【小説】フラッシュバックデイズ 17話
この小説は決して違法薬物を推奨するものではありません。
架空の話であり、小説、エンターテイメントとしてお楽しみください。
17話 シークレットレイブパーティー 前編
俺の部屋には彼女の私物が日に日に増えていった。
彼女の名前はマキ。
エキゾチックな顔立ちに長い黒髪。
細くて華奢な身体。
真っ白な肌の背中にはインドで彫ったタトゥー。
こんな天使のような娘が俺の部屋でマリファナの煙を俺に口移ししている。
マキは煙を吐き出した後、そのまま俺にもたれかかった。
マキは俺より1つ年下だが、大人っぽく感じる時と甘える時のタイミングが絶妙だ。
俺は煙を吐き出しながらMDMAの効きと同等のナチュラルな多幸感に包まれた。
生きていてよかった。大阪に引っ越してきてよかった。
クラブ活動を数週間忘れる程の甘い時間を過ごしていたある日、お客さんから今夜、山奥でのシークレットレイブが開催される事を耳にした。
フライヤーすらないシークレットレイブながらトランスの大御所の夫婦ユニットがゲストが出演するらしい。車を持っていない俺にとって山奥で密かに行われるレイブはいつか行ってみたいと思っていた。
今回は電車とバスを乗り継げば行ける距離だ。
マキに電話すると一緒に行きたいとのことだ。
マキと初めてのパーティーは急遽今夜シークレットレイブに決まった。
バイトを終えると店の前にマキ、マキの友達とその彼氏が待っていた。
マキの友達は細い三つ編みをお団子にしたエスニックな雰囲気。彼氏は太いドレッドヘアーでお似合いのカップルだ。
駅のホームではやや異彩を放つ4人で電車に乗り込む。
ドレッドヘアーの男は九州男児らしく兄貴っぽい頼りがいのある人柄で初対面だったがすぐに打ち解けた。
会場の最寄りの駅を出るとロータリーは真っ暗で何もなく閑散としていた。
最終のバスはすでに出発してしまっていた。
大体の場所は把握しているが、ここからどうやって行けばよいのかはわからず、辺鄙な駅で途方にくれた。
ドレッドヘアーのダイゴ君はこういう場面に慣れているのか、落ち着きはらって、ベンチに腰掛け、「なんとかなるでしょ、まあ、一服でもしよか」と言って、バッグから細いジョイントを取り出した。
4人でジョイントを回し終えると、ダイゴ君は「こういうのも思い出になるよ」「最悪歩けばゲストまでには辿り着くでしょ」と前向きな発言で皆を安心させた。
さて、いよいよ本当に歩いていこうと覚悟を決めなければいけないと皆が感じ始めた時ロータリーに一台のタクシーが入ってきた。
ダイゴ君を見ると「ほらねなんとかなるでしょ?」といわんばかりに微笑んでいた。
タクシーに乗り込むと運転手は「○○でやっている音楽のとこに行くのか?」と聞いてきた。直前に乗せた客もレイブ目的だったらしく、さっき乗せたお客さんが、バスが終わって困ってる人がまだいるはずやからと忠告してくれたおかげで、会場近くから駅に戻ってきたそうだ。
運転手はこの辺鄙な田舎で音楽イベントが行われることを不思議がっていた。
「ここから先は歩いて行ってや」と舗装されたアスファルトが途切れたところで降りると既に音が聞こえていた。
少し上の頂上から光が漏れている。
光を頼りに歩くとだんだんと音が鮮明になってくる。
シークレットレイブの会場は近づくまではわからなかったが、
周りは段状の芝の丘で囲まれ、中央には上部がデコレーションされたグランドのようなフロアが広がっており、その奥にDJブースがもうけられていた。正にサイケデリックトランスのレイブパーティーといった雰囲気だ。
フロアで体を揺らせていると久しぶりのトランスの為か、イマイチ乗り切れない、そういえばネタがない。朝家を出る時はレイブに行くつもりいではなかった。レイブにシラフではやってられない。アシッドが欲しい。いや、せっかくのマキとの初めてのパーティーだ、玉でもいい。
ダイゴ君に何か持っていないか聞こうとしたが、楽しそうに踊っている。何か既に摂っているのかもしれない。自分が楽しい時にネタの話をされるのは萎える。ましてや初対面でネタを譲ってくれというのは少し気が引けた。
マキは隣で踊っているが心なしか同じ気持ちのようだ。
突然、肩を叩かれた。
振り返るとカフェのミキだった。
つづく
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