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当事者が語るトゥレット症について

はじめに

 皆さんはトゥレット症、またはチック症という言葉を聞いたことがあるだろうか。近年インターネットの普及によりかなり認知が広がっていると感じているが、それでも知らない人の方が多くいると思う。
 簡単に説明するとチック症状(過度な瞬き、首振り等の運動チックと咳払い、発声等の音声チック)が1年以上続くものをトゥレット症と呼んでいる。
※詳細はトゥレット症とは?チック症とは? - トゥレット当事者会をご覧ください。

 本記事ではトゥレット症を患い、今現在もトゥレット症と共生している私が考える、トゥレット症について書いていく。

私の症状について

 トゥレット症について語る前に、私が今までどのようなチック症状があったのかを紹介したい。
運動チック
・首振り(縦、横どちらも)
・過度な瞬き
・上を向く(白目をむく)
・口を大きく開ける
・歯茎を動かす
・舌を出す
・体をくねくねひねる
・腹筋に力を入れる
・腕を振り上げる
音声チック
・「あっ」と声を出す
・咳払い
・鼻を鳴らす

 以上が私の持つ症状の一覧である。この症状がすべて同時期に出るわけでなく、1ヶ月間首振り、瞬き、声を出す時期があったり、瞬き、舌だし、咳払い、鼻鳴らしの時期があったりと、組み合わせ、種類の数、頻度はばらばらである。
 瞬きのし過ぎで、ものもらいのように目が腫れたり、首振りのし過ぎで極度の肩こりになったり、外傷がでることが多い。腕を振り上げる症状が出るときは、隣を歩く人を叩いてしまうこともあり、他人に迷惑をかけてしまうこともあった。
 6歳のころに症状が出始めてから23歳の現在に至るまで、通院、投薬を繰り返しているが、それでも治ることなく、現在も共生している。そんな私が思うトゥレット症とはどんなものなのかを当事者目線で書き記していく。

トゥレット症は精神状態と深いかかわりがある

 私はトゥレットは精神状態に深く関係していると感じている。初めてチックが体に起きたのは小学1年生の頃、誕生日の1週間前であった。それから学生時代の時に、チックがひどくなるのは、運動会の前、子ども会で旅行に行く前、テスト前など、何かしらのイベント前であった。楽しみなことを目前にしテンションが上がっている時期は基本的にチックが酷くなる。
 逆に、子供の頃は、親にチックのことを「その癖をやめなさい」と言われていた時期があり、意識をしてチックをていないのにも関わらず、叱りを受けるのは小さな子どもながら憤りとストレスを強く感じていた。そういった辞めろと言われた際に、よく酷くなっていた。また部活終了後の疲れが体に蓄積している時や、寝不足の日などはチックの症状が酷くなる。現在でも仕事中や、長時間運転をしたあと等は症状が強く出る。
 さらに体や心をリラックスさせている時にもチックは強くでる。1日仕事をしたあと、家でリラックしている時や、1人の時間にゲームや、読書をしている時など考えることをせず、休憩している時にも酷く出る。
 まとめると
・楽しみ、楽しい、嬉しい、幸福、快感、高揚感などプラス的な思考を感じる時
・ストレス、憂鬱、疲労、傷心などのマイナス的な思考を感じる時
・リラックス、無意識、1人の時間など自由な時間で、他人からの干渉がない時
 このようにどの感情であっても、その感情がある一定のラインを超える大きなものになるとチックの症状に影響が出ると感じている。

