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アニメやマンガの話ができる美容室の話
アニメやマンガの話ができる美容室というものがある。
髪を切る時にコミュ障は、陽キャのイメージがある美容師とコミュニケーションを取らないといけない。数ヶ月に一度の短い時間だとしても結構苦しいものである。しかし「アニメやマンガの話もできます!」と銘打った美容室なら、コミュ障でも振れる話題が多いので来店しやすい。
おおよそ狙いはそんなとこだろう。
コミュ障って大体おたくだし。
しかし美容室の彼ら彼女らは多分気づいてない。散髪中の美容師はハサミを、つまり凶器を握っていることを。
おたくは生殺与奪の権を一方的に握られた状態でのトークを強いられているのだ。

仮に同じアニメ同じジャンルにハマっている同士の美容師を見つけたとしても、その人が過激な固定カプ厨で、うっかり別カプや地雷を踏んでしまったら、そのハサミは髪ではなく喉元に向くだろう。
相手の素性がわからない、嗜好も癖〈ヘキ〉もわからない相手に、リラックスして話ができるだろうか?
おたくのとってその場で確かなのは「こいつはいつでも俺を刺せる」という緊張感だけなのだ。
美容師はこの非対称に気づいてないのか、それとも「生殺与奪の権を握った状態で他人の推しの話を聞く」という愉悦を味わいたいのか。
なんにしたっておたくは美容師に心を開くことはできない。コミュ障だもの。
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