【Preview】2018年J1第27節 川崎フロンターレVS.名古屋グランパス「未来のナショナルダービー:全てのサッカーファンに極上の一戦を」
2018年J1第27節の川崎フロンターレは、ホームで名古屋グランパス戦です。名古屋グランパスは前風間監督が指揮していることもあり、特別視している方々も多いのではないでしょうか。私もその一人で、今回の対戦は非常に楽しみにしており、現地観戦してきます。
前回のおさらい
さて前回対戦は新旧風間対決ということで、お互い違うチームでありながら、何か同じ信念を感じさせるような試合でした。詳しくは前回レビューを見ていただければと思いますが、前回はJ1第4節(3月18日)に敵地豊田スタジアムでの対戦で、結果は1-0の勝利に終わりました。名古屋に今季初黒星を付けたのがこの試合で、ここから8連敗に道を歩むとは思ってもいませんでした。
前回で印象に残っているのが、「お互いに自分達が主語でやろうとする。そこに面白さがあったんじゃないかなと思います」という風間監督らしさ溢れる試合後コメントでした。「主語でやろうとする」といった風間語から川崎サポーターなら親しみを感じるのではと思いつつ、端的にいえば「自分たちの狙い通り」のサッカーといったところでしょうか。決して相手ありきではなく、自分たちの100%のプレーをする。そうした互いの思いがぶつかるところに、サッカーの真の面白さがあると思わせてくれる試合でした。
名古屋の当時のスタメンと前節長崎戦のとを比べると、実に7人も変わっており、対する川崎は前節札幌戦とは2人しか変わっておらず、この半年の名古屋の激動ぶりを象徴しています。別のチームと言ってもいいくらいですが、その分不動の選手が目立ちます。ジョーと小林裕紀です。
ジョーの好調=チームの好調
ジョーは全25試合に出場していること(先発は23試合)から、風間監督からの信頼が読み取れます。20得点で得点ランキングトップを走るFWを外すほうが無理な話ですし、ストライカー(川崎時代の大久保)に特別な理解のある風間さんならなおさらでしょう。
そんなジョーは現在7試合連続ゴールと絶好調で、前節までの6連勝の立役者でしょう。しかも4試合連続で複数得点という化け物っぷりで(4試合連続ハットトリックした人もいますが)、今節でいきなり無得点とは正直考えにくいです。
風間監督のチームの特徴は、自身が述べている通り「個人が戦術になること」、「全員が100%の力でプレーできるチーム」です。そしてそのわかりやすい指標がFWの得点でしょう。ゴール前から逆算するサッカーを設計する風間監督は、まずFWにボールを入れる形を決め、そこからチームを作っていきます。つまり最初に表に出てくる変化がFWの得点なのです。その意味で、ジョーが得点を量産している現チームは、調子が良いと言えるでしょう。
縁の下の小林裕紀
一方で小林裕紀ですが、前回対戦時にはまだプレースピードに付いていけない印象がありました。しかし24試合に出場、そのうち21試合がスタメンなのを考えると、縁の下の力持ちとして重宝されているように見えます。
そんな小林を見る上で、やはりこの夏に川崎から移籍したエドゥアルド・ネットとのコンビネーションは興味をそそります。昨季優勝チームの屋台骨だった大島とネットのコンビを見る限り、小林とネットのコンビが上手くいっているとは思えません。というのもネットは調子、機嫌の波が激しく、扱うのが大変だからです。川崎時代はネットを自由に気持ちよくプレーさせていたのが大島で、巷では「猛獣使い」などとも呼ばれていたのは、その難しさゆえでしょうし、扱うまでにかなり時間がかかっていました。すでに7試合出場しているネットは、多少問題を起こしながらも、どこまでフィットしてきているのでしょうか。
そんなネットの相方を務める小林は、前回対戦時は中盤のアンカーからダブルボランチの一角として、より多くの任務を担っているようです。名古屋を支える小林のプレーに注目です。
自分たちを主語にできるか
前節は川崎が勝利した一方で、広島は鳥栖を相手に0-1の敗北を喫したため、川崎と広島の勝点差が再び6に縮まりました。なお川崎は消化試合が1つ少なく、来週水曜日にアウェイで湘南戦が開催される予定です。さらに7得点の大勝だったため得失点差が20になりました。首位の得失点差は21で、昨年得失点での決着だったことを考えると、この差が詰まったことは小さくないでしょう。
川崎は前節と同じスタメンで臨むようですが、名古屋が相手だと考えると、普段よりも守備的に、ボールを握ることにこだわらない戦い方をするのではないでしょうか。というのも、まず鬼木監督のこれまでを見る限り、テコ入れをする場合は守備からで、札幌戦は攻撃的に見えても、あくまで相手がボールを保持している状況に対するアプローチです。したがってこの試合でも守備から、特にジョーをいかに抑えるかを起点に試合を展開するのではないでしょうか。
一方でそうせざるを得ない状況もあります。守田の負傷により、前節に続いて下田がボランチで出場予定ですが、まだフィットしているとは言い難く、ボールを握るという点に関しては名古屋に軍配が上がるでしょう。さらには大島も完全復帰とは遠く、力をセーブしながらのプレーになると考えると、中々厳しい戦いになりそうです。自分たちを主語にしたプレーができないことを想定して試合に入る必要があるでしょう。
奈良の出来次第
もう一点言及したいのが、奈良のCBです。先にデメリットとしては、ビルドアップがぎこちなくなることです。川崎が一時期の不調から脱した一つの理由に、ビルドアップの段階で詰まらなくなったことがあり、それは車屋をCBに起用したからでした。つまり奈良の起用はその逆が起こる可能性が高いです。一方でメリットとしては、その対人能力の高さからジョーを抑えることができる点です。ジョーの強みの一つである高さに対して、奈良の強さをぶつけることで、名古屋の得点源を抑えることが期待できます。ただしジョーの強みはそこだけでなく、むしろフィジカルとは離れた部分にあるので、全てを抑えきれる訳ではないことに注意です。どちらにせよ、攻守ともに奈良のパフォーマンスはチームに大きく影響するでしょう。
未来のナショナルダービー
この試合は優勝争い中ではあるものの、一人のサッカーファンとして純粋に楽しめる試合です。個人的には日本サッカーがこの2チームのような方向に進めば楽しいとも思っています。未来のナショナルダービーになることを期待して、残り数時間を待ちましょう。