
都市計画みたいなトンボの翅でデザインしてみた
虫のいいラジオ vol. 17
虫のいいラジオは、
昆虫大好き、ポッドキャスト大好きな、
子持ちデザイナー、大阪の小坂が好きなことを
話し倒していくポッドキャストです。
今回は
「都市計画みたいなトンボの翅でデザインしてみた」
です。
勝ち虫、トンボ
突然ですが、風呂敷が好きです、
でも手拭いの方がもっと好きです。
むかーしから、手拭いを首に巻いてました。
一回結んで、ダラーんとしときます。
ネジネジってイジられてましたけどね。
ハンカチを持つのが苦手なだけやったんです。
手洗う前にハンカチをくわえないと、
ズボンが濡れるじゃないですか。
さらに、拭いたあと、濡れたままポケットに直すんですよ。なんか気持ち悪くない?
手拭いの場合はダラーんと垂れてるとこで拭いたら、
まあ胸元はちょっと濡れるんですけど、
外に出てるんで
すぐに乾いてそこまで、気になりません。
で、夏なんかは気過熱でちょっと涼しいし、冬は冬で、
濡れてへんかったら、首がちょっとあったかい。
いいことばっかりです。
最近は白シャツにモノクロな手拭いを巻いて仕事してます。ジャケットとか着てない時は一回結んで、ダラーんと出しときます。ジャケットきてる時はシャツの中に入れてます。
ネクタイほど堅苦しくなく、ちょっとフォーマル感出せるんで、
おっさん助かってます。
そんな好きな手拭いを好きな昆虫で
デザインしたいなって思い立ったというわけ。
もちろん、白シャツに巻けるようなデザインです。
その前に、まずは、敵情視察です。
もうすでにあるもん考えてもしゃーないし、
どんなんがあるかも興味あるし。
昆虫 手拭い で検索!
いっぱい出てきますね、すごいですねー
特にトンボが多いですね。
トンボの手拭いは小紋が多い。
トンボをちっちゃく簡単にデフォルメしたものを並べて、
パターン化した模様。ちっちゃいトンボかわいいですね。
なんでトンボが多いのか……トンボ=勝ち虫だから、
みたいです。水虫ちゃうよ勝ち虫よ。
勝ち虫=負けないということで、武士たちの武具などに装飾として使われてたというところから、
伝統模様として広まったみたいです。
では、なんでトンボ=勝ち虫なのか、
それはトンボの特徴からで
前にしか進まない、後ろに下がらない、
後退しない=負けない、っていうところからみたいです。
同じ理由でムカデも勝ち虫と言われているみたい。
ムカデは嫌やわ。
昔親戚の家で夜寝る時に天井にムカデいてて、ギャーっていったら落ちてきて、もう一回ギャーっていって、周りもギャーってなったからね。勝ち虫には勝てんわ、うん勝てん。
そんなギャーギャー言うてる、敵情視察してるうちに
かっちょいい昆虫手拭い、いくつか見つけたんで、
ちょっと紹介しときますね。
・昆虫文献 六本脚 さんの 崩字虫尽くし手拭い
その虫を表す漢字のイラストがイキというか
洒落っ気というかを感じさせてくれます
・お拾いもの さんの みどりの蛾
オオミズアオなどの蛾の儚げな緑色と地色の配色が、
鮮やかで綺麗です。
・MIHANIショップ さんの 甲虫ぎゅうづめ
はカタゾウムシやハナムグリなど、カブクワでない
甲虫がぎっしり詰まってて、藍色一色の迫力も
合わさって、チョー好みです。
ね、結構ありますよね…
いっぱいあるんやし、もうデザインせんでも
ええんちゃうかな?
てな感じで、
昆虫大好き、ポッドキャスト大好き、子持ちデザイナー、大阪の小坂がお届けした、
虫のいいラジオでしたー
ヨコバイバイー
あかーん!!
って、終われへんって。
単なる手拭い紹介だけやん。
デザインしてよ!
頼むでー。
はい、敵情視察してて、やっぱトンボっていいよね、勝ち虫。
トンボモチーフにしたいな。
ってか、実はトンボでデザイン、ちょっと考えてたんです。
そのアイデアが他で作られてないかのチェックも含めた、
敵情視察でした。
特に似てそうなモノなかったんで、
そのアイデア進めていこうと思います。
トンボの翅脈はボロノイ図形
そのアイデア、どんなんか・・・
そう、みなさん大好物の翅脈です、
トンボの翅脈です!
不均翅亜目と均翅亜目とで違いはあるものの、
翅脈がボロノイ分割で作り出した翅室が細美で、
結節と縁紋のアクセントが効いてて、懸垂線な翅先が美しい、
そうあの翅脈です!
