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【実践編】頭フル回転 究極のおに遊び ~四すくみ~

おに遊びは、子供たちの中で遊びの定番である。シンプルな「おにごっこ(”かわりおに”ともよばれる)」から「ふやしおに」「こおりおに」「ドロケイ(ケイドロ)」など、様々な種類のおに遊びがつくられ、どんなに疲れていても笑顔で走り回る子供の姿が多くみられる。一方で、圧倒的に逃げる側が有利な構造が発生し、「無理ゲー」と化してしまう場合もある。逃げる側と追う側のパワーバランスが崩れると楽しめなくなるという特性も持ち合わせたゲーム(遊び)である。

本稿では『四すくみ』というおに遊びを紹介したい。思いがけないきっかけで偶然生まれた遊びなのだが、やってみたらこれが最高に面白かった。子供たちと一緒にレクとして参加しながら考えてみると、そこには非常に高度な構造があった。それをある程度「操作」するような振る舞いを私がゲームの中ですることで、子供たちの満足度がさらに高まるという体験ができた。

以下では、この『四すくみ』という遊びの基本的なルールと、ゲーム内での構造を動かす「タネ明かし」をしていく。ルールだけを理解して体験した後に「タネ」を知るか、体験する前から仕掛けられた「タネ」を先に知るか。そこの判断は各自に委ねたい。


1.『四すくみ』の基本ルール

では、まずこのゲームの基本ルールから紹介する。このゲームは、よりメジャーである『三すくみ』が原型となっている。三すくみとは、赤・白・黒などの3チームに分かれ、赤→白、白→黒、黒→赤をそれぞれ捕まえるというおに遊びである。つまり、すべてのチームが「相手に追われながら、別の相手を追いかける」という構造になる。各チームに一定の「安全エリア」が設置され、その中にいれば捕まることはない(ただし、自分の標的を捕まえることもできない)。相手に捕まった場合は、相手の安全エリアにつながれ、そこからチェーンのようにどんどんその列を自陣に向けて伸ばしていく。味方がタッチしたところからそのチェーンが切れ、その「先」にいた人は解放される。

これが三すくみの主なルールだが、これを4チームに増やしたものが『四すくみ』である。

四すくみ1

今回の私の実践では、上図の4色に分け、それぞれビブスを着用して色分けをした。矢印が指す色を捕まえることになる。例えば自分が「赤」場合、「黄」を追いながら、「緑」から逃げることになる。「青」とは直接関係を持たない。このように各チームがそれぞれ他の3色と異なる関係を持つ。安全エリアの設定、タッチされた場合と解放の方法については、上記の「三すくみ」と同じルールを採用した。尚、クラスを4分割したため、1チームは8~10人ずつとなった。各円は直径約4m、円間の距離は約10mとしたが、厳密ではない。

(ちなみに、この構造は正確には「四すくみ」と呼べる状況ではないのだが、遊びのルールをイメージしやすくするために便宜上このような呼称を用いた。他にも「カルテット」や「スクエア」など使えそうなワードはあるので、自由に命名してもよいと思う。)

2.ゲーム中に起こる「局面」の変化

では、いよいよゲーム中に発生しうる構造の解明に移る。ここから先は「タネ明かし」となるので、止めるならこのタイミングであることを先に述べておく。読み進める場合は、状況を把握しやすくするために、読者自身が「赤チーム」の一員として参加している前提で記述していくことをご理解いただきたい。

【STAGE 0:開始局面】

まずは、参加者全員が自陣の「安全エリア」の中にいる状態からスタートする。はじめに確認したいことだが、このゲームの目的(=勝利条件)は「追いかけるチームを全員捕まえること」である。赤チームの立場からしてみれば、「自分たちが全滅する前に、黄色を全員捕まえる」ことで勝利となる。

では、参加者は「追う」と「逃げる」のどちらをより重視するだろうか?答えは「逃げる」である。「追う」とは、向かうべき地点や方向が狭い、すなわち目的地が非常に限定的であるため、「追う」という行為は実はかなり制限が多い。一方で「逃げる」場合はその目的地が非常に広くなるため、担保されやすい。したがって、まずはしっかりと自分の身を安全な場所に置く(=逃げる)ことを優先しながら、「追う」チャンスをうかがう行動になる。

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すると、開始直後はこのような状況になる。赤は緑から遠い位置を保ちながら、黄をねらいやすい位置を取る。このゲームで「絶対安全」な場所は自陣の円内のみであるため、円から一歩外に出るだけでリスクを背負うことになる。そのリスクを背負う勇気のない子は、円の中にとどまって様子をうかがうという選択をする。円の外に繰り出す子は、「より安全」な位置を探しながら標的を狙える位置までじりじりと進むことになる。この局面では、主に走力に自信のある子が外へ出る傾向にあり、円の外にいる子同士で純粋な追いかけっこが発生することが多い。そして、何人かがつかまり、敵陣につながれてしまう。

【STAGE 1:単色が優勢となる局面】

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今、赤は緑に2人がつかまっている。単純な走力の差によって、緑が優勢な状況となった。こうなると、赤は黄をつかまえることよりもまずは自分が安全な場所に逃げることが優先となる。しかし、ここで自陣に避難したらむしろその周りを緑に囲まれ、一歩も動けない「詰み状態」になってしまう。

そのとき、赤はより安全な場所をもう1つ見つけることになる。そこは、青チームの円のすぐ近くである。ここにいれば、緑は自分を捕まえようとする青に近づいていくことになり、なかなか赤を追ってこれない。無関係だった「第4のチーム」を事実上の盾として使うことで、円の外である程度自由を得ながら、自らの安全も確保できる戦略を見つけることになる。

【STAGE 2:協力プレーで救出する局面】

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