祝福もふたりで
10/12〜14の日記
10/12(土)
4時半起床。まだ3時間しか眠っていないため、アイシャドウを塗るために瞼を閉じると、そのまま夢を見そうになる。どうにか堪えて出発。最寄り駅に着いたところで数々の忘れ物をしたことに気づくが、1分でも早く恋人に会いたいのでそのまま新幹線へ乗車。3週間ぶりのデートである。
ここ1週間は社会人になっていちばんの忙しさだった。3時間以上残業した日もあったし、朝晩が冷え込むせいか秋の花粉なのか鼻水が常に邪魔だった。適当なものを夕食に充てて朝早くから夜遅くまで仕事をする日々の中で彼との電話や週末彼に会えるという約束が唯一の癒しだったにも関わらず、彼に対して優しさを失いかけていた。大変なのは自分だけではないのに、自分が一番頑張っていると思い込み、自分以外は頑張っていないと見做しそうになっていた。そんな精神状態で彼に会うことがやや不安ではあったけれど、会えば全部が大丈夫になると信じて東京へ向かう。
丸の内で待ち合わせ。長袖シャツ1枚でやや汗ばむような気候だったけれど、陽射しは柔らかく風は優しく、明確に秋だとわかった。明るい街の中に彼が現れて、久しぶりに手を繋いだ瞬間に全て大丈夫な気がした。何も言わずに私のリュックを代わりに背負ってくれたとき、アガペーに近いような愛を感じた。きっと私に余裕がないことも気づいているはずだけれど、そんな私を受け入れてくれている。実際の会話はいつもみたいにくだらなくて楽しいものだったが、私はひっそりと大きな安心に包まれながら懺悔の気持ちだった。
代々木のハンバーガー屋さんで昼食を摂る。バンズを食パンに変更することが出来る珍しいお店。3階のイートインスペースはこじんまりとしていて、バックヤードのような雰囲気がタイミーで働きに来たみたいで楽しかった。私は通常バンズにしたけれど、彼は食パンに変更していた。パティが肉肉しく、ステーキのような食べ応えだった。写真を撮るときに「可愛い顔をして」と頼むと彼はほんとうに可愛い顔をしてくれる。逆光をもろともしないキュートさをおかずにポテトを食べ進めた。
吉祥寺へ移動。車窓から下品で派手な看板が見えたあと、彼と目を見合わせて笑った。彼が「明日じゃないが来てくれるんだって寝る前に考えたら、自然とベッドの右側空けて寝ててびっくりした」と言っていて、愛しい気持ちがリオデジャネイロまで突き抜けてしまった。吉祥寺に来るのは彼のお誕生日祝いをした6月ぶりで、あの日は雨だったから今日が快晴なのがますます嬉しい。
目的地の井の頭公園は家族連れやカップルで賑わっていた。今日はここにボートを漕ぎに来たのだ。思い出のマーニーみたいなボートもあればスワンボートもあって、どちらかといえばスワンボートに乗っている人が多かったからローボートは難しいのかな、と「井の頭」と調べると検索サジェストに「別れる」と出てきて彼が慄いていた。別れないから安心してほしい。
園内を散策したあと、意を決してローボートへ。私が最初に漕いでみたけれど要領を掴めず、5分経っても係員さんが間近にいた。全く進まない。えへえへと笑っていたら彼が漕ぐのを代わってくれて、その瞬間にぐんぐん進んで風が気持ちよかった。お姫様みたいな気分になれたし、なんとなくボートを漕いでいるところってカッコいいし。彼にレクチャーしてもらったけれど、なんかドキドキして全く集中できなくて、私はずっと下手なままだった。下手なりにこれから井の頭公園でデートをする予定のある人向けにアドバイスを書き残すとするならば、オールで大量のシチューをかき混ぜるイメージが良いと思う。焦げつかないように底からしっかり持ち上げる感じ。
ずっと、ほんとうにずっと食べたい食べたいと話しつつタイミングを逃していたキャロットケーキを食べにカフェを目指す。少し暗い店内に反した明るい笑顔の店員さんが嬉しかった。夏に広島で飲んで感動したコーヒートニックがあり、嬉しくなって注文。彼の頼んだ中国の豆のアイスコーヒーも飲ませてもらったけれど、どちらも公園で遊んだあとの体に沁みる爽やかさがあった。
服を見たり、雑貨を見たりしたあとスーパーに寄って帰宅。今夜はキングオブコントを見ながらたこ焼きパーティーをする。彼はかなり、多分詳しい人が見てもかなりのお笑いオタなので、こういう大型のお笑い番組をいつか一緒に見たいと思っていたからかなり急いで放送時間になんとか間に合わせた。私自身はお笑いに明るくないのでカタカナばかりのコンビ名が全く覚えられないままだったけれど、どのネタもおもしろいのに思ったより点数が伸びなかったり、東京03の飯塚さんと似た感想を抱いて嬉しくなったりした。お笑いの現実というか、売れたと言われるようになるためのプロセスは全く笑えるものではなくて、シビアなのだと知ったけれど、それを出さずに人を笑わせることだけに注力している芸人はどう考えてもかっこいい。そして就活を経て「注力」という語彙をナチュラルに使うようになった私はややダサい。