ちょっと興奮しすぎましたね。
ゆっくり説明していきますね。
翅脈っていうのは昆虫の翅にある筋のようなもので、
中空で気管や神経を通している管です。
葉っぱの葉脈みたいなイメージです。
昆虫の中でもトンボの翅脈は複雑で繊細で、
超絶技巧味があります。
めっさ綺麗の。
今回はね、そのトンボの中でも、
不均翅亜目の翅脈を使います。
だから、不均翅亜目ってなんやねん?って、
まあそんな慌てんと。ちゃんと説明するから!

トンボはね、おっきく3つ
均翅亜目、不均翅亜目、ムカシトンボ亜目という
グループに分けることができます。
均翅亜目はイトトンボとかカワトンボなど、
複眼がキャビアみたいにプチッとしてて、
横に飛び出してて、
体がほっそーいトンボたち。
前翅と後翅がほぼ同じ形なんで均翅。
不均翅亜目はヤンマとかサナエとかの一番見かける、
複眼がでっかい鶯ボールみたいで、
体もちょっと太めのトンボたち。
前翅と後翅の形が違うんで不均翅。
ムカシトンボ亜目は翅が均翅亜目で体が
不均翅亜目という両方の特徴を持ったトンボたち。
それぞれ翅脈も違うんです。均翅亜目は翅室の形が四角形が多くて、
不均翅亜目は翅室の形、色んな角形が入り混じってる感じ。
翅室は翅脈で区切られた空間のことです。
今回は、多様な角形で細分化された方、
不均翅亜目を選びました。
選んだ理由としては
懸垂線(カテナリー曲線)が綺麗、縁紋・結節アクセント効いてる、
ボロノイいっぱいです。
まずは懸垂線。懸垂って、鉄棒とかでやる、
腕の力で体を持ち上げる懸垂と同じ漢字ね。
翅先の曲線が懸垂線、カテナリー曲線って言って、
紐の左右の端っこ持った時に、中央が下に
だらーんと落ち込んだ時の形をしてる曲線のことで、
放物線と似てるけど、ちょっと違うみたいです。
その違いはほんまに微妙なんで、
細かくここでは言いません。でも美しい曲線で
あることに間違いないです。
続いて縁紋、
縁紋は翅の、先端のちょっと手前にある塗りつぶされたおっき目の翅室で、飛翔中に翅に生じる不規則な振動を調整する働きがあるのだそうです。
ここだけ塗りつぶされててアクセントとして効いてます。
結節っていう部位もアクセントとして綺麗です。
これは均翅亜目にもあるんですけどね。
翅の真ん中の上の方にあるY字路みたいな筋のこと。この結節があることで、翅の真ん中より先端側の方で変形しやすいみたい。その変形特性のおかげで羽ばたいた時の抵抗が減って、飛ぶのが楽になるみたいです。
最後に、ボロノイ。
ボロノイっていうのは、平面上に置かれた、複数の点、母点を基準に、各点から最も近い領域を分割した図のことで、
不均翅亜目の翅では、翅脈の下半分に現れる模様が
ボロノイみたいな模様になってます。
キリンの網目模様とか葉脈とかトウモロコシなどに
みられる図形で、コンビニの出店計画など都市計画などにも活用されているみたいです。
四角形や丸などを繰り返した模様ではなくて、ぱっと見どうやって描くかわからへん、
神秘的なイメージがある模様です。
翅脈で手拭いデザイン
こんなボロノイな不均翅亜目の翅、
見ながら描いてみました。
描いているうちに気が遠くなる瞬間が複数回訪れたので、
諦めました。
持続可能な制作もデザインとして重要ですし!
ズルします、
ズルしてなぞることにします。
手元に標本がないんで、
著作権のない不均翅亜目の画像をPixabayという
サイトから入手します。
それをiPadアプリのProcreateに読み込んで、
拡大して後翅をなぞっていきます。
Procreateは、むかーしからある買取型高機能イラスト描画アプリです。Apple pencil出る前から使ってますが、サイコーの描きごこち。ブラシのカスタマイズ、ガイド、タイムラプス動画生成…あげればキリがない便利機能が盛りだくさんです。
まずはブラックバーンというデフォルトで入ってるブラシで、
リズミカルになぞっていき、ダイナミックなタッチで表現してみます。
なんかイマハチ。イマイチよりもっと良くない感じ。
細かい翅脈の印象が台無しよ、うーん。
リズミカルで、気取ってない線って、原始的で、迫力があるんですよ。
モチーフによってはいい感じなんるやけど、繊細な翅脈には向いてないわ。
デフォルトで入ってる製図ペンで丁寧になぞっていくことにします。
太い翅脈、細い翅脈入り混じり、
なぞるだけでも一苦労です。
ただでさえ、線が揺れるぐらいのイラスト力やのに、
なんとペーパーライクフィルムを使いすぎてツルツル状態。
滑る滑る。なんとか全部の線をなぞり終えるも、
ビビってる線、めちゃめちゃ多いんで、
消しゴムなども使い、線を整えていきます。
今回この作業結構時間かかった、ペーパーライクフィルム貼り直します。
後から聞いたんですが、手ブレ補正を設定できるみたいです。
次回は手ブレ補正したいと思います。
縁紋は黒く塗りつぶします。
このなぞった翅を、拡大縮小しても劣化しないパスデータにしたいので、Adobeのイラストレータに持って行きます。procreateでなぞった時点では画像データ、ビットマップデータなんで、拡大していくとギジャギジャになって汚いです。レイアウトデザインする時なんかは
パスデータにして拡大縮小しても劣化しないデータを扱うことをおすすめします。
イラレの画像トレースっていう機能で、
パス化できるんです。画像をイラレに配置して、
選択すると上部のバーに画像トレースというボタンが出てくるんで、
それをクリック。しばらくすると配置した画像の見た目がちょっと変わります。
パッと見で問題なければ、拡張っていうボタンを押すと…
まさに魔法です。パス化されました!
