見出し画像

BANANA FISH 感想 3巻 アッシュの涙について

20巻まで長い道のりだ~。毎日書いてやろうとは思っているんですが、今日は残業で帰りが遅かったんで多分明日か明後日まで書くの時間がかかりそうだなぁ(今8月16日の22時)

ってよく考えたら毎日書いても20日かかる?もしかして?おいおい、見切り発車しすぎた??笑。

前置き。復刻版BOXの背表紙の話

私が持ってるのってこれなんですけど、背表紙って英二・アッシュ・シン・ブランカであってるよね?毎回思うんだけどVol.1がブランカ(※未登場)なのであってるよね?っていつも思ってる。一人で。笑

ちょっとまって。めざましテレビに……。

今日めざましテレビ(21/8/19)でアッシュ出てた(内田雄馬の話題)で驚いたんだけど。代表作アッシュなのね!びっくりした~~。内田雄馬って人気なんですね!知らなかった。BANANA FISH流行ってくれ~~(笑)呪術廻戦に出てるって誰よ。と思ったら伏黒恵でした。全然気づかなかったわ!!呪は人気声優多いもんね~。私は呪術廻戦の声優では、内山昂輝(呪術廻戦の狗巻、ハイキューのツッキー)推しです。声はね。キャラだと呪術廻戦はパパ黒推し(※アニメ未登場)なので!!!声優つながりで補足すると、ハイキューでは梟谷の赤葦くん推しです~。そしてこの赤葦くんの声がね~逢坂良太なんですね。はたらく魔王さま!の魔王様なんですね。声優では最推しは逢坂良太なんですよ。あれ、何このループ?なんかぐるぐる回って頭が……(笑)

刑務所でのマックスとのやり取り

さて本題の3巻の感想に進みます。

刑務所でのマックスとのやり取りはアッシュのお家芸・キレッキレの皮肉たっぷりでとてもクールですよね~。特に私が好きなのは、作戦とはいえ、刑務所でヤられたやつは軽蔑されるんだ、なぜ抵抗しなかったとマックスがアッシュに問います。

「オレはクズどもに軽蔑されたって痛くも痒くもねえよ」(BANANA FISH 3巻より)

とアッシュは返すんですね。個人的にこのセリフ、とっても共感できます。スッキリするいい性格だよね。

そして裏を返せば、2巻でキッズポルノの過去をどう思ったのか、英二の反応を窺うシーンとは対極ですよね。つまりアッシュにとって英二はクズどもではないわけだ。赤ん坊ではあるけど(笑)

そしてこのアッシュの台詞に気づかされたマックスは、「そうか…」と感慨深そうに納得します。そんな感慨深そうなマックスをお座なりにアッシュは「もう用がねぇなら行くぜ」とそそくさと去っていく、かなりのクールビューティぷり。それに対するマックスの心理描写が

「おーお きついこと」(BANANA FISH 3巻より)

ここが好きです。2巻も書きましたが、吉田先生のキャラクター描写のうまさが光ってます。2巻は英二の涙を通して、3巻はマックスの心の声でアッシュってキャラクターの性格を表現していますよね。このマックスの心の声を読んで読者は「ああ、アッシュってクールなんだ」と思う訳です。用が済んだらそそくさと去っていく描写だけでは、それが刑務所でクールな対応であるかどうかってもしかしたら読者は気づかないかもしれない。物語の中の世界の常識を読者にどう伝えるか。モノローグでもいいんですが、それじゃあ説明くさい。こういったキャラクターの心の声で世界観や世界のルールを間接的に説明するのはとてもおしゃれで秀逸な表現ですよね~~。感服です~~。アッシュカッコいい~~。

伊部さんの年齢27歳なんだぜ……知ってた?

場面変わってチャイナタウンから帰ってきた英二を迎える伊部さん。英二と一緒にショーターのもとへ向かいます。あれ、グリフ生きてんじゃん。やっべ2巻で死んだかと思って感想書いてたな私(笑)

気を取り直して、「おっさん」とショーターに呼ばれた伊部さんは気にしている様子です。そんな、気にすることでもねーだろ、と読んだときは思っていたのですが……。後日、BANANA FISH公式ガイドブックを読んで知ったのですが、なんと伊部さん27歳らしい!!私より年下……だと!?!?まじか。見た目30代(下手したら40代)にしか見えねー!!そりゃおっさん呼ばわりされたら気にするわ!!英二は若く見られるから、一緒にいるせいで余計オッサンに見えるのかな?にしても27歳で英二のパパみたいな感じじゃない?アッシュに対してもマックスとセットでかなり保護者っぽいけど、27であの貫禄はすげえ。伊部さんと言えば、3巻では英二に帰国を切り出します。一方、死んでしまったグリフを見て、やりきれない思いはあったのでしょうね……。

