MIXで振り返る『ニセモノのキミへ』

こんにちは!この記事に興味をもって頂いてありがとうございます!
今回、いとーじ様のSVF2023参加作品
ニセモノのキミへという楽曲の全体のMIXとMasteringを担当させて頂いたむきゅと申します。
今回ご本人様から許可をいただけたので『MIXの観点』からこの曲について細かい事を話していきたいと思いますのでよろしくお願いいたします!

まずはこの楽曲をMIXするにあたってどういう点に気を配ったかを説明します。大まかに分けると2つあって

  • 爽やかさ

これはニュアンスで伝えるしかないんですけど、楽曲として全体の帯域はしっかりしてて、音瘦せを感じないのにサウンドに軽さを感じる(良い意味で)これが結果的に明瞭的というか最終的に爽やかなイメージにつながります。
これは本人からのオーダーです。

  • ハーモニカの整合性

これはこの楽曲で納品直前まで悩んでいた最大の課題で、
この音は全体で一番音量に差が大きい楽器で、最初は
(sausage噛まして音量下げればいいかな…)とか思っていたんですよ。

これを踏まえてMIXを見ていきましょう!まずはハーモニカから。

sausage fattener

これで何とかしようとしていたんですけど、当たり前なのですが、
だんだん原音が崩壊していってたので、
(正攻法でしっかりつぶせるコンプ使おう!)
って事で登場します。

T-Racks5 BLACK76

うたえぼの件でも登場したのですがこの記事ではボーカルにかけるといった使い方で紹介しましたね。今回はハーモニカにかけているため、設定数値は全く変えています

ハーモニカを何のマイクで録音しているか聞いてみたら、『SM58で…』と言われたのでちょっとこんなのを1段目に挿してみました。

TR5 Mic Room

あまり利用ケースが少ないのですが、使ったマイクの周波数特性を指定したものに変更するというちょっと笑えるプラグインです、そもそもの音質などは録った環境に依存するというのは宅禄やスタジオ問わずある不文律なのですが、今回は案外上手く聞いてくれました、SM58系の音をU87ai系の音に変更する設定をしました。ボーカルにはU67の方が…ってなるのですが、今回はハーモニカ、楽器なのでこうゆうアプローチも有りじゃないかな?っと思ってやってみました。

2段目には

KirchhoffEQ(ハーモニカ設定)

購入したのは去年円安恐慌に襲われる直前に買っていてここ数か月使い方を模索していたのですがようやく本格運用となります。巷でProQ3キラーと呼ばれている多機能のEQです。
こちらを2段目に挿しています。(以降EQは全部これ)

3段目に先ほどの設定でBlack76、
そして4段目、これがあるナシだと結構変わるのですが。

TR5 Fame Studio Reverb

お前はIKの回しものか!!!って言われそうですが。チャンバーの設定でかけています。コンデンサーマイク設定にしたのになんでダイナミックスイッチ側に傾いてんの?って思いますよね、
録ったそもそもの音はダイナミックマイクなのでそうしてます。
DAW側の設定でパラレルしていて比率は10%です。
めっちゃ僅かですよね。20%だと強すぎるし無いとめっちゃ浮きます。

次はベースです


KirchhoffEQ(ベース設定)

ベースなんですが、前述の通り爽やかさを求めているので低域楽器は最初に処理しました。
削っているのは一番鳴りが出るところでここは他の楽器とぶつかりまくると明瞭度にかけてしまうので削っています。
持ち上げているのは逆の意味なのですがここはアタックが聞こえる帯域なのでベースがちゃんと鳴っている事を主張出来るようにもちあげています。
それだけ?それだけです、結構元からあまりいじる必要を感じなかったので。
次にベース2段目。

Fruity Limiter(ベース設定)

ベースが主張しすぎると楽曲のイメージが重くなってしまうので、
ベースにかける設定である筋は曲げないのですがやや軽くなるようにレシオを緩くしています。

次Celesta
これチェレスタって読むんですね。クリスターって読んでました。
楽器の見た目はオルガン系ですがなる帯域はオルゴールと対して変わらないのとこの楽曲の場合ラスサビ前のソロで鳴っているので、ボーカルを邪魔しないこととボーカルのリバーブを邪魔しないようにの2点だけ考えてこうなりました。

KirchhoffEQ(チェレスタ設定)