10/13(日)
6時起床。仕事の彼をベランダから見送る。もうすぐこのベランダも冷たくなるのだと思うと嬉しい。
彼の休日をなぞってみることにした。彼が教えてくれた近所の小さなパン屋さんでパンを買い、ぬいぐるみとパンを並べて写真を撮り、panpanyaの漫画を読んだ。パンも美味しかったし、それよりもpanpanyaがおもしろすぎて、月並みにページをめくる手が止まらなかった。
17時半に彼の職場の最寄駅へ。すっかり日が暮れていた。薄暗い街を、彼と甘い飲み物を一緒に飲みながら歩く。これをずっとできるなら、毎日シングルベッドでふたり眠ることが苦にはならない気もする。てか、既にそんなに苦ではないな。
池袋で彼がケーキを買ってくれた。もうすぐ付き合って一年になるというのもあるし、最近ふたりとも簿記3級を取ったのでそのお祝いという意味もある。半年記念のときも彼がケーキを買ってくれて、それを家で食べたあと私は幸せを知らない妖怪のように泣いたのだけれど(別記事参照)今回は幸せを知っているので泣かずに喜びを受け止められた。「俺はケーキ担当だから」といつのまにか重役を担ってくれていた。私は何担当がいいかしら、遠距離恋愛が終わったら、枯れることを気にしないでいられるから花束担当になりたいけれど。
夕食に焼肉を食べた。久しぶりの焼肉だった。この焼肉は簿記3級祝いの方。そんなに難しい資格ではないけれど、ふたりの頑張りを労うための焼肉。途中でバケツみたいな冷麺が出て焦ったりもしたけれど、ずっと楽しくて美味しかった。ケーキだとか焼肉だとか、お祝いの概念が近いのも嬉しい。スタバのコーヒー豆をお土産に、ほろ酔いで帰宅。一緒にお風呂入った。狭くて嬉しかった。
10/14(月)
休日も早起き。天気が良くて嬉しい。朝食は一緒にホットケーキを作ることにしたのだけれど、彼が「じゃがりこ食べながら作ろ〜」とひとり暮らしみたいな提案をしてくれたので冷蔵庫の上にじゃがりこを置いて交互に焼いた。こういう適当なところで共感できるのってほとんど奇跡だな。ホットケーキと昨日買った豆で淹れたコーヒーとじゃがりこが並ぶ変な食卓になった。全部美味しいのでこれが正解。
身支度をしてお台場へ。彼がずっと「ゆりかもめってすごいんだよ!」と言っていたので密かに気になっていた。サラリーマンの街、新橋に現れるデカ駅に吸い込まれ、なんだかアトラクションに乗るみたいでふたりして浮かれた。浮かれすぎて、彼はおろしたての万札をひらひらさせたり、私は顔はめパネルに直行したり、奇行とは言えない程度の奇行を繰り広げた。
お台場でランチをした。ずっと浮かれていたのでテラス席を選んだし、メニューはサラダもスープもついてくるコースにした。目前にあるのは多分東京湾で、隣にいるのは確実にいちばん大切な人。ファストフードも、手作りも、ちょっといいご飯も、全部一緒に楽しんでくれるのってすごすぎている。彼が好きなクリームパスタをずっと頼み続けられるように、私はそのパスタのきのこを代わりに食べてあげたい。ずっと残したきのこを食べさせてほしい。なんだそれって自分でも思うけれど、そう思ったのだから仕方ない。
お台場へは11月に行くディズニーランドで着る服を買いに来たのだ。関係ないお店もたくさん見たし、結局悩みすぎて何も買えなかったけれど、思いがけない可愛い服に出会えたので来てよかったと思う。何より、なんだか普通のデートみたいで嬉しかった。遠距離恋愛だと、どうしても毎回旅行くらい気合が入ってしまうから、それが悪いわけではないけれど、きっと普通のデートが呼び起こす「一緒に住んでるみたい」という感覚が何より嬉しいのだと思う。
夜は銀座をふらふらして、あまりの店構えに怯んだりしつつ、夜の東京駅に向かった。夜は丸亀製麺でうどんを食べて、新幹線の時間までマックで過ごした。このマックで、東京に来る前に欠けてしまっていた優しさについて反省を述べた。反省を述べたというより、もっと、私が思っていたことのすべてを言ってしまった。思っていることを全部言うのは、私がただ楽になりたいだけのひどく傲慢な行為であるような気が、最近特にしていて、本当に言っていいのか悩んだけれど、彼は全部聞いた上で受け止めてくれた。懐、マリアナ海峡?とか思ったけれどさすがにふざけなかった。
私は彼の何倍も子どもっぽくて、世の中に甘えていて、そしてダサくて余裕がない。私のどこが好きなのかなあ、と思うときもあるけれど、好きと言ってくれるうちはそばに居たい。てか、ずっと好きで居させて、ずっと好きで居てほしい。ほんとうに、はちゃめちゃ好きで、なんかストーリー・セラーのあのページみたいに締めくくっても良かったけれど、容量が重たくなるので辞めておく。生きる希望でしかない、またすぐ会うんだからね😾😾😾🐙🐙🐙(にゃんたこ)
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