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話ができたらそれだけで、あ、やっぱり手とかも繋ぎたい

9/21-9/23の日記


9/21(土)

4:50起床。外は暗く静かな雨が降っている。頭が割れそうに痛い。てか、若干割れていたのでボンドを使って修復(実際にはEVEを飲んで命からがら支度を進めた、野暮な注釈)家を出る頃にはほとんど頭痛が治っていて良かった。1週間くらい寝起きの頭痛が続くけど、コレ、本当に何なんですか...?
(9/27追記、最近治りました♩)

こんなにも早起きなのは彼に会いに東京へ行くからである。最近どハマりしているドトールのミラノサンドをテイクアウトして新幹線に乗る。前回会った時に借りていた永井みみの『ミシンと金魚』を読む。おもしろすぎる、というか、おもしろいとかでもない気がするし、かつてない文体とかそういうわけでもない気がするのだけれど、こういう雰囲気で進む話にしては透明感が強く、光の存在があるのが良かった。人としての尊厳に触れるような小説で、決して読んで後悔はしないと思うので読書の秋に是非。


11時に東京駅で彼と待ち合わせ。早めに到着して待ってくれている彼を驚かそうと、バレないように後ろに回り込んでパンチしてみた。「人違いだったらどうするの」と言われたので「すみませんって言うよ」と答えた。彼が空いているコインロッカーを見つけてくれていてありがたかった。歩きながら私の二の腕を触る彼に「人違いなんですが...」と言ったら「すみません...」と言われた。本当に人違いだったら彼は社会的な死を迎えるのだろう。日本の社会はそう出来ている。良いとか悪いとかの話ではなく。そう思える私は周囲の人に恵まれているのだろう。甘やかされているとも言えてしまうが。


ランチをしに御徒町へ。私は密かにパンダ広場のパンダ人形たちがどのような配置になっているのかを楽しみにしていたのだけれど、なんと三連休初日の今日は小さなグルメイベントが開かれていて、パンダたちも働いていた。予想外ではあったけれどパンダ人形は可愛かった。全ての駅前にパンダ広場を、という公約の政治家がいるなら教えてください、支持するので。


カフェは少し並んだがとてもいい雰囲気だった。カジュアルながらも安っぽさのない、厨房のラフなスタイルがカッコよかった。たまごサンドセットとふたりで分け合うプリンを注文。セットドリンクを私が決めあぐねていたら「苦手だったら俺飲むよ」と言ってくれた。優しい〜の、私の恋人...

『ミシンと金魚』の感想や、彼の友人の恋愛について話した。ああだこうだと言い合えるの、嬉しい。これをするために東京まで来ているので。


芸術の秋なので上野の東京都美術館に行く。全く知らない画家だったけれど、なんとなくカッコ良さそうという感覚的な動機で田中一村展へ。実際かなりカッコよかった。ベタ塗りの強さがそのまま彼の生命力を表しているようだったし、その一方で穏和な人だったんだろうなとも思った。私はこういう展示に来ると、周りの人はどれくらい造詣があるのだろう... などと野暮なことを考えてしまいがちなのだけれど、隣の彼が「これ家に飾りた〜い」と小声で言ってきたり、私の手をこねこねこねこねと触ってきたりしていたおかげで素直な気持ちで絵を見ることが出来てありがたかった。


20分ほど歩いて喫茶店へ。昔ながらの雰囲気というより昔そのもの、という感じで、人によっては抵抗があるかもしれないけれど私はとても嬉しい気持ちだった。時代遅れの制服の店員さんは、とても混んでいて忙しそうなのにイライラしていなくてすごい。ぱーてぃーちゃんのすがちゃんに似たお兄さんが「バナナパフェ...あ、ちげーや」と厨房に向かってオーダーを伝えていたのもかなり良かった。2人ともチョコレートパフェとアイスアメリカンを注文。焦げのような苦味のあるコーヒーと甘さ全開のパフェがかなり美味しかった。彼のことも、彼と甘いものを食べる時間も大好き。

まさにパーフェクトですわ...


