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写真家・正刀インタビューvol.3「SNS時代の被写体とのコミュニケーション」

正刀さん作品1

-「正刀さんの作品の場合、被写体の方が自己開示して成り立つものかなと思うのですが、コミュニケーションで拘っている点はありますか?」

「本当に最近の課題だと思いますね。そもそも私は幼少期共感性がなかったので、あまり人と居るのが心地よくなくて、未だコミュニケーション能力未発達で、赤ちゃんなんですよね。だから、この人(被写体)に自己開示してもらいたいと思っても、できる能力は低いと思います。だから色々研究はしてるんですけど、共感性が低いのでこの人はこう言うことを言ったら傷つくみたいな予測が立てにくいんですよね。だからマニュアル的に全てを学ばないとコントロールが難しい気がしてます。私基準で考えると明後日の方向に行ってしまう。反省することがすごく多いです...」

正刀さん作品2

-「被写体の方とは会って直ぐに写真を撮り始めるんですか?何か会話を間に挟んでからですか?」

「時間の都合上、ない時の方が多めですね。いつもなるべく私は時間をとりたいなと思うんですけど、被写体側からすると2時間で撮ってほしいとかって言うのが多いので、それで初対面でってなると、私が撮りたいものを撮るのは難しいですね。だから、言語コミュニケーションを寧ろしないほうが短い中で分かち合うのには良いんだなと結果的には思う様になりましたね。長い時間でやるならゆっくり関係性を詰めていくことが良いんですけど、短い中でやるなら徐々に関係を構築するより攻め攻めでやっていかないと難しいなと。」

-「これ(コミュニケーション)難しいですよね」

「かなり課題です。私が攻め攻めでやっても相手がガチガチになっちゃうこともあるんで、守りに入ったり。そこの調整は本当に難しくて、人それぞれ違うからマニュアルもないし。だからうまく行く時もあれば、うまくいかないことも必然的にあります。」

正刀さん作品3

-「これは作品としての出来の話かなと思うのですが、正刀さんのHPで成功と失敗について記載されていたと思います。今の話も込みでどんな失敗がありましたか?」

「多くは人間関係での破局ですね。被写体側から思ってたのと違った時に怒られたり、去られたりすることが多いですね。」

-「初対面でですか?」

「初対面でですね。昨今人間関係が希薄になってると思うんですね。SNSで知り合った人との関係を保持しようとは思わないですよね。直ぐブロックするし、嫌なことや自分の意にそぐわないことがあったら会話を切るし、(sns上だと)自己本位的なところが出やすいのかなって。インバウンドが増えてルールが瓦解するような感じで、SNSだと自分本位に振る舞いがちになるんですよね。そういう文脈で破局する場合もあれば、私のミスで破局することも大いにあると思います。私の撮影は一回の撮影で"あなたも直ぐにこうなれます"みたいなことはないんですよね。どうしたって時間はかかるし、相手との自己開示が必要だから中々難しい。数時間で決められて、切られてしまうとその人との物語は失敗のままで終わってしまう。そこが残念だなと思うことは多いですね。」

正刀さん作品4

-「因みに成功と捉える撮影はありますか?」

「良いなと思える写真が撮れたら全部成功、無意味じゃ無かったなと思うんです。自分が思ってた100点のものがあったとして、100点以上のものが撮れたらいいなと。自分がフルパワーで100点を出して、あとは相手とかシチュエーションとか状況とか、ミラクルが起こって自分の実力以上のものができると生きてて良かったなと思えるんですよね。孤独じゃないと思えるというか。自分がどうやってもここまでしか届かない限界があるんですけど、あとは何かがないとその先には行けないので、加点があったら成功だなと思える、自分だけで100点出したらそれはそれで成功でしょうけど、それ以上のものを私は求めていますね。」

-「その加点とは、具体的に何が加点とされるんですか?」

説明中の正刀さん

「このペットボトルを撮ろうと思うと、自分の中でキラキラ〜って、水が綺麗なものが撮れたなあっていうのが100点だったとしましょう。私が求めているものって、例えばトンビがバサってペットボトルを持っていってしまう、それだけでも面白い。そう思わないハプニングというか。思っても見ないことが起こることですかね。」

-「100点以上があることに気付ける柔軟さこそ、表現者に必要不可欠な気がしますね。それでは正刀さんにとって写真とはなんですか?」

「なんか、アナザースカイみたいなのきましたね笑。そんなに写真に傾倒している感じはあんまりなくて、何かを記録する手段として写真を撮ってるだけで、あんまり重く捉えてないですね笑。最近情報豊かでどんどんわかりやすくなるじゃないですか、ゲームとかもグラフィックがすごい..その中でも写真はなんでこんなに情報がないんだろうって。写真って誰が撮ってもその物体は同じじゃないですか。加工したらそれぞれの色が出てくるけど、そこの情報の少なさと無個性なところが好きなんですよね。と言いながら私は無個性な写真を撮ってないし、どんどん押し込んでいくのでアレなんですけど笑。無個性だから写真が好きなんですよね。」

正刀さん作品5

正刀(Masatō)
2024年国際写真サロンU30最優秀賞、デジタルカメラマガジン5月号フォトコンテスト入賞。2022年「彼女をそこから出してはいけない」カバーフォト提供など。
三重県を拠点に活動する写真家。
Twitter @Welt_Einsamkeit

写真家・正刀vol.3 SNS時代の被写体とのコミュニケーション


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