暮らしの真ん中で、仕事もできるテーブルをつくった話。
もう、原稿が書けない。どうしようもない。仕事として任せられてるんじゃない、でも書きたい原稿が、ちっとも進まない。家に帰ると、進まないし寝てしまう。ダメだ。
もう、テーブルをつくらないと、ダメだ!
ということでテーブルをつくりました。というか親方につくってもらいました。完成に至るまでのあれこれをお届けします。とっても長いです。
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こんにちは、こんばんは。ライターの栗田真希です。デスクワークがメインの仕事をしている、ひとり暮らし族です。
テーブルをつくる前の我が家の状態がこちらです。
無印良品の、こたつテーブルを7〜8年ほど愛用してきました。ヒーターの部分がフラットなので、こたつ布団を外しても年中使えるのがよいです。
たぶん、家で仕事をしなければ、このこたつは大正解のうちのひとつだと思います。冬はこたつを使えば、節約しつつしっかりあたたまることができます。わたしは冷え性なので、ずいぶん助かりました。
でも、仕事をするとなると、長時間の床座りは腰を痛めます。またこたつに入っていると、のぼせるような感覚がありました。頭がシャキッとしない!
椅子座りするテーブルが必要だ、と思いました。仕事に適したテーブルが。そこで思い至ったのが、昇降式デスクです。天板の高さを上げて立って仕事もできます。
最初に見かけたのは、IKEAのもの。
手動でハンドルを回すもので、29,990円。安いです。3月に見ていたので、ちょうど新生活の時期ということで送料無料キャンペーンもしてました。アリです。
YouTubeなどでこちらを購入した方たちの動画を調べてみました。感想は、「ずいぶん回さないと高さが変わらないなあ」でした。安いですが、毎回くるくる回すのは、筋力もなくとにかくズボラなわたしには難しそうです。ボタンひとつで動く電動式にするのがいいだろうなと思いました。
あと、動画で使っている人の感想を見ていると、グラつきも気になります。
昇降式デスクは天板を高く上げると、どうしても多少はグラつくものだということが調べるうちにわかってきました。品質にもよりますが、グラつきがゼロということはなさそうです。ものによってどのくらいのグラつきなのか、そこが問題です。
もうひとつの問題は、電動の昇降式デスクの場合、初期不良の恐れがあり、かつ故障しても修理が難しく自分の手では確実にいじれない、ということです。電化製品を修理するなんて、わたしには無理。ある程度の信用がないと買えません。
こうした問題を、できればインターネットの世界で解決したい。いろいろと調べました。なんたって、住んでるのは長崎県波佐見町、すぐにショールームやお店に見に行くことは難しいからです。
しかし、難しい。組み立て動画なども見たけれど、あんまり構造の理解ができない。口コミは玉石混交。
そんなときに見かけたのが、セール情報でした。「FlexiSpot」という電動の昇降式デスクをいろいろ発売しているメーカーで、20%オフセールをしていたのです。いろんな人がこの機会に使い心地を口コミをしていました。
昇降式デスクって、高いものは結構高いのですが、ここのは比較するとお安い。そこからさらに20%オフ。
どうしようか。セールは期間限定、はやく決めねば。
悩んで、首都圏に住んでいる友だちの田所敦嗣さん(以下、親方)に相談しました。最近デスクを自作していたし、ご近所のおばさまたちのいろんなものを修理しているし、相談役にぴったりです。
「これを買おうと思ってるんですけど、どうですかね?」
すぐに返事が帰ってきて、いろいろアドバイスしてくれました。会社のプレスリリースや所在地まで調べるところ、さすが。
いろいろ相談してるうち「今度長崎へ行くときに、組み立ててあげよっか?」と言ってくれました。やさしさの神でしょうか?
これは誓って嘘じゃないのですが、当初わたしは自分で組み立てる気満々でした。こちとら、ひとり暮らし歴約8年の孤独のプロです。わたしより背の高い本棚だって、ランドリーラックだって、自分で組み立ててきました。「ふたりで組み立てて」という説明書の指示をどれだけ無視してきたでしょう。
下穴を開けたり、電動ドリルを使ったりした経験はないですが、きっとなんとかなるはずだと思っていました。素人でもつくれるから、売られていて人気なのです、たぶん。いざとなったら波佐見のおじいちゃんたちに泣きつくつもりだったので保険はありましたが、やる気でした。しかし、親方に助けてもらえるなら、そりゃ100%成功すると確約が取れたようなもので、お願いすることにしました。
(※最後まで読むとおわかりいただけますが、結果として自分ひとりでは無理でした!)
