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透明日記「廃人の気分で1日が潰れる」 2024/08/31〜09/01
昨日、一昨日の日記。
8/31土
朝、雨降る。ゴミを捨て、メシを食う。残り物の焼きそばや、冷凍の鯛めしなどを食う。鯛めしは味が濃くて朝食には不味い。チンした責任を取るようように食う。腹が膨れた。
台風情報を見ると、熱帯低気圧に変わると言う。熱帯と聞くと、陽気な気分になる。
朝は戦後の都市計画など読んで過ごす。読み終わると眠くなり、昼寝。チョコ菓子など食いながら、架空の動物図鑑を眺める。進化した獰猛なネズミが、群れになって草食動物を襲っていた。
漫然と過ごすうちに夕方。飲み屋のイベントがあったので、浴衣を着て出掛ける。浴衣で電車に乗ると、昔の時代の人のような気分。駅に行き交う人々の時代がとても遠い。へんな場所に来たものだと思う。
店に着く。ポロポロと話していると、パラパラと人が集まる。見知った人がちらほらといた。タバコを吸いに外に出るたび、人が増え、賑やかになっていった。
賑やかになるにつれ、雨あられと声が鳴る。あちらこちらに声の分厚い空間が生まれ、重なり合う。空白の吹き出しに包まれているような感じがする。おっかなくて少し散歩に出た。
当てもなく夜の街を歩く。建物の上に静かな空がある。目に吸い付くような、目が吸い取られるような、どっちがどっちか分からない感じで、空と目が溶け合う。
うろうろと路地を通り、街路樹の暗がりに椅子のようなものを見つける。座ってタバコを吸う。コオロギばかりが鳴いている。駐車場の端にわずかばかりの草が、暗闇に薄れて生えていた。コオロギは案外しぶといのかもしれない。都会でも上手く生きている。
イヤホンで音楽を聴く。誰かを待つようで誰も待っていないような自販機が、近くでぼんやりと夜を過ごしていた。
しばらくして店に戻る。賑やかな音。どういう音なんだろうと気になって、ぼうっと聞く。水面を眺めているようだった。雨粒が水を打ち、波紋を重ねたり、水滴を跳ねさせたりしている。ときおり、水の底からごぼっと、あぶくが湧き上がるらしく、しぶきが噴かれる。顔にしぶきがピチャッと掛かる。
ぼうっとしていると、不意に話しかけられ、人間であることを思い出す。当たり障りのない儀礼的な言葉を返していたように思う。
終電が近くなり、人が帰り始める。店内がいくらか静かになってから、意識が涼しくなってきた。つるつると二杯の酒を飲んだ。
9/1日
夜明け前に目が覚めると、暗い部屋の底にいた。天井が高いように見え、部屋から抜け出せないなと思う。エアコンの無機質な風の音、小さなランプ。絵画のように現実味のない部屋の底。
胸が苦しい。ちりちりと胸の中で火のようなものが燃えている。胸の上にうっすらと、熱が上がる気がする。暗い部屋の底に張り付いて、起き上がれずに、苦しんでいた。幸せの呪文のように、死にたい死にたいと、何度も唱え、少し寝る。
朝が来て、ベランダでタバコを吸う。風当たりが心地よい。暗い気持ちがわだかまる。
名古屋の病院に母が入院するので、階下まで荷物を運ぶ。マンションの前で、ここでいいと言って、あっさりと別れた。五階の廊下から道を見ると、のしのしと歩く母がいた。
人がいなくなって安心したのか、暗い気持ちにどっぷり浸かる。廃人のようになる。したいと思うこともなく、何ができるのかも分からない。水は飲めたが、食べるのと寝るのは難しい。無力感にぼうっとする。ふと、涙が出る。唯一、絵を少し描くことは許されていた。描きたいわけでもないが、できることが他にないので、ぼうっとしたり泣いたりの合間に、ふらふらする身体で絵を描いていた。
オムライスを食べた。昼に半分、夜に半分、無理矢理食べた。不調は翌朝まで続く。