トゥレット症患者は何がつらいのか

 これに関しては個人差が大きなものになると思うので、私個人のことを書かせてもらう。
他人からの目線
 今でこそ、慣れてしまったが、他人からの目がとにかく辛い。初対面の人ならなおさらであるが、普通の人とは到底思えないような首振りや瞬きをするので、「この人おかしい人なんだ」と思われていないか心配になる。就学時ではクラスメイトにチックの症状を真似されたり、陰で悪口を言われるのは日常茶飯事である。自分の子どもや知り合いの子どもがチック症を持つ場合、学校で嫌なことをされていないか心配している人でこの記事を読んでいる人がいるなら、現実を知ってほしい。高い確率で、学校ではチックについて周りからいじめに近いことをされていると思う。しかし、チックを持つ子どもたちは心は健常者である。これについても賛否両論のある書き方をさせてもらうが、心身共に健常者であるからこそ、他人から向けられる目線がとにかくしんどい。またほかの病気と違いトゥレット症はチックの症状を知らない人がまだまだ多くいる為、冷ややかな目線を送られることが多い。
 そして先ほど説明したとおり、精神状態にリンクするので、他人から送られる冷ややかな目線を感じることによる精神の疲労によってチックは悪化する。それをまた笑われ、目線を向けられることでさらに悪化する。負のスパイラル状態に陥ってしまう。
他人に迷惑をかける
他人に迷惑をかけてしまうことに対する罪悪感も辛さの大きな1つである。例を挙げると、周囲が静かにしなくてはいけない場所で音声チックが出てしまう時だ。それは電車の中でもあり、映画館でもあり、試験会場や授業中、仕事中など多くの場面に存在する。1度中学生の時に、授業中の音声チックがうるさいということで、クラスメイトの保護者が、私が授業妨害をしてるということで、学校に訴えたことがあった。
 また運動チックにより、他人に怪我を負わせてしまうことがある。腕を振り上げる運動チックは相当な力で腕を振り上げてしまう。その際に、となりを歩く友人などにその手が当たってしまう。実質的に殴ってしまう形になる。友人なら理解してくれているひとも多くいるが、これがたまたま通りかかった人や、小さな子どもに当たってしまったときは大惨事になりかねない。こういったことに対する罪悪感が強く自分自身を否定してしまうのだ。
体に影響が出る
チックの症状によって、体に大きく影響が出ることも多くある。首を振りすぎることによる激しい頭痛と肩こり。瞬き、白目による物貰いのような目の炎症、歯茎を動かすことによる口内炎の発生、出血、鼻鳴らしによる上咽頭の炎症など多くの外的症状が多発する。これにより酷いときは常時物貰い、口の中に口内炎が20個近く、首が回らないなど症状が重なり、日常生活に大きな影響が出る。また音声チックにより会話を妨げることも多くある。発言をしている最中に音声チックが出てしまうので、会話をし辛くなってしまう。
 そして睡眠時によるチックの発生により、共生的に起床してしまうことがあることもある。ベッドに頭を叩きつけてしまった衝撃だったり、音声チックに夜自らの声で起床してしまう。これにより深い睡眠がとれなくなり、寝不足状態や十分に疲労回復ができていない状態が生まれ、翌日のパフォーマンスに影響が出る。
自分の体が自分の意志に反して動くことによる違和感
 個人的に1番辛いのは、チックに対する違和感である。自分の体が意志に反して動くことがどれだけ辛いことか。したくもない動きを、体が痛めつけられるまで自らの意思に反してしてしまうことがどれだけ気持ち悪いことか。
 やめたくてもやめられない。やめたいのに前駆衝動によってやらないと落ち着かない。自分の心と体が限界でもチックは止まらない。自分の意志ではないといってもその体を動かしているのは自分自身で、そのつらさは理解されることのないものであると感じている。

トゥレット症についてどうなっていってほしいのか

 これからトゥレット症については、2つの未来を望んでいる。
 1つ目はトゥレット症が完治できるような医療が発見されることだ。現在トゥレット症は解明されているものが少なく、メカニズムと適切な医療が不明なままである。この病気に対し、人間が明確に対抗できるものがこの先現れてくれることを願っている。
 2つ目はトゥレット症を世界中の人々が知ってほしい。名前だけでも覚えてほしい。存在自体を世界中で知ってもらうことで患者は今よりも格段に生活が豊かになると思う。
 そして私はトゥレット症を患っているみんなに、笑顔になってほしい。
 そんな願いを持っている。


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