手拭いのサイズ、長辺90cmの短辺33cmのアートボードを作り
そこにパス化した翅を持っていきます。
もちろん、結節、縁紋、懸垂線が入るように配置。
んーーん、なんかまだイマイチやな。

図と地の白黒を反転させる?
いや、今回は透明感欲しいから、それは無しかな。
翅をコピーして反転して、左右に並べたり、
何枚かコピーして並べたり、
なんかもうひと工夫欲しい感じ、もうひと工夫。
こんな時はこれまで調べた資料をもう一回読み返します。
もうひと工夫のヒントが隠れていること、よくあります。
早速見つかりました。
翅の膜面はややデコボコになっているという記述と
正面から光をが当たってキラキラしている画像。
そのデコボコの感じを表現できればいいんちゃん。でも出来る??
一色刷りを想定してるから、複雑なことはできへんよ。
あかんかー、諦めかけたとき、
目の端で黒光りする何かを捉えました。
そう、黒く塗りつぶした縁紋です。
縁紋みたいに、ランダムに翅室を塗りつぶして行ったら?
色変わることで、
デコボコの感じも表現できて、コントラストも出て、
一石二トンボちゃうん。出た!一石二トンボーーー!
もう一回Procreate に戻って、ボロノイ分割した翅室をランダムに塗りつぶしていきます。
塗りつぶせたら、イラレでパス化、アートボードへの配置。
迫力出たやん!やるやーん!
全体的に白っぽかったんが黒をところどころいれることで、
並置混色で遠目から見たらグレーに見える感じ。
ええんちゃう、白すぎず、黒すぎず、白シャツ、黒パンの
ちょうど中間あたりで。
全体的にグラデーションになってグッドちゃう?
一回出力紙で出してみて実際に巻いてみよ。
実寸で出して、首に巻いてみます。
紙やからガッサガッサでクビ痛いけど、今まで見たことない
模様感になっててええわ、いい感じ。
前翅も同じようにアレンジしてみました。
で、さらに前翅と後翅をあわせてアレンジしたものも考えてみました。
いくつか考えてみたので、noteで見てみてください。






次はハグロトンボかチョウトンボか
これであとはオリジナル手ぬぐいを染めてくれるところに持っていって、注染してみようかと思います。多分ラインの太さとか、色々詰めることめっちゃありそう。
けど一色刷やから、そんな複雑ではないと思うけどね。
結構長い間考えてた翅脈デザイン。
日頃からきれいやと思ってたけど、
イトトンボとかギンヤンマで翅脈の模様が違うこととか、
今回はじめて知りました。
なにせオニヤンマとかギンヤンマの迫力に
憧れてましたからね。でも思い返してみると、オニヤンマとかギンヤンマの不均翅亜目の飛び方とイトトンボとかの均翅亜目の飛び方なんかちゃう気してきた。
不均翅亜目は急な方向転換とか、力強い飛び方、均翅亜目はちょんちょんってかるーく跳躍してるような柔らかい飛び方。翅の形とか、縁紋のある無しとか、翅脈の違いが影響してるんでしょうね。
でそうやって色々見てるうちに、
もっとすごい翅脈見つけたの。
ハグロトンボの翅脈。これすごい! 均翅亜目で四角の翅室なんですが、めっちゃ細かくて細かいの。次回は、ハグロトンボの翅の画像撮って、
ハグロトンボの翅脈で手拭いやってみようと思ってます。
でさらにさらにチョウトンボっていう子もすごいの。
こっちは不均翅亜目でボロノイっぽいんやけど、細かくて色がエグい。
この色味を活かすには手ぬぐいは不向きやから、
別のものを考えます。
夢、広がります、昆虫デザイン。色々昆虫グッズ見てみたけど、けっこう昆虫をキャラ化してかわいくする方向が多いような気がしてます。その方向ではなく、昆虫の特徴を最大限増幅させて、なおかつ気持ち悪くない、シュッとしたデザインに落とし込んでいくことをここに誓いたいと思います。
はい、選手宣誓が決まったところで、
昆虫大好き、ポッドキャスト大好き、子持ちデザイナー、大阪の小坂がお届けした、虫のいいラジオでしたー
ヨコバイバイー