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SS『ダメなやつ。』-ある廃墟の調査-
「このアルバム…いつの時代だ?」
これは、何かの集まり…結婚式かな?かろうじて色は付いてるみたいだけど、相当古い時代のものだ。女性がほとんど顔が見えないくらいまで姿を隠してるし、男性のヘアスタイルも独特で、複雑な剃り込みを入れた坊主頭の子や、特定の部分にしか髪を生やしてない人が目立つ。今でこそファッションの一部になってるけど、当時は宗教的な意味が相当強かったはず。この建物って、そんなに古くから使われてたのかな?
「ねえ、この写真…って、あれ?オチアイさーん?」
アルバムをめくって写真を眺めていたら、いつの間にかオチアイさんがいなくなっていた。気まぐれな彼のことだから、いつものことではあるけど…やっぱり姿が見えないと不安になる。
「どっかに足跡でもねえかな…?」
昼間でも薄暗い、ホコリまみれの廊下を懐中電灯で照らしながら進んでいくと、どこかから「ううっ」と不気味なうめき声が聞こえて、思わず頭がビクッとなった。
「えっ!何、何…こんな時に声とかやめてよ…?」
ビビリながらライトをブンブン振り回して辺りを照らすと、オチアイさんが目の前の部屋のドアからぬっと出てきた。
「わっ!?オチさん、そこにいたんすか!いつの間に…」
「……」
彼は何も答えない。何だろう、怖い…よく見ると、青ざめた顔をしてる…。もしかして、今の声ってオチアイさん?
「え、どうしたんすか?顔色悪いすけど…何か見つけたんすか?」
「この部屋、絶対見ない方がいい。見たら死ぬ」
「えっ…」
そんなこと言われたら、逆に見てみたくなるじゃん…!部屋の向こうは廊下よりも明るくて、窓から外の光が入ってきてるみたいだ。その物理的な安心感から、俺はオチアイさんが全力で止めるのを振り切って、勇気を出して中に踏み込んだ。
「え…?わ、うわあっ!?」
そこは、狭いベッドルームになっていた。もう骨組みだけしか残ってない鉄柵のベッドと、その脇に置かれたボロボロのソファー…その上に、汚れた白っぽいものが、ぐちゃっと塊になっていた。
これ多分、包帯だ…それも、古くて汚れてるんじゃない。明らかに使われた痕がある…てか、よく見ると、ちょっとガサガサ動いてる。でもこれ、心霊現象とかじゃない、多分中に、黒い…
「あ、あー…これはダメっすね、近づいたら死にます、逃げましょ」
「だから言ったじゃん、死ぬって!ユキさあたまには俺の言うこと聞いて?」
「オチさんだって勝手にどっか行くじゃないっすか!」
「だから、行くよって言ってもユキが聞いてないんだって!」
「そんなの知らないっすよ!」
もう黙ってたら吐いてしまいそうなくらいの嫌悪感と恐怖を紛らわすために、ひたすら怒鳴って好き勝手に言い合いしながら命からがら逃げ出した。
とりあえず何も考えず、何も視界に入れず一目散にエントランスホールを目指して、建物の外に飛び出して、陽の光を全身で浴びた。もうコートなんて着てらんない。脱いじゃえ。いっそ全部脱いで素っ裸になりたい気分だった。
「あー風呂入りてえ!」
「入ろう。ホテル戻ったらあるから」
「オチさん運転おなしゃす」
「いいけど、途中で代わるよ?」
「あーハイ、え?」
「ほら、乗った乗った!」
何を言われても頭が動かなくて、分かるのはとりあえずこの場から退散しようってこと。古い建物って謎が多いけど、ある程度解明する前にこっちが物理的に死ぬ可能性もあるから、マジで命がけすぎる。でも、撮れ高だけはホクホクだよ…外観からして相当不気味だったし、最後のはマジで終わってた。編集終わったら原本すぐに捨てたい。アーメン。
(続く?)
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