病床六尺舌先三寸胸一寸2

思い出というのはとても美しいのです。
 ちょっとしたどころではない、当時の治安の悪さや不衛生さ不便さすら人は後光差す輝かしく、そして若々しかったころの『味』や『趣』なんてものへすり替えてしまいます。

 しかし思い出なんてとっても豪華な贅沢品です。
 それに浸れる金と時間があるからできることです。
 
 そのお金と時間はあなた自身が稼ぎ出してきたものでしょうか?

 よく考えてみてください。
 
 昔のほうが厳しかった、という理論で若者や後身を叱咤する人間はけっこういます。
 しかしよく考えてみると

 サボって昼寝している外回りのサラリーマンは昔ほうが多かった。
 昔のほうが『重労働』なだけで『複雑』ではなかった肉体労働者は絶対に多い。
 事務仕事だって今は1人でやらされる事を何人も、下手するとそれ専属の『課』まであってやってませんでしたか?
 残業すればそれだけ貰えた。
 飲み屋街は今よりももっとずっとネオンが輝いていた。
 
 今、老人になり
 「若者に覇気がない」なんて言うその口こそ
 『サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ』と歌っていたはずだったんですよ。

 自分はとても厳しいことで知られる運送会社にいました。
 ええ、それは厳しかった。
 今は女性が働き早い時間に帰れるそうです。
 
 給料は下がったのですが、今の時代には絶対こっちのほうがいいに決まってます。
 今の人、
 いや違いますね、

 氷河期世代から-10歳くらいの一番働いていなくてはいけない無辜の市民が一番大切にしなければいけないのは『時間』です。

 社会に出れば戦い、必死になって不眠不休で立ち向かわねばならないこともあります。
 しかし恋人や子供ができて
 それでも家に帰れずに荷物の海に溺れるのは健全でしょうか?
 豊かな生活の代償としては大きすぎませんでしょうか?

 しかし一番時間を削って戦っていなければいけない、責任ある立場になった『バブル世代』と若さ溢れる世代が一番『時間を泥棒している』気がするのです。

投げ銭を旅費にして旅をしてレポートしたり、リクエストを受け付けて作曲をしたりしています。