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コーヒー


苦くて、深くてー。
いただいたら、美味しいフリも出来ずに。
ぎこちなく笑っては、眉間に集まりそうなシワをなんとか散らして、息を止めて出来るかぎり、
味という情報をシャットダウンしてた。
一口飲み込むのがやっとだったのに。

今じゃもう、
「苦いな」
この一言だけでサラッと飲めてしまう。
私の眉やシワは動かないでもいられるみたい。
これは、私が大人になった証拠の1つなのかもしれない。

大人になる。
大人と認識される年齢になって、
似た表情の雰囲気を纏う人々に囲まれて、滲みでた、同じ色に染められてるみたい。
些細なものにも敏感に反応していたのに、
大人が私に与えてくれるのは、鈍さな気がした。
簡単に傷ついていたのに、
痛みを感じるセンサーはだんだん鈍くなっていく。
苦味を受け入れられてしまう。
イタミが薄くなってくみたい。
傷が薄くなっても消えることなくそこにあるみたい。
見えるのに、感じない。
感じるから見えるのに、反応できない。

鈍くなった範囲が広くなったくせに、
ぶり返したように、
かけられた麻酔が解けていくように、
敏感さが戻ってきたところもあって。

ピーマンが食べれるようになったよ。
下ネタやややセクハラを不快を感じるよりも先に
テキトーに流せてしまえるようになったよ。
何一つ頑張る理由が見いだせなかったとき、仕事を簡単に辞めてしまったの。
人を傷つけてしまうことにやたら敏感になって臆病になったの、、、
etc

笑っちゃうくらい、
今はバランスが悪い。

かつて苦手だったものへの拒否反応が鈍くなって。
私が受け入れられる量はかつてよりは多くなっても、そんなに変わらないはずなのに。
私は何を手放したんだろう。
何と引き換えたんだろう。
悪いことばかりじゃないはずだけど。
きっと同じくらい。

今からは何を受け入れるんだろう。
まだまだ自分で選べる気がしない。
いつか、私が手にしたいものといらないなってもの
選べる時が来たらいいな。

今はただ、流れに任せてしまおう。

そうやって、ここまで生きてしまったんだから。

いつか私にも苦味を苦味のまま、
そこにおいしさに気づくようになるのかもしれない。

今はまだわからなくて、
鈍くて敏感に。
大丈夫なフリも上手に、
生きていける。


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