桜新町のねぶた祭りにも行きたかったけれど明日以降の予定を考えると最善ではないな〜と話していると、彼が合羽橋に行きたいと言ってくれたので向かった。結論から言うと、行って大正解だった。合羽橋は有名な調理道具や食器の街なのだけれど、かなり楽しい時間だった。お店の閉店まであまり時間がなかったため、吟味することは出来なかったけれど可愛いパンダのスプーンやお揃いのカニの箸置きを買うことができた。食器を楽しめるようになったのって大人になったってことだなと思う。小さい頃は母が食器を見ている時間が退屈でしょうがなかったのに、今では同じようなお皿を何枚も欲しくなる気持ちがわかる。彼との二人暮らしが始まったらもっともっとお皿を見る時間が増えて、そして楽しくなるのだろうな。嬉しい予感を胸に東京駅へ戻る。


矢場とんで味噌カツを食べた。思ったより濃すぎなくて美味しかった。帰り道にハーゲンダッツのおいも味を買って、彼の家で早速さっき買ったパンダスプーンを使って食べた。スプーンの幼いパンダたちにとっていいデビュー戦になったと思う。もちろんアイスも美味しかった。矢場とんのキャラクターの豚のポーズの真似をして就寝。最高のデート、最高の日、最高の恋人。


9/22(日)


6時起床。仕事の彼をベランダから見送る。お昼を一緒に食べる約束だったので本を少し読んでから私も身支度をした。駅前のマックで待ち合わせ、月見バーガーを注文したのだけれど、かつてない混み具合で、もはやファストフード店として機能不全に陥っていた。食べている人よりもハンバーガーが出来上がるのを待っている人の方が多い店内は、いつ破裂してもおかしくない風船があるような緊張感があった。実際私たちも彼の昼休憩には限りがあるのでドキドキしていた。


結果、30分ほど待ってようやく食べることが出来た。途中から来た隣の席のおばあさんたちに「あなたたち良いタイミングで注文したのね〜」と話しかけられ、「30分くらいは待ったんですよ〜」「日曜日ってすごいですね〜」という会話があったりもした。彼はいそいそと食べて、「じゃないはゆっくりしていってね」と10分で月見バーガーのセットを食べた人とは思えないほど爽やかに店を出て行った。イライラしても良いくらいの場面で、実際少しイライラしている人も店員さんやお客さんの中にいたのに、「なんか楽しいね」と言ってくれる彼は心に余裕がありすぎる。残された私はお言葉に甘えてのんびりと月見バーガーを食べながら本を読んだ。それにしても芳醇月見バーガーはなんて美味しいんだ...

2人前食べたみたいでおもしろかったので撮った映えない写真、彼はバーガーの包み紙を綺麗に畳まないタイプらしい(急いでいたからかもしれないが)見当違いなのはわかった上で男らしさを感じて胸キュン、愚かです



夜は彼の「秋っぽいものが食べたい」というリクエストを叶えるために、さつまいもご飯とかぼちゃコロッケと冷しゃぶサラダを作ることにしていた。帰りに寄った八百屋が破格で嬉しい気持ちになった。ちょうど高校時代の友達から電話があり、話しながらダラダラと料理をした。いい時間だった。


仕事終わりの彼を駅まで迎えに行き、帰りにお菓子を買った。料理も美味しい美味しいと食べてくれて嬉しかった。昨日買ったカニの箸置きを使って配膳したら、彼が左利きなのでカニ同士が対決しているような形になって可愛かった。季節の料理って楽しい。秋はさつまいもとかぼちゃをたくさん使いたいな。食後にオモコロチャンネルを見ながらバームロールを食べる。私はブルボンのお菓子ではバームロールが一番好きなのだけれど、あまり共感されたことがない。食べたことがないという彼に食べさせたら気に入ってくれたので、彼がこのままルマンド派にならないことを祈って就寝。彼の腕は細いのに、なぜかかなりの包容力がある。実家のような安心感ってこれかしら。


9/23(月)


7時起床。彼のお気に入りのぬいぐるみを彼の服の中に潜り込ませたりしていたら9時になっていた。ホットケーキミックスでドーナツを作る。子供の頃に母がときたま作ってくれるこれが大好きだった。何年ぶりかに食べたけれど、懐かしい味と見た目に反してふわふわの食感が嬉しかった。支度をして家を出る。もうすっかり東京は秋の空気が漂っている。彼が「キスするの忘れてた」と言うので車で右折するときみたいに周りを素早く見渡して軽いキスをした。白昼堂々、これが週刊誌に撮られていたらそう見出しをつけられるのだろうな。先週は「夏が長すぎる」と文句を言っていたのが嘘みたいに風が柔らかい。


