泣きたい夜には布団の中で声を潜めて


泣けなくなったなぁと思うようになった。
泣くことよりも我慢することの方が得意になった。
そうして我慢してたら、いつの間にか泣けなくなった。
自然と沸き起こる感情を抑えるということが大人になることへ向かうならば、
それは、私から一つ一つ備わっていたはずの正常さを持って行ってしまったみたい。
私は大人の世界に溶け込むために、元々備わっていた正常さを引き渡している。じりじりと。
正しさと不道徳さの間で揺れているメトロノーム。
いつの間にか、不道徳さの方へよく揺れているね、
「泣きたい」という声のトーンは泣きそうなトーンではなくて、
いつもと変わらない表情と声音で。
大したことでもないことを今思っているからと叫んで泣けたのって実は赤ちゃんの時くらいなんじゃないかな、とか。
くだらないことを考える夜。

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