#4 偏愛上等、メンヘラ上等、イタくて結構
お前ら好きな人のことちゃんと好きでいてるか?
昨日初恋の悪魔を見た。
1話でなんとなくキャストが気になるなあと思っていたけど、田中裕子さんが出てきた瞬間坂本裕二さんの脚本で間違いないと気づいた。
坂本裕二さんの脚本作品はどれも好きで、1番を決めるのは難しいが「カルテット」で私の心を完全に掴み、いつ恋、最高の離婚、怪物、と確実に私の心を鷲掴みにしていった。
彼の作品にはいつも、美しい恋愛のすぐ隣に一途に愛し続ける片想いが存在する。
好きな人と好きな人が結ばれることを幸福と話したすずめちゃん。
もう2度と会うことの許されない人を想い続ける鹿浜鈴之助。
これは原作のある映画で、坂本裕二さんは関係ないが、アンダーユアベッドの三井くん、ハリーポッターのスネイプ先生。
私、あなた達みたいな人に出会ってみたくて生きてる。
あなた達と画面越しで出会えて本当に嬉しい。
彼らと現実世界で出会えないのは私が彼らをフィクションだと思っているからだろうか。信じきれてないからだろうか。
知人がタップルを始めた。
"俺は真剣に彼女を探してるんだ"
と話していた。真剣に彼女を探しているって何だよと思った。
浮気はしないし、一途に彼女を好きでい続けることが彼のアピールポイントらしい。
なんだそれ。ナメてんのか女を。
人を愛することをなめてんのかよと思う。
彼がアピールポイントとして述べた"浮気はしない"という言葉は"他の女に目がいかないから浮気をしない"のではなく、"彼女がいるから浮気をしてはいけない"というルールに則っているだけだ。
それって浮気をされることよりずっと自分が愛されてない感じがする。
人を愛するって、そういうルールを飛び越えた、枠からはみ出たものなんじゃないかな。
溢れ出るものなんじゃないかな。
彼が言いたいのは、浮気をしないことではなく、クズ男ではないですよってことだろう。
浮気しないとか、そんなことどうでもいいくらいただ好きでい続けて、ルールに則って生きるようになったら別れるべき時なんじゃないかなって思うんだよ。
はなから、"浮気しません"って公言しなきゃならないほど女の子が男に信頼を置いてないのは、人との出会いを茶化すムーブメントにあると思う。
ティンダーで出会った女の子との飲みの様子を動画にしてsnsにアップする男。
マッチングアプリでの出会いを茶化したMVを撮る自称アーティスト。
マッチングアプリで出会ったって、現実で出会ったって何にも変わらないはずなのに、ヤリモクとか、クズ男とか、メンヘラとか、そういう概念が浸透して女と男は互いに武装が激しくなったように思う。
クズ男だと疑われないように。
イタいと思われないように。
メンヘラだと思われないように。
そんなのどうでもいいよ。ありのままで向き合えば良いのに。
こういう概念が当たり前になり、人々はsnsの情報を頼りに、目の前の人間から目を背けていないだろうか。
目の前の人間がクズだろうが馬鹿だろうが、好きになったのなら愛せば良い。好きでい続けたらいい。
それなのに勝手にこいつはダメだと判断して告白もせず次の恋愛を模索するっていうのは、効率的なようでただ逃げているだけだ。
好きでい続けることが恥ずかしいのだ。
snsでみたメンヘラとかクズ男に目の前の人間を当てはめて、自分が失敗しないように。いたい人間にならないように。可哀想にならないように。恥ずかしくならないように、と。
モテないモブ男がsnsで見かけたクズ男を美化して自分もそうあろうとするなんてのはもってのほかで論外だが。
私は昔友達の男が風邪を引いた時、「大丈夫?一人暮らしだしなんか食べ物もってこうか?」とLINEをしたら勝手に勘違いしてメンヘラって言われたことがある。
いやいや、まずお前のこと好きじゃねえし、割とガチめな親切心で言ったのだが。と思ったけど、こうも簡単にメンヘラにさせられるのは、きっとsns上で見かけたメンヘラ像と沼らせる男テクニックみたいなのが彼にこびりついているからだろう。
彼はきっとメンヘラを生み出せるほどモテる俺に酔いしれていたことだろう。
人を信用することが、人を好きになることがイタイと思うようになった若者は、イタイ人間になるまいと適当な恋愛や薄っぺらいアピールポイントを述べて、人を好きになったようなふりして自分のことを可愛がっていく。
恥ずかしいの上等。
傷つくの上等。
可哀想な人、メンヘラ上等だよ。
本当にそういう出会いがくだらないと思うのなら、ティンダーでであった女との動画をsnsにあげたり、マッチングアプリをモチーフにしたMVなんか作ってんじゃねえよ。
ほんと、あんたたちって薄っぺらいものが好きだね。
批判してる自分、小馬鹿にしている自分は、彼らとは違うと。そう言いたいんでしょう。
振られても良いから、恥ずかしくても良いから、メンヘラって言われても構わない、振り向いてもらえなくて良い、そういう概念なんかどうでも良くなるくらいただただ好きでい続けたい。
何年経っても忘れられない人とたまたま道ですれ違って、もう彼女には旦那がいるのに、望遠鏡で彼女の家をのぞいて、それじゃあ飽き足らず彼女の家のベッドの下で彼女と旦那が性行為をしてるのをみてしまうくらい好きでいたい。
もう2度と会えないし、これは第二人格の彼女であるとわかっているのに抑えきれない彼女への好意に出会ってみたい。
いたくていいじゃん。
恥ずかしくていいじゃん。
ルールなんかどうでも良くなるくらい人を愛したいし、それが人を好きになることだって信じてる。
だってさあ、茶化してる暇あったら目の前の人を信じてあげる強さがないと、三井くんも、すずめちゃんも、見逃してしまうかも知れないから。
私が生きる世界はドラマでも映画でもないから、目の前の相手を信じないことには始まらない。