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「憧れの大人」だったV6が解散した話
幼い頃から、ウルトラマンが大好きだった。
私が生まれたのは1990年、『特撮冬の時代』と呼ばれた頃。
ウルトラシリーズは地上波放送が無く、オリジナルビデオ作品や劇場作品のみが制作されていて、過去の作品を漁るように観ていた。
1996年、幼稚園から小学校に上がり、周りの友人たちが徐々に特撮から卒業していく頃。
ウルトラシリーズ30周年記念作として、16年ぶりの地上波作品『ウルトラマンティガ』が始まった。
そのオープニングテーマ「TAKE ME HIGHER」を歌っていたのがV6であり、主演を務めていたのがメンバーの長野博だった。
今まで観ていたウルトラシリーズの主演俳優だって、もちろん憧れの対象だった。
けれど、『ウルトラマンティガ』がそれまでの作品と決定的に違ったのは、フィクションの外側の姿に触れる機会があったことだ。
流石に小学1年生ともなれば「ウルトラマン」はフィクションであることは当然に分かっている。
それまでのウルトラシリーズの主演は「俳優」であり、フィクション以外でその姿を観ることはほとんどなかった。
その点、『ティガ』の主演である長野博は、「マドカダイゴ」以外の活動を、V6としての活動をテレビで見ることができたのだ。
マドカダイゴはヒーローであり、長野博とV6もまた、ヒーローだった。
今になって振り返ってみると、初めて「憧れ」という感情を抱いた大人は、長野博とV6だったような気がする。
与えられたミッションを真摯に、地道に、でも大胆にこなしていく姿。
「学校へ行こう!」で見た、無邪気にはしゃぐ姿。
自分なりのタスクを自ら見つけて、それを達成していく姿。
30歳を過ぎた今、自分の中にある「大人」のロールモデルの原点は、多分V6なんだと思う。
この年になって改めて、あんな風に歳を重ねていけたら素敵だな、とV6を見ていて思うのだ。
もしもあの頃、V6に出会わなかったら。
自分の「大人」の理想像は、大きく変わっていたかもしれない。
物心つく頃から通っていた模型店が今年の5月に閉店し、10月に大好きだった祖父が他界し、11月になってV6が解散した。
自分を育み、自分の礎を築いてくれたものが、ひとつ、またひとつを終わりを迎えていく。
もしかすると、そういうものを今度は自分が生み出していくフェイズに入ったのかもしれない。
そんなことを思いながら、配信で最後の「TAKE ME HIGHER」を聴いていた。