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ねぎ焼きと、なぜか合わせてしまう鉄色のうつわ。
昨日から、決めていた。今日の晩ごはんは、ねぎ焼きをつくると。なんだか無性に食べたかった。
こんにちは、こんばんは。くりたまきです。
わたしのなかでねぎ焼きといえば、「やまもと」さんだ。
ここの梅田エスト店には、大阪に住んでいたころ何回も食べに行った。頼むのは決まって、すじねぎ。会社の先輩に「すじがうまい」と教えてもらったんだったか忘れたけど、とにかくすじ一筋。
ねぎ焼きはお好み焼きよりも薄めの生地で、レモン醤油をかけてあっさりいただく。お店では目の前の鉄板に、出来上がったものが用意してもらえる。自分で混ぜたり焼いたりしない。大阪ではほとんどのお店で粉もんをプロが調理してくれた。完璧においしいものを出してくれる安心感があって、関西素人にはいつもありがたかった。
やわらかく煮込まれたすじと、細かいこんにゃくの歯応え。そしてなんといっても、ねぎ! たっくさん入ったねぎの甘みと苦みと香りが、ほかの具材やタレの味を際立たせる。
そしてビールが合う。ビールが合うんだ。熱々のねぎ焼きをほおばって、ビールを流し込む。サウナと水風呂の交互浴みたいな爽快感。ととのう。
そんな至福の時間を思い出しても、いまの現在地は長崎県波佐見町。大阪のあの味は食べれない。せめて、できるだけおいしいものを食べたい。
信頼できる酔いどれ料理研究家、リュウジさんのレシピを見つけてつくってみた。動画はわかりやすくて、ねぎを小口切りにするときほんのちょっとだけ包丁を入れる角度をナナメにすると、コロコロ転がるストレスが減ってちいさく感動した。流石だ。
ねぎはたくさん、薄力粉はすくなめ。うん、本場っぽい。「粉もん」だけど、名前に反しておいしい粉もんはだいたい粉が少ない。
タレはアレンジして、砂糖の代わりにはちみつを入れた。レモンはちょっと多めに絞る。
やさしいレシピ通りに、動画を見ながら進めていく。順調、順調。さて、どのうつわに盛り付けよう。
考えたのは一瞬で、すぐに「あのうつわだ」と思った。
石井ハジメさんの鉄色のうつわ。
このうつわ、現在ではそこまで食卓に上がる頻度は高くない。絵付教室でこのサイズのうつわに絵付することが多いからだ。絵付の先生が「自分で絵付した皿を日ごろ使うてみ、それも勉強やっけん」と言うので、このうつわの出番が減ってしまっている。
それでも、わたしのなかで、お好み焼きやねぎ焼きは、絶対にこのうつわなのだ。粉もんがおいしく見えるのは、この子がいちばん。
なぜ合わせたくなってしまうのかは、正直わからない。でも粉もんとこのうつわが、頭のなかでぎゅっと固結びで結びついてしまっている。
できあがったらフライパンからお皿にうつして、レモン醤油を染み込ませて。
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うん、やっぱり、最高に似合う。
すじもこんにゃくも入ってない、豚こまのねぎ焼き。本番の味には遠く及ばなかったけれど、豚こまはカリッとしていて、ねぎの風味が口いっぱいに広がって、おいしかった。
ああ、大阪へ行きたい。
使うたび何回でも惚れ直せるのが、うつわの魅力のひとつかもしれない。
30minutes note No.974
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