落ちた桜のゆくえ
通学通勤のためでもなく、散歩のためでもない、時々歩く道がある。時々といっても何年も歩いているから、細かいこともわかる。
終電を逃した時に歩くような頻度。歩きたい気分の時に使い、急いでいる時にも使う。すこうし特別。
春には、隣の墓地にある桜が咲き、アスファルトに花びらが落ちる。
アスファルト色と桜色が綺麗で感動する。毎年のことなのに毎年思う。
毎年、これでおわっていた。
ある年の
桜の木が緑色になった頃、
アスファルトの上の桜色がなくなった頃、
ふと思った。
おちた花びらは土に帰るわけでもなく、踏まれて終わる。
帰り場所はあるのだろうか。
注意してその道をみると、白い花びらのかけらを見つけた。数個気づくと目が慣れるせいか、ぶわりと浮かび上がってくる。
落ちて、風に運ばれて、踏まれて、雨に打たれて、強くなった花びらは一面にあった。
アスファルトに落ちた桜色の花びらの行方を知った時、だいぶ特別な道になった。幸せだった。