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【Review】2019年J1第5節 川崎フロンターレVS.松本山雅「復調は左から。」

はじめに

 2019年J1第5節の川崎フロンターレは、2-0で松本山雅に勝ちました。
 代表戦の中断を挟んで2週間ぶりのリーグ戦でしたが、見事に今季初勝利。阿部の不敗神話も29に伸び、チームに明るい兆しが見えた一方で、まだまだ課題もちらほらと見えた試合になりました。

左サイドから整える

 まずこれまでと違ったのが左サイドの選手起用で、左SB登里、左SH阿部はともに今季初スタメンでした。怪我もあってここまで出場時間が少なかった阿部にはなによりも得点が期待されていました

鬼木監督「阿部に関しては2つ前のトレーニングマッチでも非常に良かったのと、あとは自分達のポイントのところでは得点というものを求めていたので彼を選択しました。」
(引用元:川崎フロンターレ公式HP「ゲーム記録:2019 明治安田生命J1リーグ 第5節 vs.松本山雅FC」<https://www.frontale.co.jp/goto_game/2019/j_league1/05.html>)

  川崎はこの試合前まででシュート成功率が約4.5%と低く、「リーグで最もシュートを打っているチームながら、枠内シュート率は高くなく、結果的にゴールを奪えていな」かった。ということでわかりやすくシュートが上手い選手を起用した鬼木監督。シュートへの期待からかタッチライン際よりも、内側に入っていくプレーが多く見られました
 登里の起用については次のように述べています。

鬼木監督「より攻撃的に行こうということで、ノボリ(登里享平)を先発に起用しました。実際にトレーニングやその前の試合でも非常に良いパフォーマンスをしていましたので起用しました。」
(引用元:川崎フロンターレ公式HP「ゲーム記録:2019 明治安田生命J1リーグ 第5節 vs.松本山雅FC」<https://www.frontale.co.jp/goto_game/2019/j_league1/05.html>)

 登里の好調はもちろんですが、阿部との相性も考慮しての選択だったと思います。阿部はサイドで待ってもらうよりも、動きながらもらうのを好む選手です。そのため左サイドでコンビを組むSBには柔軟なポジショニングが求められます。その意味では車屋よりも登里の方が適任でしょう。

登里「相手のウィングバックがどう出てくるのか。アベちゃん(阿部浩之)とも、うまくポジションを取りながらやっていた。相手のウィングバックが食いついた瞬間、自分が大外に出る意識はしていた。」
(引用元:川崎フロンターレ公式HP「ゲーム記録:2019 明治安田生命J1リーグ 第5節 vs.松本山雅FC」<https://www.frontale.co.jp/goto_game/2019/j_league1/05.html>)

 この2人の特徴はとにかく相手を見てプレー、特にポジショニングできることです。上のコメントでもあるように、この試合では松本のWB田中をいかに攻略するか、ということを徹底していました。
 相手を見てポジショニングをすることで、効果的にパスコースを作ることができます。相手だけでなくもちろん味方も見ているので、寄ってきた知念や家長とも重なることは少なかったです。また2人ともがサイドに張ることがないので、他の選手が必要以上にサイドに近づかずかなくて良く、結果的に川崎特有の左サイドへの偏りが緩和されていました。

また、攻撃の際も「左サイドに固執」していた部分から脱却。右サイドでの攻撃もこの試合は多かったと思います。
 実際、アタッキングサイドの数字も前節から大きく変わっていました。2試合とも、中央からの攻撃が「21%」だったのに対し、ガンバ戦は「左49%」で「右30%」でしたが、松本戦は「左41%」で「右38%」でした。(太字ママ)
(川崎人@ブログ垢「2019年 明治安田生命J1リーグ 第5節 VS松本山雅 試合結果~僕らに大事な№8のこと~」<http://blog.livedoor.jp/k_sp_bito31/archives/1074356823.html>)