親方にお願いすることにしたいちばんの理由は、天板を自作したかったからです。「FlexiSpot」の天板も種類豊富で、専用の商品なので下穴も空いていて選択肢としてアリでした。それならつくるのも多少ラクです。ただどうにもオフィスデスクって感じが強くなってしまって、ごはんを食べたり日常で使ったりするには、ちょっと雰囲気が違うなあと思っていたんです。
わたしがほしいのは、暮らしの真ん中にあって、仕事もできるテーブルです。
すぐさま、脚を買いました。セール価格で22,880円。でもセールじゃなくても、かなりおトクな部類だと思います。電動で、高さのメモリーも4つ設定できるタイプです。
「じゃあ天板は、用意しときます」
そこから、わたしの天板探しがはじまりました。ネットをいろいろ調べて、デスクを自作している人のブログなども読み漁り、通販している材木屋さんにお願いしようと思ったのですが……めっちゃ日にちがかかることが判明。親方が長崎に出張(※メインは旅行です)に来るまでに届かない!
こりゃあかん、ということで、リアルの店舗を持つ材木屋さんを探しました。そこでいい感じの集積材を発見。DIYとかでもよく見る、メルクシパインの集積材です。
木材については、若干の、ほんとうに小さじ2杯くらいの知識があります。というのも、大学生のときに「キルト工芸」さんというすばらしい椅子の会社にインターンさせてもらって、いろんな北欧の椅子について学び、どんなふうに木材の良さを生かしているかを教えてもらっていたからです。
▼ほぼ日の塾で、「キルト工芸」でお世話になった森下さんにインタビューしたことも。
それに加えて、ネットであれこれ検索。素人だし低予算だし、集積材がベストと思っていました。
「厚さ30mm、幅600mm、長さは2000mmまでだったら、税込6000円でいいですよ。来られる前日までにオーダーしてもらったらカットしておきます」
材木店のお兄さんにそう言ってもらって、「ありがとうございます! 絶対に注文させてもらうんで、また長さだけ決めてあらためて連絡します!」とその日は帰りました。思ってたより、うんと安い。助手席のシートを前に倒して車に乗せて運べば、送料もかかりません。
親方にもすぐ報告。なんの技術もないけど、報告・連絡・相談をきちっとする弟子でありたい。外に丸太やカットされた木材が並ぶ材木店の写真を送ったら「めっちゃ本格的やんけ!」と突っ込まれたのですが、ネットだとめちゃくちゃ届くのが遅い旨伝えると、「ウッドショックのせいかもね」とのこと。へ〜、ウッドショックですか〜なるほど〜(ちゃんとはわかってない弟子)。
悩んだのは、長さです。幅はもう600mmまでしかなくて、それでちょうどいいとも思ってたので悩む余地もありません。厚さも30mmがMAXで、天板が反らないようにとかネジで固定することを考えると30mmでよいと親方に聞きました。あとは、長さです。ダイニングテーブルだけではない、デスクだけでもない、暮らしの真ん中のテーブル。使うところを想像してみます。
まず、友だちが3人くらい遊びに来てもいい、わたし含めて4人で座って使える長さがいいなと思いました。仕事をするにも、MacBook Airを真ん中に置きつつ資料がいっぱい広げられるとありがたいです。
とはいえ、あんまり長すぎるとこの先引っ越したり、誰かと暮らしてダイニングテーブルとデスクを別々にするときに、「このスペースにテーブルが収まらない〜!」なんて悲劇が生まれそうです。
大は小を兼ねず、ほどよいバランスが求められます。自分の部屋をあちこち測り、世の中の「ダイニングテーブル」と「デスク」のサイズを調べて比較し、検討しました。
最終的に悩んで決めたのは、「厚さ30mm、幅600mm、長さは1400mm」でした。
椅子を2脚並べても窮屈ではなく座れそうで、かといって長すぎないサイズです。
ちょうど、IKEAのカラックスという棚を横置きにして使っていて、これが長さ1470mmだったこともあり、近いサイズだと部屋で並べたときに統一感があっていいのではないかとも思いました。
選ぶときには、部屋の広さや、手持ちの家具とのバランス、椅子との相性なんかを考えとくといいかもしれません。
材木屋さんに電話して寸法を伝え、翌日に取りに伺いました。実物を見せてもらって安心。ちょうどいいサイズです。探しまくった上での出合いに、天板を買っただけでちょっと感動してしまいました。
「はい、カットしておきました。代金は4000円でいいですよ」
「え? そんな安く……?」
「大丈夫ですよ。車まで運びますね」
