エピソードA-4:父とお金にまつわるエトセトラ 其の四。

結局祖母には、大学2・3年生の2年間仕送りをしてもらった。4年生からは奨学金を借りた。貸し間は人間関係が嫌になって、家賃2万5千円のアパートに越したが、時々バイトもしたら、意外とお金が貯まった。父の魔の手から逃れたお年玉貯金も合わせるとなんとかなりそうだったので、授業料免除を受けて大学院に進学することにした。大学院生になると奨学金の支給額が少し増えて、バイトの回数も減らすことができた。

交通費節約のために殆ど帰省していなかった実家に久しぶりに帰ったのは、大学院1年生の冬だった。父は再就職するでもなく、ずっとエブリデーサンデーを満喫していた。祖母も元気で、小遣いをくれて、そして、言った。

「仕送りは足りてるか?」

祖母からの仕送りは、2年近く前に終わっている。祖母は当時80歳を越えていたから、そういうお年頃かと思って、どう返事をしようか考えながら、極力表情には出さずに祖母の顔を見つめた。すると、祖母の背後から、こちらに向かって両手を大きく振る父が見えた。私と目が合うと、次は人差し指をたてて「シー(静かに)」というジェスチャーを始めた。

デジタル大辞泉によると、中間搾取とは「賃金支払者と労働者との間に介在し、賃金の一部を横取りすること」とある。「一部」ではない当事例の正式呼称は定かではないが、要するに祖母からの仕送りは、振り込み担当だった父に全額搾取されていたのである。ちなみに父の弁明は「知ってるか?お前のばあさんは、オレのおかんやねん。オレの方が順番先」という、安倍内閣の答弁なみのロジックだった。

其の五 につづく。

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