フォーラム東根で「プロメア」を観たら自分の中で「映画館」の概念が変わった話
希薄になっていた「映画館に行く」という習慣
高校生になってある程度の範囲を一人で行動するようになった頃。
自分の中で「映画館に映画を観に行く」という習慣が急速に失われていきました。
映画館は家族みんなで行くものという認識が強くて、友達ともあまり行かなかったし、ましてや一人で行くなんて相当興味のある作品の時だけ。
いつの間にか、映画館へ行くのは年に1、2回あるかどうかになっていました。
それがちょっと、変わってしまう出来事がありました。
「SSSS.GRIDMAN」を作った会社の新作
昨年自分の中で1,2を争うくらい大きなトピックが、「電光超人グリッドマン」がアニメでリメイクされるという事件でした。
元々グリッドマン直撃世代だったのでそれだけでもう感慨で一杯だった上、アニメとしての出来も最高。
昨年の冬コミでは版権の都合上委託が不可能なアニメーターさんの原画本を求めて単騎出陣して惨敗するという入れ込み様でした。
「SSSS.GRIDMAN」が大団円を迎えた頃、現在制作中としてアナウンスされていたのが、他でもない「プロメア」でした。
沼の入り口
その時は「キャラクターデザインが『ダーリン・イン・ザ・フランキス』でメカニックデザインやってたコヤマシゲトさんなのね」「気が向いたら観に行こうかな」くらいにしか思ってませんでした。
前述の通り、もう自分の中では「映画館に映画を観に行く」という習慣が冬眠していて、ちょっと興味あるくらいの作品はDVDのレンタルが始まってから観ればいいかな、と思ってしまう状態。
案の定「プロメア」もそんな感じで、気が付けば観に行かないまま封切から3ヵ月以上が経っていました。
そんな時、TRIGGER作品が大好きでよく「SSSS.GRIDMAN」の話をしていた後輩(演劇ユニットこれっきり代表・ぜし君)から
「youth kさん絶対『プロメア』好きですよ!劇場で観た方がいいです!」
と言われまして。
ぜし君だけでなく、俺の好みをよく知る別の友人から同時多発的に薦められたのもあって、劇場で観てみようかな、と思いました。
初めてのマサラ応援
最初は「もう山形ではやってないだろうし、東京に行った時にでも観ようかなぁ」と思っていたところ、「東根で最後の応援上映やるよ」という旨のRTが流れてきまして。
どうせ観るなら応援上映の方が楽しそう、なんか音デカいらしいし……とあまり深く考えず予約を取り、迎えた当日。
会場に着いた私のツイートがこちらです。
完全にテンパりました。
ロビーにはお客さんがごった返していて、半分以上がコスプレをしている。
「ひょっとして俺はとんでもない所に来てしまったんじゃないか……?」
そんな風に思いながらチケットを発見してシアターに向かうと、入り口のスタッフさんもコスプレをしている。
そう、いつも「プロメア」の応援上映の際に前説をしてくださる名物スタッフ、東根のレミーお兄さんとバリスお兄さんです。
恐る恐るレミーお兄さんに半券を渡すと
「男性お一人ですか!凄い勇気ですね!頑張ってください!」
と言われ、生きて帰れるのだろうかと心底思ったのをよく覚えてます。
私が来場した回は単なる応援上映ではなく「マサラ応援上映」。
歌ったり紙吹雪を撒いたりクラッカーを鳴らしたり、盛り上がりながら映画を観るインドのスタイルが許可された上映回です。
日本での歴史は意外と古く、2000年代初頭から主に関西方面で散発的に開催されているそうです。
2013年頃に人気が再燃、最近だと『バーフバリ』で話題になった印象があります。
この時にはまだ知らなかったんですが、フォーラム東根はその盛り上がりから上映期間が延長に延長を重ね、果てはキャラクターの立像まで来ちゃうという、有数の映画館だったんです。
「映画館」という存在が変質した瞬間
上映が始まってからはもうあっという間でした。
絶え間なくなり続けるクラッカーと硝煙の香り。
