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透明日記「アゴのない月の夕方」 2025/01/11

朝起きて一昨日の大掃除のゴミを捨てる。古紙は大量に残るが、玄関がスッキリした。

ドラムを叩きに出かける。玄関で靴を履く前にスティックを忘れていることに気づき、部屋に戻る。スティックのカバンを手に取り靴を履き、鍵を閉めて二、三歩、塗り薬も忘れていた。部屋に戻る。薬を取って外に出ると、ドライバーあった方がいいかもと思い、また部屋に戻る。

なんべんも往復すると、ムカついてくる。外に出たい気持ちが早り、鍵を閉める方向を間違え、なかなか鍵を閉められなかった。急いでもろくなことはない。

信号は全部青で、すぐスタジオに着いた。曲に取り組んで、できないところを繰り返す。できないことはやり続けてもできるようにはならない。頭がかーっとなると余計にできない。かーっとなっては休憩して、繰り返す。休憩を挟むたびにマシになる。

曲の練習が進んだので、気分が良くなった。昼飯にラーメンを食い、カフェで作品を作ろうと思う。

作品は作らなかった。その代わり、余裕があれば作ってほしいと言われていた短い話を作る。思いつきで、やらなくてもいいことが優先される。そんなことが多い。私Aが席を離れた隙に、私Bがすぐに席を奪う。

散歩に出る。作った話を思い出して、ニヤニヤしながら歩く。ニヤニヤしていると時間が飛ぶ。橋の下まで来ていた。

今日は鳥が元気だった。近所でカワセミを初めて見た。ギラギラした、アクの強い青を背負っていた。視線が痒かったのか、見ていると飛び立つ。

川鵜が元気に潜水している。首の長い亀みたい。眺めていると、潜水する川鵜の上をカラスがホバリングしはじめた。川鵜は川から顔を出すと驚き、アーアーと鳴く。カラスもアーアーと応酬する。川にはこんないざこざもあるのかと驚いた。

川面にはカモが多い。ずいぶん多くなった。川の流れに乗ったり逆らったり、カモの軌跡がおもしろい。3羽のカモが浅瀬を歩く。短い足でお尻を振って、のそのそと仲良く歩く。少し離れた川面にカモの群れが浮く。体を寄せて川底をつついていた。おしりが見えた。嬉しい。おしりだけ川から出して、短い足をバタバタとやる。カモがかわいくて、長い鼻息が漏れた。目を細めてしばらく眺める。

帰りに階段でタバコを吸う。風が吹いて草が倒れる。太陽が出て川面が光る。自分も風景になる。自然の息づかいが擦り抜ける。ここちよい。

家に帰ってドラムのことを考える。いろいろ叩けるようになりたいフレーズが出てくる。クッションを叩いたたりする。日暮れごろ、東の空にアゴのない月が光っていた。スティックを振って、夜へ夜へ。時間を叩いているのかもしれない。

夜に蟹を食う。

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