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加齢は足からやってくるということ

筋肉は年齢とともに減っていく

「加齢は足から」という言葉がある。

ご存じの通り、筋肉の量は年齢とともに減っていく。

腕、体部分、足と部位別に見ると、足の筋肉の量は腕や体部分と比べて減りが速い

根拠となる論文

日老医誌 2010;47:52-57

この論文はとても参考になる。
とある学会にて受けた講義で、この論文が紹介されていた。

対象は18歳以上の日本人。

大都市近郊や農村在住の住民、大学の学生や教職員、民間企業の職員、地域の既存施設(図書館、老人福祉センターなど)の利用者。
男性が1,702人、女性が2,301人と人数も十分に多い。

ただし、測定場所まで歩いて来ることのできる人が対象となっている点には注意。
特に高齢者では家から出られない人が対象となっていないので、実態よりも筋肉の量を大きく見積もっている可能性がある。

私も講演をしたことがあるが、「加齢は足から」という言葉の根拠としてこの論文を紹介した。

素晴らしい論文なのでお時間のあるときに是非お読みいただけたらと思う。

▼リンクはこちら。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/47/1/47_1_52/_pdf

この論文をもとに、筋肉の量が年齢とともにどのように変化するのかをグラフにまとめた。

全身の筋肉量の減り方

縦軸は筋肉の量(kg)、横軸は年齢(歳)である。

青:男性 全身筋肉量= 0.352(年齢)- 0.0050(年齢 2)+ 47.28
赤:女性 全身筋肉量= 0.154(年齢)- 0.0022(年齢 2)+ 34.07

男女とも20歳頃の筋肉の量と50歳頃の筋肉の量がだいたい同じである。
全身で見たときの筋肉の量は

  • 男性は40歳頃まで少しずつ増えて、それから減っていく

  • 女性は50歳頃まで横ばい、それから減っていく

腕部分の筋肉量の減り方

縦軸は筋肉の量(kg)、横軸は年齢(歳)である。
全身のグラフとは縦軸の目盛り幅が小さくなっていることにご注意。

青:男性 腕の筋肉量= 0.035(年齢)- 0.0005(年齢2)+ 5.02
赤:女性 腕の筋肉量= 0.019(年齢)- 0.0002(年齢2)+ 2.96

男女ともに腕の筋肉量はあまり減らないことがわかる。

  • 男性は50歳頃から少しずつ減ってくるが、それでも比較的緩やか

  • 女性はずっと平坦

女性がずっと平坦なのは、家事でこまごま腕を動かすからではないかと言っていた(論文に書かれている考察ではなく、学会で講義していた先生談)。

体部分の筋肉量の減り方

縦軸は筋肉の量(kg)、横軸は年齢(歳)である。

青:男性 体部分の筋肉量= 0.288(年齢)- 0.0031(年齢 2)+ 21.54
赤:女性 体部分の筋肉量= 0.162(年齢)- 0.0016(年齢 2)+ 16.03

男女ともに20歳頃の筋肉量と80歳頃の筋肉量が同じくらいである。
だいたい50歳頃までは増えて、それから徐々に減っていく。
これにはたいへん驚いた。

リハビリ業界やトレーナー業界では「体幹」という便利な言葉がある。
体幹が使えていないとか、体幹が弱いとか。
体幹という言葉を使うと、なんだかよくわからなくても、わかっている人になれる気がする。

私は体幹というあいまいな言葉を使うことは避けている。

ちょっと話が逸れてしまったが、体部分の筋肉量は中年までは増えて、それから徐々に減っていくものの、高年齢でも若いころと同じくらいの量が保たれるということが分かった。

足部分の筋肉量の減り方

縦軸は筋肉の量(kg)、横軸は年齢(歳)である。

青:男性 足の筋肉量= 0.025(年齢)- 0.0013(年齢 2)+ 20.79
赤:女性 足の筋肉量=- 0.027(年齢)- 0.0004(年齢 2)+ 15.08

足の筋肉量は、男女ともに20歳頃をピークに直線状に減っていく。
腕や体と比べてみると、筋肉量の減り方が急激であることがわかる。

上でも述べたが、測定場所まで歩いてこれる人が対象である。
高齢者の筋肉量を実態より大きく見積もっている可能性がある。

大きく見積もっている可能性があるにもかかわらず、この急激な減り方である。
実際はもっと減っているかもしれないと思うと、足の筋肉量は想像以上に減ってしまっているのかもしれない。

これが「加齢は足から」と言われる根拠である。

まとめ

筋肉量は年齢とともに減っていくが、腕・体・足と部位別に見ると、足の筋肉量の減り方が急激である。

拙稿をお読みの皆様におかれましても、足の筋肉は減りが速いということをご承知おきいただき、足の運動は欠かさず行っていただくことを願っている。

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PTわい爺
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