朱字を入れていくと、また好きになってしまう。
わたし主宰の食べるマガジン『KUKUMU』の、4人のライターさんが書いてくれた初稿ぜんぶにやっと朱入れが終わった。とにかく全力で手間暇かけてやると決めているので、時間がかかってしまう。
こんにちは、こんばんは。くりたまきです。
食べることについての読み物を毎週水曜日に公開する『KUKUMU』。まだスタートする前、まずは全員の初稿をまとめて確認してから、公開する順番を決めようということにした。
初稿を並べてみた上で、分類し、テイストなどのバランスを見て、順番を決めた。
そこまではよかったのだけれど、全員一気に初稿が来たので、編集に時間がかかってしまった。あいだにマガジンスタートのための準備もろもろや、波佐見陶器まつりの仕事が入ってしまい、途中からめっちゃ遅れた。
素晴らしい原稿が集まってきているから、いかに磨くかは慎重に考える。人となりもある程度わかっているから「わたしならこう書くけど、彼女の場合はこんな感じの修正が似合うかな?」といくつかの選択肢を想像する。
朱字はライティングしてくれるメンバーに、わたしから渡せるいちばんのもの(自主企画だから原稿料はないし……)。最大限の愛情を込めて朱字を渡したい。
Googleドキュメントで提出してもらった3000字程度の原稿に、ひとり約40個ほどのコメントをつけていた。4人全員だいたい数は一緒だった。単純に割り算すると75文字に1回は朱字が入っている計算になる。
流石にウザいかな?
朱字には修正をお願いするものもあれば、「ここが好き!」を伝えるものもある。なんでもかんでも書き直してもらうわけじゃない。でも、ちょっと考えてしまう。バトンズの学校で古賀さんの熱いフィードバックを受けてきた同期の人たちだから惜しみなくガッツリ朱字を入れているけれど、大丈夫なんだろうか。
わたしはすでに朱字への耐性ができているから、ちょっと感覚が麻痺してるかもしれなくて、4人の反応が気になる。
これで朱字が嫌になって辞めたいと言われたら泣く。わたしは、朱字を入れるほどに4人がさらに好きになってしまうから、絶対に泣く。
思考に寄り添うように、彼女たちの文章に潜っていくと、その意志や決意や努力や魅力が一つひとつ感じられて、愛しくなってしまうのだ。
これが無記名の仕事や、ライターの個性というより機能が求められる場合だったら、目的に合わせて考えて朱字を入れる。だけど、『KUKUMU』の場合はせっかくならその人らしさを思いっきり出してほしいから、その人に合わせて考えて朱字を入れる。
もともと好きな人たちをもっと好きになる。全然嫌われる勇気が湧かないので、先週末もメンバーに会ったとき「朱字嫌じゃない?」って聞いてしまった。まだ嫌じゃないってさ。安心。
わたしは駆け出しのとき、朱字に飢えていた。寄り添って、一緒に考えて朱字を入れてくれる人。いまでも尊敬し感謝している先輩もいるけど、その人は関われる案件が限られていたから、もっと見てほしいとわがままを思っていた。朱字をもらうと、何度も読み直して修正した。
そのときの自分が「朱字、必要なら入れるだけ入れてしまえ!」と言ってくる。これからも、嫌がられていないか何度も確認しながら、編集者として朱字を入れていきたい。
それにしても、いまのわたし、原稿の見え方がすごくクリアだ。バトンズの学校に通って古賀さんの朱字を見てきたからだろう。自分の成長を感じた。
30minutes note No.1010