高域で‐12㏈も削っているのはなんか出ていたからです。音源そのもののライン収録の切り忘れなのか分かりませんがとてもモニター環境だと刺さる音だったのでそこだけ削っています。シェルビングしてないのはそこしか出てなかったからです。

次はピアノです。
これは以前にも似た設定を紹介したことがあるのですが、ピアノをタイトな音にしたかったので重さを含むピアノの音はバッサリ下を落としています。

KirchhoffEQ(ピアノ設定)

ピアノの鳴りや重厚感を付与する帯域はすべて落としています、
もちあげている帯域はピアノのでしか出せないキラキラ感と、ピアノなってますよ!っていう主張、ベースと一緒ですね


Fruity Limiter(ピアノ設定)

っえ?ピアノにコンプ?
って思う方、趣向によっては一部いると思いますが、今回はバンドサウンドの一部にピアノが入っているので強弱で暴れださないように予めコンプで潰しています。かなりパキパキ鳴る設定になってます。

そして3段目

TR5 Fame Studio Reverb

またお前か~!!
今回はルームの鳴りでピアノモードにしています。
今回もDAWのパラレルで調節していて比率は約25%です。
全体と混ざるとこのくらいがちょうどよかったです。

次はバイオリンです。

KirchhoffEQ(バイオリン設定)

かなり下からいっているのですが、バイオリンは弓と弦から出るアタック感で存在感が出るので欲しいけど鳴りはいらないなってことでこうゆう設定になりました。

2段目にちょっと飛び道具を挿しています

DeeWider

これどうして挿しているかというと、多分ソロ系のViolinを使用した影響だと思うのですが、楽曲全体で全然一体感の無い浮いた音になったのでちょっと輪郭をぼかして溶け込ませるために挿しました。

次はリードギターです。

KirchhoffEQ(リードギター設定)

うわ…って引いた方いると思います。
大体ギターってそのままならすとここ刺さるよね。がガッツリ反映された音だったので、刺さるとこはしっかり削って良いところはしっかり残したり強調する!っと考えた結果こうなりました。
リードギターでこうゆうことはよくあります。

次はコンプです。

Fruity Limiter(リードギター設定)

リードギターなので強弱は多少必要だろうということでレシオは妥当な感じであまり潰し過ぎないようアタックとリリースはややゆるゆるでかけています。

次はクリーンサウンドのギターです。

KirchhoffEQ(クリーン系ギター設定)

柔らかいクリーンサウンドなんですが、低域を持ち上げるともこもこしちゃいますよね。でもフレーズは聞かせたい!ってことで芯を上手く掴んで持ち上げました。
低域はやせ細らない程度に削ります。

次はコンプ。

Fruity Limiter(クリーン系ギター設定)

クリーン系の音は柔らかいイメージは持っていますが弾き方に波が出ないサウンドという訳でではなくて、むしろ波が大きいので、attackはしっかり潰してなだらかにもどしてあげましょう。ってイメージでこんな感じ。

3段目は

TR5 Sunset Sound Studio Reverb

お前やっぱりIKのry
えっとですね、Fameの音じゃないんですよ、このギターの音って
リードギターと違ってあまり残響が目立たないので挿しました。
こう、Fameは何だかふくよかなリバーブがかかるんですが、Sunsetはシャキッとしつつ懐かしさ?も残るような哀愁漂うような音でそんなイメージが欲しかったのでこっちにしました。

次はディストーションギターです。
ギターだっ!ってイメージのがダイレクトに伝わる楽器ですが、この楽器の前に2つの種類のギターが出ているので設定にも若干慎重になると思うじゃん?

KirchhoffEQ(ディストーション系ギター設定)

ああああ???手抜きだ!!ひどい!!違うんですよ、
これさっきどこかで出てきた設定に似てません?
そう、ベースに近い設定ですよね?どうゆうことかというとこのギター、他のギターと違って結構低い帯域でなっていて、いらない場所やほしい場所以外に差異があまりなかったので余計なことはせずシンプルに仕上げました、その代わり次の段で味付けをしっかりしています。

2段目です。

Fruity Limiter(ディストーション系ギター設定)

ディストーションギターは聞けば普通に分かるように音量の大小が激しいのですが、クリーンギターと意識する点は割と似ていてゆういつ違うのがレシオです。かなりしっかりつぶします。よれによって楽曲全体で暴れるようなサウンドにはなっていないということです。

