放置子 続
『放置子』からの続きです。
息子がA君に殴られたと担任教諭から連絡を受けました。電話をしてきた担任教諭は「息子君は、悪くないんです!」と慌てた様子でした。
息子は、母親の私から見ても、大人しく優しい性格で暴力を振るうことは考えられません。
電話口の担任教諭からは、A君が落とした下敷きを息子が拾ったところ、A君に叩かれたということでした。
拾ったら叩かれた??? 何で?
意味が分からないままでしたが、「息子君がショックを受けているので、できれば迎えに来てもらえないでしょうか?」という担任教諭の言葉に、すぐに迎えに行くと伝え、車で学校に向かいました。
自宅は、学校に近いので5分とかからずに到着しました。
息子の教室に行くと、担任教諭と保健室の先生がいて、息子に話しかけていました。私に気づくと、担任教諭からは電話で聞いたよく分からない説明と謝罪を受けました。
息子の頬は少し赤くなっていましたが、すぐに冷やしてくれたおかげでほとんど分からない状態でした。私に気がつくと、泣きそうにしている息子が可哀想で、何とも言えない気持ちになったのを覚えています。
A君は、その場にいませんでした。
この時、私はもっと怒っても良かったのかもしれない…と後で思ったりもしたのですが、叩いたのはA君で、その場にいたのは担任教諭と保健室の先生だけです。私も軽くショックを受けていたのだと思います。
帰宅しつつ、息子にどうして叩かれるようなことになったのか、聞きました。
教室で帰りの会の前に帰宅の準備をしていたら、A君が下敷きを落としたそうです。
「B君がね、『A君、下敷き落ちたよ。拾ったら?』って言ったんだ。でも、A君が全然拾わないからさ、近くにいた僕が拾ったら殴られたんだ…」
「殴られたの?叩かれたじゃなくて?」
「うん、グーで」
「…殴られた後、痛かったでしょう」
「最初、よく分からなくて、泣いた」
叩かれたと殴られたとでは、だいぶ、ニュアンスが違うと感じました。
帰りの会の前だったので、教室にクラスメイトも全員いて、息子が殴られたのを目撃した子もたくさんいました。殴られた後、声を上げて泣く息子を想像すると、私まで泣けてきます。
担任教諭の「息子君は、悪くない」とはこういうことだったのか。
その後聞いた話では、A君は自分で拾いたかったのに、息子が拾ったのが気に食わなかったということでした。
担任教諭は「A君、そういう時はまず、『ありがとう』だよ?」と言ってくれていましたが、どこまで伝わったことやら。
A君のお母さんには、後日、直接謝罪を受けました。
その後、A君の家庭が「行政から支援のいる家庭」だとあちこちから聞くことになりました。
公営住宅に住んでいて、10人兄弟。
以前は、持ち家だったが、老朽化が進んだ為、住めない状況になり、だが、立て直したりリフォームする事も出来なかった。
兄弟姉妹が多く、更に、5、6、7番辺りのお子さんが体が弱く、親はその子に手を取られている。
末っ子のA君まで手が回らない。また、経済的にも困窮している。
娘も息子も同じ年のママ友は、言いにくそうに。
「子どももさ…小さい頃は、分からないけど、段々、自分の状況が分かるようになってくるよね…A君の上のお子さんは、不登校になってるらしいよ」
兄弟姉妹が多いと、お金もかかるでしょう。また、A君のお母さん自体にも持病があるそうです。
私が耳にしたA君の家庭の事情は噂もあるので、全てが本当だとは言えませんが、不憫だな…とは思いました。ですが、私がA君の置かれている状況をどうにか出来る問題でもありません。
だからといって、息子にしたことを許す気にもなれませんでした。複雑な心境です。
参観日に行くと同じクラスのA君を見ます…微妙な気分になります…。