初めての新宿御苑。ああ、これこれ、これです、これがずっとしたかったんだよ、と思った。園内のスタバでドリンクやフードをテイクアウトし、芝生にレジャーシートを敷いて食べた。見渡す限りの肉厚な芝と、東京とは思えないほど広い空、奥にビルが見えるのも憎めない。学生の頃もよくパンを買って公園で食べてぼんやりするデートをしていた。新宿御苑にはそんなカップルや家族がたくさんいて、走り回るどころかもはや転がっている子どもたちと、それを追いかける両親を遠目に見た。いつか私たちもああいう感じになるのだろうかと思った。子どもは可愛いけれど、自分が育てるというイメージが正直まだあまりない。あちら側になりたいような気もするし、このまま横並びで60年経っても後悔しない自信もある。彼と公園でぼんやりできるなら、それ以外どうだっていいような気さえする。これから季節が進んでいって、どんどん外が気持ち良くなる。多少風が冷たくても、寄り添ってホットコーヒーを飲みたいな。生きている実感があった、いい時間だった。


テアトル新宿で「ぼくのお日さま」を鑑賞。今月3本目の映画である。なんてったって芸術の秋なので。朝井リョウがコメントを寄せていて気になっていた。最近はなんか気になる、というだけで映画館に行くようにしていて、今回も特に出演者やあらすじは見ていなかったのだけれど、かなりいい作品だった。俳優のすごさなのだろうけれど、役が役らしくなく、大袈裟な展開がないのが良かった。何よりフィギュアスケートそのものが美しい。静的なのに控えめなわけではない。華やかなのに派手でもない。3人の登場人物が皆素直で、それゆえの悲しさもあるのだけれど、全員が幸せになる未来を信じたい。初デートとかにも向いてそうな映画でした。

つい寝転んでしまうね
私が言うことじゃないけど池松壮亮はすごいですよね...


でも、映画って終わりの時間が決まっているから、なんとなくそれに重ねて彼と一緒に居られる残り時間のことも考えてしまった。映画館を出た後の空気が冷たかったのもあって寂しくなった。まだ隣にいるのに、3時間後にはいないことを既に否定していた。


ずっと中華を食べたかったけれど、月曜日はめぼしいお店はみんな休業日だったので有楽町のちょっとすごそうな王将へ行った。大袈裟な店内に反してメニューは大して王将と変わらなくて嬉しかった。寂しさを誤魔化すためにウーロンハイを頼んだら、彼も同じものを飲んでいた。彼はお酒をそんなに飲まないので、きっと私と同じように寂しさから逃げたくて注文したのだと思う。顔を真っ赤にしながら餃子をたくさん食べた。いつもの味で美味しかった。炒飯も、胡麻団子も頼んだ。美味しかった。会話も楽しかった。なのにずっと泣きたかった。


そのまま丸の内を歩く。東京駅前にはこれからどこかに帰るのだろう人も、今東京についたのだろう人もいた。急に世界がおかしくなって、土曜日の朝に戻ったらいいのになと思った。全く同じ日でいいから、ねえ、ずっと一緒にいたいだけだよ。


なんかもうダメだった。別にずっと泣いていたわけではないけれど、涙を流さずにずっと泣いていた。彼も同じだと思う。もういっそ、見送りの彼が私の手を離してくれなくて、それで最終の新幹線を逃しちゃいたかった。でも、そんなことをしないから彼のことが好きなのだ。遠距離恋愛になって半年が経つ。まだ半年、もう半年。新幹線で4時間の距離で、勤務形態もバラバラなのに、たくさん会えているなと思う。寂しい時間もあるけれど、心がひとりだった瞬間もなくて、楽しい思い出をたくさん数えることができる。でも、それでも、同じ土地から同じ土地へ出かけて、同じ家に戻って同じ布団で眠りたい。私は元来欲張りなのだ。彼のことが欲しいよ。


ふたりで暮らすためのひとり暮らしは半分死んでいるようで、私をすっぽり覆うほどの大きな虚無が訪れるときもあるけれど、生きていると強く感じられる瞬間が再び絶対に訪れるという希望の方が大きいから、明日もひとりの街で働く。どこにいてもいちばん大切な人、またたくさん話をしたいよ、てか絶対しようね。よかったら、手とかも繋がせてほしい、です。

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