出規制に一兆四千億円を投入することは残念だが無駄なことだと話しています。
マクロのグラフがあり、二回のオイルショックの後は、GDPと炭酸ガスの排出量が完全に比例し、GDP一%増しであれば、炭酸ガス排出も一%増える。つまりシステムが変わらなければ、経済成長をする限り炭酸ガスは減らせないと説きます。
では平均気温が二度上がると、どうなるのでしょうか。
2050年までに平均気温が2℃上昇すると、その後何十年にもわたって、人類はたくさんの厄介な気象災害に直面する。かつてない規模の洪水、干ばつの多発、地滑り、台風といった天災が頻発するようになり、サンゴは白化し、森林は枯死し、新しい虫が繁殖する。
また、北極圏で夏に氷が溶ける。北極圏以外の氷河はの大半は消滅する。海面が30センチメートル以上上昇する。気候帯が南北に100キロメートル移動するなどだ。
先日、スエズ運河のタンカー座礁でニュースになったが、北極圏の氷が夏場溶けるため、ロシアルートがこれから需要の一部を満たす可能性がある。
近年、気候変動により北極圏も温暖化し、北極海が海氷で覆われる範囲や時期が縮小しています。これにより、北極海航路の可能性が高まっているというのがロシアの主張です。
何気ないニュースにも地球温暖化による環境変化の片鱗が見えてきました。世界中でSDGsの働きにより、気候変動を緩やかにするために努力したとして、その効果が劇的に現れてくるまでにはタイムラグがある。2050年には、日本もさらに暑くなっていることでしょう。
つづく
参考文献「2052 今後40年のグローバル予測 ヨルゲン・ランダース著」
参考文献「2030年の世界の地図帳 落合陽一著」
参考文献「ファクトフルネス ハンス・ロスリング著」
参考文献「本質を見抜く力 環境・食料・エネルギー 養老孟司・竹村公太郎 著」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
サタケシュンスケさん画像を使用させて頂きました。
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no.70 2021.6.11
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