次はドラム系です。
まずはハット系(これはペダル、クローズ、オープンまとめてです。)

KirchhoffEQ(ハット類設定)

これはあまりにも生々しいサウンドをもったハットで、こうゆう音EDM系ではアリなんですが、バンドサウンドではちょっと味が付き過ぎたように聞こえてしまうので欲しいとこだけ出して、いらないパワーは削ごう!って大掛かりなそぎ落としを行ってこんな設定になりました。

次はキックです。

KirchhoffEQ(キック設定)

はぁ??ってなりますがいままで中低位を入念に削っていたのはこのためです。ロックサウンドでキックが埋もれるのはいくら爽やかさを求めていてもナシです。ということでここではキックをガッツリもちあげています。ただスネアと競合しやすい中低域はちょっと削っています。

2段目
HAHAHA更に太くするぜ!!

Sausage Fattener

ハーモニカで追放しても出てくるこいつ。
EDMサウンドでは高頻度で出てくるのですが、生音ではあまり出番として好まれません。生音で音楽を作りたい人はそもそも購入選択肢にも入らないので、こうゆう曲が好きでこうゆう曲ばかり作る方はあまり見かけないかもしれませんね。

3段目
散々キックは太く大きく!って言った癖にコンプはちょっと引き締めた音にします

Fruity Limiter(キック設定)

まあ一言で言えばボンキュッボンってやつ。
レシオはキックなので結構高めですが、最終的には太くてもタイトに切れるようになってます、Releaseが遅く見えますが打ち込みじゃないので早くしちゃうとサイドチェインかかったみたいになっちゃうので遅くしています。

次はスネアです。

KirchhoffEQ(スネア設定)

キックで存在感をかき消したすき間に入り込んできた感じの設定です。
緻密に計算してこうなっているわけではないですがキックの後に設定して絡み合いを重視すると自然とこんな感じになっていきます。
このスネアではアタックやスナップ感の出る当たりの帯域を消しています。
最初のブレイクとキックで削った分を埋めるのが実際考えていた目的なので。

2段目です。

Fruity Limiter(スネア設定)

早いフレーズが結構多いのでキック同様サイドチェイン的な現象が起きないようにちょっと緩くかけました

次はシンバルです。

KirchhoffEQ(シンバル設定)

なにこれ?
ちょっと高域を抑えた独特な響きをシンバルに付与して楽曲全体の雰囲気作りに加えました。
実際結構高域刺さっていたのもあるので。
リバースシンバルにも全く同じ設定でエフェクトを挿しているのですが、こちらはあとで解説するバストラックに通していません。

次はタムです。

KirchhoffEQ(タム設定)

楽曲全体でそんなに頻繫にならないので鳴れば鳴ってる!って気付くくらいの設定です。

そしてドラム全体をまとめるのに使用したバストラックの解説です。

1段目には

Brain Worx townhouse Buss Compressor

こちらを使用しました。いわゆる実機系というものの1種で詳しい方からするとSSL系と呼ばれるものなのですが、色んな会社から出ている分、実機はシュミレートした環境が会社の実機コンプの特徴に直結するのですが、
今回の雰囲気に会うのはこれでした。
SSL系はよく『音を接着剤のように貼り付ける』という音楽を始めたての人にはよくわかりにくい例え方をされるんですが、ホントに音をイイ感じにまとめてくれるエフェクターだと思えばいいと思います。
ところでみなさんドラムに必要不可欠な物を忘れてませんか?

2段目

TR5 Sunset Sound Studio Reverb

ギターとは全く違う設定にしています。
ドラムは全体にリバーブをかけるとキックがゴゴゴゴゴゴゴって鳴りだすので、150Hz辺りからハイパスで響かないようにしています。

これで楽器全体の解説は終わりです。

まだありますよ…?
肝心なみなさん興味深々になるボーカルMIXのお時間です。

まずFLstudioから2mixを最高な音質で書き出します

32bit frootの48kHz

そうしたらStudio Oneで開きます。
僕がボーカルMIXとstemMIXで極力DAWを分ける理由ですが、そのほうがやりやすいからです。
いわゆる枕が変わると眠れないのと同じです。

そしたらまず2mixと千冬ちゃんの声をおきます。
あと個人的にキーもつけていますが、拍子を設定するのは絶対だと思っています。時々あとで設定しなかった事を後悔するので。するくらいなら最初から設定する習慣をつけるべきだなってことで。

