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いいパパって、なんだろう。

Oisixの広告のキャッチコピー。『いいパパって、なんだろう。』

父のことを思い浮かべて、とくにPRを任された訳でもないのに、こうしてnoteを書いています。

あんまり美化しすぎちゃいけないよなあと思いつつ、父はだんだん「いいパパ」になったなあと娘としては思っています。なんて、ちょっと偉そうかしら。

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父は、亭主関白でした。家事は専業主婦だった母に任せきりで、帰ったら料理が出てくるのが当たり前。おいしいだとか言わないくせに、好みでない味のものはひと口食べて一切手をつけない。無言で拒否。

かといって、寡黙というわけでもないんです。ふざけたお調子者で、家の固定電話に電話をかけてくるときはワザと他人のふりをして声を変えて来たりするし、家に帰ってきて玄関を開けるときは「たっだっいっま〜♪」と謎のリズムで言ってるし。

わたしが幼稚園生のころは家に帰ってくると、小さなわたしの足を父の足の甲の上に乗せて立ち、両手を持ってもらって歩くだけの遊びを延々とやってた思い出もあります。愉快で子どもがすきな父。

ただ、頑固だし、ちょっと気に入らないことがあるとムスッとして不機嫌オーラを出すし、しかも母との喧嘩を子どもの前でも隠さないので、わたしは父がすきだけど、しょっちゅうヒヤヒヤしていました。

そんな父も、母が家を出ていくことになって、変わらざるを得なくなります。

掃除洗濯料理。これらを小学生の娘ふたりと一緒にこなしていく日々がはじまったのです。掃除洗濯は、父も結婚する前は一人暮らしをしていたので一通りできていたのですが、料理はてんでダメでした。

おぼろげな記憶ですが、缶づめ入りのクラムチャウダーをお鍋で温めてアレンジするとものすごい薄味でしたし、クックドゥを使った回鍋肉もソースがうまく絡まず失敗してました。それも、笑って食べていましたけどね。

そんな父も、いまでは料理も上達! 手の込んだものはつくりませんが、基本的にはだいたいできます。モツ煮やガーリックシュリンプを上手につくって晩酌しているほど。

でも、もしかしたら。Oisixさんみたいに料理を簡単にしてくれるサービスが20年前にあったら、父はもっと早く娘から「いいパパ」と思われていたかもしれません。もしかしたらですけど。


もう母が家にいなくなった以上、父は亭主関白にはなれません。じぶんで仕事ばかりでなく家事をするようになったこともあって、父は歳をとるごとに、だんだんまるくなっていきました。

それでも、父との衝突はいつもありました。怒ると「家を出て行け!」とすぐ言うし、わたしが28歳になってひとりでタイに旅行に行くと言ったときでさえ「危ない。行くんなら、もうウチには二度と来るな」と言ってきたし。28歳なのに。
心配していても、そうは言えない性格なのかも。だからひとり暮らしをして別で暮らしているのは、ちょうどいいバランスだと娘としては思ってます。

心配と素直に言えない父は、このあいだ、わたしの誕生日プレゼントさえ素直に渡してきませんでした。「おめでとう、これを喜んでもらいたいと思って買ってきたよ」とは口が裂けても言えない性分なんです。ノリノリでケーキを前にハッピーバースデーが歌えるくせに、プレゼントは「あなたの部屋の玄関に置いておきました」とLINEで帰ったあとに伝えてくる。父の性格を、大人になってやっとわたしも理解できるようになってきました。

いまでも、あたらめてほしいなあと思うところはあります。
たとえば「ブーちゃん」とふざけて呼んでくるところ。わたしはブーでもブタでもありません。悪気もなく言っているので、最近では「は? かわいい娘になんて呼び方してるの? もう一回チャンスあげるから、言い直して」と返すようにしています。

お互いに、意思表示をするのが大事。そんなの当たり前なのですが、でも家族だとできなかったりするんですよね。

そんなこんながあっても、トータルして、いまの父は「いいパパ」だと思います。

じぶんのパパを「いいパパ」と認めるのは、じつはむずかしいことだと思います。じぶんの人生がうまくいかないときほど、ひとは他人に理由を探すし、うまくいっているときは逆です。だから、多くのケースにおいて至近距離にいる親というのは責められやすい立場になる。

「もっとこんなパパがよかった」、「これをしないでほしい」。よく聞く微笑ましい文句も、近い存在だからこそ生まれるのかもしれません。

「悪いパパ」も世の中にはいて、そのひとたちはもちろん別ですけどね。もし「悪いパパ」なら反面教師にだけなってもらうしかないです。

わたしはまだ結婚をしていません。
だからこそ、この「いいパパって、なんだろう。」を子どもの立場からも考えてみる時間があってもいいよね、と思いました。

父のことを亭主関白だったと言いましたが、それは彼が生きてきた時代や環境も大きく影響しています。違う時代に生まれた親と子は、「いい」と思うものが、きっとズレているのです。

だから、親子でそれぞれ思う「いいパパ」を答え合わせするのも、いいんじゃないかなと、そんな気がします。違いを楽しんでみたいなあ。

「こういうパパがイイと思うんだけど!」
「マジで言ってる?めちゃカッコ悪いんですけど」

そんな親子の会話が日本中で生まれたら、ちょっと世の中が変わるかも。

そうそう。
このあいだ、実家の横浜から東京へ送ってもらっているとき、急に父がふざけた口調で言いました。

「もうちょっと、家に帰ってきなさいよ」

全然素直じゃなかった父が、齢60にして、ちょっと素直になってきてるかもしれません。

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栗田真希
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