誤算だった絶好調の知念

 対する松本は絶好調の知念が誤算でした。守備の大まかなプランとしては、スピードのある前線3人で追い回して長いボールを蹴らせて、こぼれ球を拾いたかった(あわよくばショートカウンター)と思います。実際に川崎は序盤ビルドアップに苦しみ、ロングボールを蹴らされました。ところがそのボールを知念が拾いまくりました。大迫に負けずとも劣らないキープ力でボールを収めまくったことで、松本は奪いどころで奪えず、徐々に前線からのプレスを弱めていきます
 逆に松本はワントップのペレイラにボールが収まりません。(いままではどうかは知りませんが)この試合では前田をシンプルに裏に走らせるシーンは少なく、一度ペレイラもしくはセルジーニョを経由してからサイドに展開する意図があったと思います。ところが川崎の切り替えの速い守備によってそうした攻撃の精度は下がり、さらに奈良と谷口の対応に封殺されてしまいます。車屋に交代後ならもう少し競合いで勝負できたかもしれません。
 「複数得点は昨季ラスト15試合で2回だけ」の松本は、今季もリーグ4試合で1試合のみと、得点力に課題がありました。そのため不調の川崎を無失点に抑え、どこかで一点取って勝てれば最高、0–0でも御の字という想定だったでしょう。
 前半は狙い通りの展開だったのでしょうが、終了間際に失点。後半も立て直したかにみえましたが、2失点が重くのしかかりました。普段の複数得点も難しいのに、劣勢の中での2得点は今の松本には難易度が高かったのでしょう。2失点目のあとは攻守ともに噛み合わないシーンが目立っており、焦りが伝わってきました。

強引なところもあるけれど、勇気を持ったビルドアップ

 この日の川崎は、ビルドアップの時にCBが幅広くポジショニングしました。これをやる技術はありますが、奪われた時に相手にゴールへの最短ルートを開ける危険な位置関係になるので勇気が必要です。しかし、相手が3枚でプレスをかけてくるという予想もあってか、この試合では谷口と奈良が幅を広くあけ、その間に田中が落ちてビルドアップを開始しました。背後からのプレッシャーをいなすのが得意な守田が中央で受ける形は、スムーズなパス回しに寄与していました。
 しかし2人の二手先まで読めないという課題が露わになった試合でもありました。彼らはたとえ狭くても目の前のスペースを使うのは上手いのですが、その後に繋がらないことがわりとあります。一手先は空いているけれど、その先に出口がないのです。
 狭いスペースで回せる力に依存しがちで、ボランチのところで勝負しようとしてしまうクセがあるように思います。そうした彼らの姿を見て、相手のプレスを正面から受け始めた前半30分過ぎあたりからは、中村が下がってサポートするシーンが増えました。せっかく田中と守田以外にも家長や阿部などパスを回せる選手が多いので、彼らにスペースを空ける動きがもっとあっても良いのではと思います。

まだまだお試し期間

 5節目にしてようやく初勝利を手にしましたが、鬼木監督としてはまだまだお試し期間な気がします。それが表れていたのが脇坂とカイオの同時ベンチ入りです。いくら2人とも調子が良かったとはいえ、下田や山村もいる中でリーグ未出場の2人をベンチに入れるのは、この試合だけではなく先を見据えた采配でしょう。
 いまの川崎にはボランチはいくらいてもいいです。というのも、前からの守備を強化するとどうしてもボランチの守備エリアが広がってしまい、負担が増えてしまいます。大島と守田が怪我がちなのもこのあたりが影響してそうです。現状その守備構造を変えることは難しいので、出来るだけボランチ候補を増やしておきたいというのが鬼木監督の心中だと思います。
 他方で右SBのベンチ入りはありませんでした。いざとなれば守田か登里を右に回したでしょうが、そこで想定されているのはあくまでも怪我などの非常事態だったと思います。つまり鈴木がゲームに上手く入れないことはあまり想定していなかったのではないでしょうか。実際以前よりも鈴木は試合に馴染んでいるように見えましたし、試合後に下のようなコメントができるのは相当手応えがあったんだと思います。メンバー構成から、鈴木ならこれくらいできるという鬼木監督の信頼を感じました。

鈴木「あとは右サイドでアキさん(家長昭博)とケンゴさん(中村憲剛)でボールを回しながら、隙を作ることもできていたと思う。」
(引用元:川崎フロンターレ公式HP「ゲーム記録:2019 明治安田生命J1リーグ 第5節 vs.松本山雅FC」<https://www.frontale.co.jp/goto_game/2019/j_league1/05.html>)

おわりに

 中村、家長、阿部が頼りになることを再確認した試合でした。特に阿部がいるだけで試合が締まって手堅いものになります。なんなんでしょうねこの安定感は。彼ら3人に周りが上手く絡めてくると、ここ2シーズンの好調チームが戻ってきそうです。その点では知念と鈴木は良い感じでコンビネーションを作れてたのではないでしょうか。
 とはいえまだまだ課題は多く、どんな相手でも勝てるかといわれると言葉に困ります。そんな中次節は最近苦手なセレッソ大阪ということで、苦い顔をしながらレビューを締めたいと思います。。。


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六
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