「ちくしょう…見境なく人を殺しやがって……!何が自由の国だ…笑わせんな!」(BANANA FISH 3巻より)

と言います。なかなか皮肉のきいたいいセリフです。伊部さんもたまにいいこと言うんですよね。好きです。

3巻後半では、アッシュの実家ケープ・コッドで銃の撃ち方をアッシュに教わる英二も同じようなこと思ってますね。肩を撃たれていたアッシュを心配すると、「かすり傷」と返されて。

「タフだな~~日本が戦争に負けるわけだ」(BANANA FISH 3巻より)

こういう台詞回し結構好きです。

アッシュの涙

3巻前半、刑務所でグリフィンの死を知ったアッシュは、自分と兄の関係をマックスに話して涙を流します。さらに3巻後半でも、ゴルツィネに仕返しをして、ひと段落した後も一人で兄グリフを思い涙を流しています。

私は読み返した時この部分がすごく印象的でした。私のアッシュのイメージは「完璧」になっていて、絶対泣いたりしないって思っていた。19巻まで読んでいくと、だんだんと本当にそうなっていく。どんなことをされても、涙を流さなくなっていくんです。だから最終巻付近の完璧なアッシュのイメージだけが読者に残り、3巻に戻ってくると不思議な感覚がするんだと思います。アッシュが17歳のティーンのように見える3巻に違和感を覚えるんだから皮肉だよね。私は読み返していて序盤アッシュはよく泣いているイメージに塗り替えられました。でも本当後半は、神々しい、だとか、気迫がある、ってレベルで作り上げられていくから、この感想を通してアッシュの涙がどこで止まるか書いていきたいと思います。。。

公式ガイドブックで、作者の吉田秋生先生は、「アッシュのキャラクターが掴めない」とインタビューで仰っていた。きっと作者の手を超えて育っていったキャラクターなんだと思う。本当に漫画家先生っていうのは母だよね。生まれた子(キャラクター)は親の手の届かないところまで成長するんだなぁとそんな風に思う。アッシュが誰かの想像で1から設定を作り込まれたキャラクターだなんて信じられない。BANANA FISHの紙面上で、アッシュが生きた生き様があまりに迫力がありすぎて、こんなの作ろうと思って作れるものじゃないと思う……。

好きなセリフ

BANANA FISHは名言多いんですが、笑える台詞もありますよね。

声出して笑っちゃったのは、弁護士ジョージがアッシュの仮釈放の手続きをするときにマックスに言った台詞。

「おまえムショに入って性格が悪くなったな…相手は不幸な境遇で犯罪のぬれぎぬを着せられたまだ17歳の少年なんだぞ!」(BANANA FISH 3巻より)

名俳優ですからね~アッシュは。この後、猫かぶってると気付いていた(本性に気づいている)マックスでさえ、騙されかけるわけですから。しおらしい演技に本気で落ち込んでいるのかも…と思い直すマックスの単純さ(というかまっすぐさ)に悪いけど笑ったわww

私は好きな漫画でも、ギャグシーンは滑ってんなー全然笑えねーわ、別にギャグ漫画じゃないし、いらん。と思う作品ってあるんですが、BANANA FISHはシニカルな笑いのセンスもあるから、もう欠点見つける方が難しいよね。

そして重要なのは、保釈され輸送してくれている優しいポリス・チャーリーの車を奪った英二とアッシュの会話。車を奪ってくれた英二に、しかしアッシュはもう車を降りろと言います。しかし英二は引かない。(頑固だよねぇ~)グリフィンが死んだことで責任を感じている様子の英二にアッシュが呆れるシーン。

「日本人てのはマゾじゃねぇのか 何でも自分のせいにしたがるんだな わかったよ 好きにしろよ めんどくせぇやつだな」「ほんとかい?じゃいっしょにいて いいんだね」「そのかわり 自分の身は自分で守れよ 足手まといはゴメンだからな!おまえオレより年上なんだろ?」(BANANA FISH 3巻より)

