「終わりのダンスをご覧ください」
古賀コン7テーマ「ダンスをご覧ください」
タイトル「終わりのダンスをご覧ください」
書いた人・睦八 五十一
あぁ、この瞬間を待っていたの。
この瞬間を夢見て、耐えてきたの。
何日も何日も恋焦がれていたの。
多くの仲間たちと一つの部屋に押し込められて、共に過ごしてきた仲間が”お迎え”に連れていかれ、最後のその瞬間を迎えるのを、ただただ何度もながめてきたの。
私は、自分の理想とする最後をいつも空想していた。
私は、自分の最後を選べるような生い立ちではなかった。
私は、夢を仲間に何度も語っては笑われてきた。
時折、自分の夢を聞かせてくれる仲間もいた。
「私はね、水の中で踊ってみたい。ゆらゆらふわふわ、楽しそうでしょう?それに、なんでか言いようもなく惹かれてしまうの。水の中に懐かしさを感じるの。なぜかしらね」
そんなことを語って聞かせてくれたあの子は、あの子が望んでいた水の中とは縁のない、真っ白な野に放たれて、揉まれて、埋められて、踊る間もなく姿が見えなくなってしまった。
水の中に入ることどころか、踊ることすらままならなかった。
そんな姿が、言いようもなく切なかった。
それと同時に、恐ろしくなった。
それからしばらくは、部屋の中央に潜り込んで静かにしていた。
隅に行っては外界での仲間の最後をいやでも見ることになるからだ。
しかし、そうして現実逃避をするのにも限界がきた。
もう、仲間の数がほんの一握りになっていたのだ。
「ほら、行きましょう」
お迎えが来て、私と仲間を掴んだ。
私はふるえた。私の最後は、どんな有様になるのだろう。
「ねえ、あなたの夢を語って聞かせてよ。もう聞けるのも最後になるだろうし」
お迎えに包まれたまま、隣にいた仲間がそう言った。
「そうよ。聞かせてよ」
「あなたの夢で、私たちの最後を”良かった”ものだと思わせてくれないかな」
「そうね、どうせなら、夢の中だと思って迎えた方がマシだわ」
私の夢を笑っていた仲間たちが、口々に言った。
ああ、そうね、そうね。どうせなら、素敵なことを思い描いて終わらせたいわよね。
私は、目を開いて”お迎え”の隙間から外をみた。待ちに待っていた舞台が見えた。
「私の夢はね―」
私の夢は、最後まで踊ること。
ゆらゆらと、香しく舞うこと。
脇役なんかイヤよ。
まるで、主役であるかのように、その最後の瞬間まで舞うの。
誰も見てなくったって構わない。
意識が途切れるその瞬間まで、ただただ踊ること。
そう、私は、踊りたくてこの日を待っていたのよ。
”お迎え”の中から解き放たれた。
ダンスの時間がはじまった。
自由がきかない中で、身体をよじって空を舞う。
仲間の小さな悲鳴が聞こえる。
地に着いた途端に足をとられ、踊れなくなってしまったようだ。
それ以前に、舞台に近づくにつれて熱気が襲い掛かって来る、思わず身体が縮みそうになる。
熱い!
舞台に立てた。なんとか立てた。
ゆらりと頭を揺らして見れば、舞台に乗ることすら叶わなかった仲間が、サッと掃けられていくのが見えた。
くるりと回ってみれば、ヘドロのような物に身体をとられ、無念に顔を歪ませている仲間が見えた。
大丈夫。私は、まだ舞えている。
灼熱の地面が揺れて、舞台が割れる。
隣で踊っていた仲間の姿が、舞台ごと持ち上がって消えた。
まだ舞える。
下から湧き上がる蒸気が、踊れ踊れと煽ってくる。膝が折れそうだ。
でもまだ、まだ踊っている。
さあ、ご覧なさい。
これが、私の最初で最後のダンスの舞台よ。
足元が大きく揺れた。
ついに終わりの時が来たみたい。
「水の中で踊れたら、私自身が水に溶けだして、色んなものとひとつになれるんですって。なんだかそれって素敵よね」
いまはもういない仲間の言葉を思い出した。
あなたの夢も素敵だったけど、私はやっぱり、私のまま、終わりを迎えたい。
ああ、でも、どうせなら。
青いネギに彩られた、真っ白くてつややかな舞台で踊ってみたかったな。
暗い洞窟の中で、私は私への称賛を聞いた。
「やっぱお好み焼きにかつおぶしは外せないよね~!」
おしまい
※※※
なんか今回はいけそうな気がしたんで参加してみました。
いつも蚊帳の外からながめるだけだったのでなにか不手際があったらスンマセン。
投稿直前に「かつお節」と「お好み焼き」で踊るネタかけてる応募作みつけちゃったけど、知らね~。
もうね、創作の世界なんてね、かぶりかぶられですよ。
気にしてたらなんも書けない。
書いた先で差をつけていくしかないんですわ。
ところで、いま私の手元もまるでダンスするがのごとく指か踊ってますよ。
ご覧くださいって言ったってお見せできないのが残念。
ブラインドタッチは、学生時代にチャットで鍛えた副産物です。ええ。
高校生のくせに「同じマンガが好き」って理由だけでオフ会にちょこちょこ参加して知らん大人に会っていたんですが、今思うとよく無事だったなって思いますね。
時代のおかげなのか、マンガがマイナーすぎたのか。
ちなみに、集まってたのはほぼ女性でした。
あ、これはなんか時間が余ったので打ってるだけで中身とは関係ないです。
ウソ。キーボードの上でダンスする指をご覧ください、てネタで打とうか直前まで迷ってた。迷ってたから見苦しく使ってみました。フフ、NGないからこういうお遊びも良いよね。
古賀コン、七度目になるのに参加ははじめてなんですよね。
開会の古賀先生のお話でお腹いっぱいになりつつ、参加いたしました。
もう作品の出来なんて二の次ですわ。
参加したことに意味がある。
素敵な企画をありがとうございます、古賀先生。
参加できてよかった。