For Ukraine
遠く離れた国で、戦争が起きている。
ドーピング問題に揺れた北京五輪が終わるタイミングを見計らっていたかのように、ロシアがウクライナを侵略し始めた。
長年に渡るロシアの、いやプーチン大統領のウクライナ及びクリミア半島への異常とも言える固執がついに本格的な軍事力行使を持って実体化し、既に双方に多数の死者と負傷者が続出していると報じられている。
ゼレンスキー大統領は一般市民に武器を提供し、自身も戦禍の首都キエフに残り、陣頭指揮を執っている。元コメディアンである事を揶揄され、恐らくプーチン氏にも甘く見られていたであろうウクライナの若き国家元首は、逃げる事なく超大国ロシアに立ち向かい、徹底抗戦の構えを見せている。
皆さんご存知の通り、ロシア軍の主たる目的はキエフを占拠する事にある。ウクライナの予想外とも言える抵抗にロシアの進軍は難航していると見られるが、ここまで来た以上、ロシアはキエフは勿論、ウクライナ全土を掌握したいと考えているはず。実際、既にチェルノブイリ原子力発電所はロシアの手に落ちた。
さらにプーチン氏は次なる標的としてフィンランドやスウェーデンなど北欧諸国の名を挙げている。アメリカのバイデン大統領の言葉を借りると本気で旧ソビエト連邦の復活を目指しているプーチン氏なら、もう何をしでかしたとしても全く驚きはない。
少し話が逸れるが、冒頭でも触れた様につい先日閉幕した北京五輪において、前年の東京大会に続き最早お馴染みとなりつつあるROCとして出場したロシアは、またもやドーピング違反行為によって世界中から非難を浴びる事となった。
成人の男子選手ですら過酷な4回転ジャンプを15歳の少女がいとも簡単にピョンピョン跳んでいる時点で明らかにおかしかったのだが、メダリストとなった選手のほとんどがその後10代の若さで健康面に問題を抱えて皆一様に競技から離れている時点で何かがおかしかったのだが、あの国は勝つためにはそういうおかしな事を平然とやってのけてしまう。
中国の香港制圧にしても、今回のロシアによるウクライナ侵攻にしても、つくづく思うのは、人の命を命とすら思わず、人権を平気で蔑ろにする超大国が日本の周辺に数多く存在しているという事実だ。定期的にホームランを撃つあの半島の国にしてもそうだが、何故か日本の近隣諸国にはきな臭くてヤバい奴が多い。
だから僕のような愚かな一般市民ですらウクライナが他人事であるとは思えないのだ。中国もロシアも、我が国に矛先を向ける可能性は決して排除する事はできない。安倍首相時代はロシアとは少し仲が良かったようだが、それも終わった話なのだろう。今となってはプーチン氏が日本を訪れていた事実すら恐ろしく感じる。
悲しい事に、国の威信と誇りを懸けて勇敢に戦い続けるウクライナに対して、現状国際社会は救いの手を差し伸べていない。アメリカなどはロシアに対して強い経済制裁を実施する事を公表し、G7も非難声明を発表している。
この戦争が長引けば、ロシアとて決してダメージは小さくない。国際社会から、世界中から敵視されてあらゆる制裁措置をくらい続ければ、常に強気で傲慢なあの国であっても流石に無傷ではいられないだろう。
だが今現在最も必要なのはロシアにダメージを与える事ではなく、一刻も早くウクライナを支援する事だと強く感じる。冷静に考えて、屈強で圧倒的な戦力を誇るロシア軍の侵略に、東欧の小国が勝てるはずがないのだ。
アメリカが最早世界の警察官でない事は分かっていたし、国際連合などが有事に何の役にも立たない事は分かっていたが、思った以上に静観を決め込んでいる。まるでドラクエかと思うほどに様子を見ている。
実際流石に何もしていない訳ではなく、特にアメリカは現地に部隊を派遣し、ゼレンスキー大統領に対して脱出するよう求めるなど働きかけているようだが、大統領は国外へ逃れる事を拒否し、キエフに留まり続けている。ウクライナの大統領は、今も兵士や市民と共に戦っている。
役者出身なだけあって、自分がどう見られているかを良く理解し、SNSを有効活用して世界中に戦禍をリアルタイムで伝えてくれる。ロシアの暗殺リストのトップターゲットであると言われ、常に死と隣り合わせの状況で恐怖を感じていないはずはないが、臆する事なくファイティングポーズを取り続けるその姿勢は、温々とした執務室で御託を並べるだけのプーチン氏より遥かに気高く勇ましい。
皮肉な事に、世界で最も「マッチョ」な指導者だったはずのプーチン氏は、有事に理屈で自らを正当化するだけの極めてつまらない男として世界中から非難と嘲笑の的になっている。強いリーダー像を求めるロシア国民は、果たしてどう思っているのだろうか。
僕の好きなサッカー界でも、ロシアのウクライナ侵攻に対しては当然ながら大きな反響があった。ウクライナ代表でマンチェスターシティ所属のジンチェンコはSNSでプーチン大統領を痛烈に批判し、バルセロナの選手達はナポリと共に試合前に横断幕を掲げて抗議した。
元ウクライナ代表監督である英雄シェフチェンコは国民の保護とロシアへの制裁を訴え、さらにはロシア代表であるスモロフからも戦争反対の声が上がっている。イギリスのジョンソン首相らの抗議の声もあり、今年のCL決勝の開催地は、サンクトペテルブルクからパリへと変更された。
今朝の情報番組や新聞でも、ウクライナの情勢はトップニュースとして各社が競うように報じている。この記事を書いている今この瞬間には、TBSで爆笑問題太田光さんがロシアやアメリカに対して持論を述べている。
愚かな一般市民である僕は、こんな拙い文章を書く事しかできないが、無力なりに遠い日本からウクライナと、ウクライナ国民がこれ以上傷付られる事なく戦争を終えられる事を願っている。そして大統領を筆頭に現在戦闘に参加しているウクライナの兵士や市民の命が、これ以上損なわれない事を願っている。
僕らが当たり前の様に享受している、安心して眠り、美味しいご飯を食べて、趣味に勤しみ、人間らしい営みを取り戻せる事を祈っている。
ロシアとウクライナは現在、他国の仲介を経て交渉の席に付く事も模索していると言う。今後両国の関係が改善する事は二度とないように思うが、一方でウクライナは勿論、ロシアにとってもこれ以上の長期に及ぶ戦争は不利益であるように感じる。
そして最後に余談になるが、ウクライナのゼレンスキー大統領のコメディアン時代の得意芸は、チ○ポでピアノを弾く事だったと言う。そんな彼が今、母国を守るために最高指導者として、命を懸けて最前線で戦っている。
どう考えても死なせてはならない男である。