な、涙が……。なんか、このセリフのアッシュってガキっぽいと思わない?しかもちょっと頑固な英二をめんどくさいと思っているよね。

最終話(19巻)で英二はアッシュを「守ってあげなければいけないと思っていた」と手紙に記すわけだけど(号泣ポイント)もしかしたら3巻のこのシーンで、頑固にもアッシュにくっついていこうとしている様子から推測すると、この時すでに、スキッパーや兄を亡くして、それでも気丈に振舞うアッシュに、何か感じていたのかな?ただ、自分が後を付けられていて、グリフの居場所をオーサー達にしられてしまった(からグリフは殺されてしまった)っていう後悔だけじゃないよね絶対。でもアッシュにその気持ちはきっとわからないから、英二を「変な奴」と思っている感じがする。アッシュも言っているように、素人の英二にグリフを頼んだのはアッシュ自身なのだから、(アッシュの性格から考えても)英二は悪くないと本気で思ってそうだしね。

アッシュはボスとして、今までみんなに頼られてきたわけだけど、誰かに頼ったことはないんじゃないかな?だから誰かに甘えたり頼ったりすることができないんだと思う。全部ひとりでできてしまうから、頼り方が分からない。3巻で、オーサー(とゴルツィネ)にやり返しに行くときも、ショーターの協力を初めは断ったようにね。こういう人に、甘え方を教えるのってすごく難しい。なんたってって本人が必要としていない(求めていない)わけだから。この先16巻の間で、英二がそれを教えていくんだけど、そういう意味で稀有な才能を持っているのは、英二のほうかもしれないよね。

このときアッシュは自分の身を自分で守れと英二に言う。でも未来、アッシュはもう英二に銃を持たせたくないって言う。3巻のアッシュは、1人で生きてきたから、1人でどうにかできないことが弱いって思っていそう。だから英二にも銃を渡し強さを求める。でも、人それぞれ強みと弱み、やれることとやれないことがあるって、英二との人間関係を通して気づくんじゃないかな?だから銃を持たない英二のことを侮らなくなる。そして甘えられるようにもなる。でもそれはもっと後の話で……。

3巻でまだ浅い2人の関係と、まだ幼いアッシュがよく表されているのが、このセリフのやりとりだと思います。

ってか感想書くために3巻読んでたら生き生きしているアッシュを見て胸にこみ上げてくるものがある……元気だよね……。いや、最後までアッシュは気高く、元気なんだけどさ……。3巻はまだちょっと子供っぽさがあるというかさ。巻を追うごとに完璧になるのと引き換えに、追い詰められていくっていうのは皮肉だ。

そして完璧になっていくのは、一人で生きてきたアッシュが、周りが慄くくらいに研ぎ澄まされていくのは、きっと英二がいたからだよね。英二はアッシュの弱みだったけど、弱みを持たない人間は強みが際立たない。日差しは強ければ強いほど影も濃くなるみたいに。ちゃんとその弱みを最後まで守り通したアッシュは本当に最後に完成されたんだろうなー。

アッシュってさ、あれだよね、いじめ甲斐がないってやつ。どれだけ叩いてもへこたれないから、ゴルツィネみたいな真性のサディストには、ストレスな訳だ。最後はアーミーまで出して来て叩きに行くわけだから。アッシュが弱くて、すぐにつぶされるような性格だったら、あそこまで不幸になっていなかったかもしれないけど……。神様は越えられない試練を与えないっていうけど、アッシュは超えられる壁が高すぎて、苦労してるよね……。

でも、へこたれないのは、なんていうか人間としての尊厳だとか、道徳だとか根本のプライドがある。あんな生い立ちなのに、道徳心が非常に高いのがアッシュの精神の美しさだよね~。どれだけ強く、人を殺してもそれに酔わず、罪を認めて自分を責めるところとかね。

3巻まとめ

3巻はグリフの死アッシュ仮釈放→チャーリーの車を奪ってポリスから逃走ゴルツィネへ仕返し→グリフの遺品からBANANA FISHの謎を解くためアッシュの実家ケープ・コッドへ

ケープ・コッドではキーとなる銃の撃ち方をアッシュが英二に教えるシーンもありますね。後に、「持っているのが銃じゃなきゃ、ただの年相応の友人のような2人のシーン」と伊部さんが言ったところ。このあたりの、一見ストーリー本筋に絡まないしかも短いシーン(なんと2人の絡みはたったの5ページ!)で関係性を進めていくのもすごいよなー。無駄なページ一切ないんだもん。簡潔すぎるでしょ。物語は肉付けしてなんぼなのに……。本筋の物語の展開の速さも、この無駄のなさからだろうなー。

次回はアッシュの父子関係が分かるところですね。どうしてつらい過去を持ちながら、アッシュの道徳心が高いのか。それは不器用だけど愛のある父親と、優しい兄がいたからだと私は思います。次回その辺も書けたらいいな。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集