どんな魔法が使われたのか、皆目検討もつきませんが、なぜか天板は予告より2000円も安くなり、無事入手することができました。なぜだ。
とにかく、天板を車で持ち帰り、大工部屋に運びます。
大工部屋ってなんやねん、って話になりますよね。勤めている会社がいろんな事業を展開しているので、木工作業も発生するんです。そんなときに使われる部屋の一角をお借りすることができました。
「大工部屋、使ってもよかですか〜?」
「よかよか〜!」
話が早い。しかも電動ヤスリも貸してくれました。初日はおじいちゃんたちがいなくて、ひとりで手でヤスリをかけたんですが、電動はめっちゃ速かったです。というか、気づいたらヤスリ、かかってました。わたしのいない間に、やってくれてる……! でも機械につけるヤスリのパッドは自分で買ってきたし、最終の仕上げのヤスリもちゃんと自分でやりました。ふう。
▼まさか数日後、親方が急に波佐見に登場するとは思わず、純粋にわたしのDIYを応援してくれた仲さん。
DIYのことをちゃんと知りたい人には、仲さんのブログがとても役に立ちます。わたしのnoteは単なる体験談なので、ぜひこちらをご覧ください。
さて、話を戻します。
塗装は、ワトコオイルのナチュラルを選びました。部屋で使っているオットマンの成形合板と同じ色・質感がいいと思ったからです。大学生のとき、ヤスリをかけて、オイルを塗って乾燥させては拭いて……と作業したのを思い出しました。あのときお世話してくれた職人さんには頭が上がりません。
ちなみにワトコオイル、在庫があんまりないよう……? リンクは画像が出てくるのでAmazonのを貼ってますが、ヨドバシカメラの通販でそこそこ安く買いました。
オイルを塗ると、天板にほどよいツヤと、自然な色の深さがでます。大工部屋のおじいちゃんたちに「オイル塗るときは手袋せんと手が荒れるぞ、ほれ」「窓開けといてやるけん」「家に持ってくときはダンボールで養生したらええ」などなどお世話されて、無事に完成しました。
ちなみに、200mlのオイル、足りるかと思いきやグイグイ天板に吸い込まれて、ギリギリでした。もうちょっと容量の多いのにしてもよかったかなと思ってます。ワトコオイルは、メンテナンスで後から"追いオイル"もできるので。追加購入しようか迷ってます。
そして、親方登場!
さすが親方、ありとあらゆる工程が、スピーディー。1時間もかからずにできました。弟子のわたしにちょっとした作業を任せてくれて、しかも褒めてくれるので、楽しく進みます。
このとき思いました。やっぱり、わたしひとりじゃ無理だった!
電動ドリルで天板に脚を固定していくのを見て、「こりゃあひとりじゃ無理だ……」と口から出ました。無理。なんか電動ドリルの音からして凶暴じゃないですか。親方、ありがとうございます。
そんなこんなで、無事に完成したテーブルがこちら!
すばらしい仕上がり……! 高く天板を上げても、グラつきはほとんどありませんでした。機械の初期不良もなかったです。
昇降式デスクのデメリットに「とにかく重い」というのがあるんですけど、キャスターをつけることで解決しました。ただ、そのぶん一番低くしたときにも天板の高さがちょっと上がってしまいます。わたしとしては許容範囲内でした。ラグを敷いて、その上に重い(脚だけで約22kgある)テーブルを固定して置いたら、掃除がしにくくなっちゃいます。しかも後からキャスターをつけるとなると、重いテーブルをひっくり返さないといけなくなります……。キャスターをつけるなら最初に取り付けるのがおすすめです。
純正のキャスターもありますが、わたしは別メーカーのものにしました。
買ったのは、こちら。昇降式の脚に白を選んだので(白と黒の2択だった)、黒いキャスターだとちょっと嫌だな、と思ってデザイン優先で決めました。でも、これは許容荷重もほかに比べて優秀だったし、ストッパー部分も幅広で扱いやすいので選んでよかったと思います。
椅子も買いました。憧れのセブンチェア。テーブルの脚を天板の外側ギリギリではなく、すこし内側につけているんですが、それでもちょうど二脚が収まります。ジャストサイズ!
テーブルが新しくなったことで、ごはんを撮影するのも楽しくなりました。さっとiPhoneで撮影しても、いい感じに見えます。
うつわに携わる仕事をしているので、家でも撮影が捗りそうでうれしいです。
以上、とっても長くなりましたが、「暮らしの真ん中で、仕事もできるテーブルをつくった話」でした!
ちなみに、原稿を書くためにつくったテーブルですが、まだ原稿は書けていません。これから頑張ります。ほんとうです、書きます。書きます!
30minutes note No.997