地吹雪の如く舞い上がる紙吹雪。
上映が終わり照明が点くと、レミーお兄さんが号泣している。
上映終了後の私のツイートがこちら。
作品自体の良さもさることながら、シアター全体が興奮の渦にのみ込まれるあの感じは、正に未体験の領域。
厳密に言えばライブビューイングでは何度も体感してきた感覚だったんですけど、まさか「劇場アニメ」でその感覚を味わうことになるとは想像もしませんでした。
「映画館」に対する意識の変化
その後も館内で一番大きいシアターでの最終上映、上映再開後のマサラ応援上映、そして今回のなんでもないマサラ上映(レミーお兄さん談)に来場しました。
山形に生まれて30年近く経ちますが、東根ってたまに伊勢そば食いに行くくらいしか馴染みがなかったし、ちょうどフォーラム東根が開館した時、私は大学生で茨城に住んでいたので、そもそも「東根にフォーラムがある」って長いこと知らなかったんですよね。
仕事の都合で一時期盛岡に住んでたので、まだフォーラム盛岡やアートフォーラムの方が馴染みあるくらい。
映画館なら、住んでいるところからすればフォーラム山形やソラリス、MOVIE ONやまがたの方がよほど近いんです。
でも「プロメア」をきっかけに、「映画観るならフォーラム東根で観たいな」と思うようになりました。
映画なんて年に1,2回観るか観ないかだった人間にそういう場所ができるのって、凄いことだと思うんですよ。
動画配信サービスの充実や家庭用テレビの大型化が著しい今の時代、映画館の存在意義は大きく変化しているように思います。
そんな中で、例えば「ガールズ&パンツァー」の極上爆音上映で話題になった東京都の立川シネマシティのように「他の映画館ではなく、ここで観たい」と思わせられるということは、映画館として最高の強みだと思います。
そういう映画館が自分の地元に存在しているということに、驚きと嬉しさを隠せません。
あれほどまでに「プロメア」を盛り上げた劇場スタッフの皆さんとお客さん達は、本当に素晴らしいと思います。
20年ぶりに、映画館が「思い入れのある場所」になった
かつて山形市内中心部には、単館系の映画館がたくさんありました。
ミューズの入り口前にあった映写機のオブジェ、シネマ旭の大きな手描き看板、奥まったスカラ座のレトロな雰囲気と非日常感。
上映作品とは別の、映画館自体への愛着が、小さい頃の私にはありました。
やがてシネコンが増えていく中で利便性は高くなっていったけれど、自分の中で映画館は「作品を仲介するハコ」になっていきました。
演劇に興味を持ち始め、「同じ空間で役者が演技をする」魅力に引き込まれていくと、相対的にテレビドラマや映画に対する興味も下がっていきます。
コンテンツ自体への興味が薄らいだ時、もはや私にとって映画館は「どうも足が向かない場所」になっていました。
フォーラム東根と「プロメア」は、映画館という場所を再び「愛着のある所」にしてくれた。
思えば映画館のスタッフさんの話を聞く機会って、今までの人生の中で全くと言っていいほどなかったんです。
でも「プロメア」をきっかけに、どれほど映画に対して情熱を持っているかを知ることができました。
それを理解した時、自分にとってフォーラム東根は「単なるハコ」ではなくなっていました。
特別気になっている作品が無くても、「今日は映画館に行ってみようかな」と思うようにしてくれました。
本当に、感謝してもしきれません。
有終の美
今年の年末は、1年前と同じようにTRIGGERのアニメーターさんの原画本を求めて冬コミへ行き、山形に帰ってきた後はフォーラム東根で「プロメア」の大晦日マサラ上映に向かう予定。
振り返ってみると、2019年は新しいことにたくさん手を伸ばした1年でした。
なんだか、そんな1年に相応しい締めくくり方だなぁ、とつくづく思うのです。
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