2mixと千冬ちゃんをおいた図

説明する順番を間違えましたが、千冬ちゃんのボーカルをスタワンに置く前に下準備をします


BEHRINGER MIC200(真空管改造品)

ベリンガーのMIC200という実機の中に入っている安物の真空管をECC83Sというスロバキア製のものに交換して使用しています、最近は近隣の国の情勢が原因か値段が3~4倍くらい上がっています。
ですが、最近でも壊れる気配は無くMIC200も生産完了品なので壊れるまで使い倒すつもりです。でこれでリアンプを行い、増幅した密度の濃く生々しくなった千冬ちゃんの声をStudio Oneに取り込みMIXをします。

まずメインボーカルから

TR5 De Esser

ちょっまたTR5やry
とりあえず生々しくなったということは高域の解像度も増すのでディエッサーで高域をある程度抑えこみます。


KirchhoffEQ(ボーカル設定)

特段ここだけ邪魔!!っていうのはなかったので千冬ちゃんの中低域の暖かさだけ損なわないように注意しました。以前ボーカル低域はシェルビングしろ!っていったのに今回していないのは低域にリアンプした時のハムノイズがあるからです。

次にコンプ(一つ目)です

TR5 Black76

以前ご紹介したドクペ設定からインプットに変更を加えた設定ですが。傾向としてはサビでの張り方は花梨パイセンに似てるかな?っと思いました。

コンプ(2つ目)です。

TR5 White 2A

あれあれ??この組み合わせどっかでみたぞ?
確かにこの組み合わせは以前解説しました。この組み合わせはバラードやブルース、スウィングなどといった楽曲を除いては大体の楽曲に汎用性の高い、ボーカルリミッティングの組合せになります。
僕がMIXの際あまりフェーダーを細かくいじらない。というのはここで音量決めちゃうからですね。

次はハモリです

TR5 De Esser

メインボーカルと同じ設定です。以上


KirchhoffEQ(ハモリ1設定)

ハモリのEQはメインとぶつかる邪魔なところを削ればそれでいいと思っています。高域をシェルビングしておくとマスタリングで高域が刺さる!メインボーカル抑えても治らない!!って初心者が陥りがちなミスをするケースが減ります。

次です

Dee Wider

さっきのだ!だけどまっくすだ!
それだけではないんですね、さっきバイオリンで使った時は左上2番目のボタンがオンになっていなかったんですね。これはDUOスイッチでダブリング効果を付与します。ダブリングをするとハモリで使うトラック数の削減ができます。


TR5 Black76

メインボーカルと同じ設定です。以上


Compressor(Studio One標準)

Studio One標準のコンプはガチガチにつぶしたくない時に助かります。
アタックリリースゆるゆるでハモリに合うサウンドに調節。

ハモリが今回は2つありますが2つ目のハモリはDeeWiderを挿していないこと以外変わらないので割愛します。

センドトラックの説明します

Exponential Audio PhoenixVerb

現在はiZotope社の傘下として販売しているプラグインで、
元Lexiconというリバーブで有名なメーカーに在籍していた方が立ち上げた会社でこのリバーブの品質も高く評価されています。僕は楽曲によってリバーブをコロコロ変えるのですが、今回はこちらを使用しました。こちらはプリセットからいじりました。

そしてセンド2つ目です

Analog Delay(Studio One付属)

ピンポンディレイも簡単に出来る優レモノ。
今回はラスサビ前の響くエコーに使用。

マスタリングに関しては僕に依頼をしてくださった方に参考になるようにと画像を渡しているので今回ここではお話は割愛させてください!
><(お仕事なくなっちゃうのでゴメンナサイ)
強いていうなら最後に挿したプラグインなら紹介します。

SoundSpot Velo2

音圧大好きならオススメです安いし。
ただどんなPCでもどんなDAWでもOverSamplingを8倍にすると使用率が100いきます。
今回はバッチしロック系な音圧感は欲しかったのでこれにしました!

以上です!!長々と書いてしまいましたぁ!

興味ある方は参考にしてみてね。もちろん強要はしません。音楽のアプローチなんて千差万別いろんな方がいますし僕が100%正解とは言いません。
ですが、僕のサウンドを好いてくれるのであればそれは感動ものです。

最後まで読んでくれてありがとうございました!
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ではお疲れ様です!むきゅでした!!

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