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エンジン好きに朗報! マルチパスウェイワークショップ レビュー
こんにちは。
クルマ好き、中でも、エンジン好きの634です。
5月末にマルチパスウェイワークショップというものが行われ、トヨタ・マツダ・スバルの3社から、将来のパワートレインに関する発表がありました。
少し時間が経ってますが、エンジン好きとして個人的に気になるワークショップだったので、レビューしてみたいと思います。
マニアックな内容なので専門用語多めです。
↓マルチパスウェイワークショップの動画になります。2時間と長いですが。。
動画は、大きく2部構成でした。
・3社CEOからのメッセージ
・各社のパワートレーン技術紹介
このnoteでは、動画後半の各社からお披露目されたパワートレインのエンジンをメインにレビューしたいと思います。
トヨタ
トヨタは、今年1月のオートサロンで、モリゾウさんから新エンジン開発の宣言がありました。
そのエンジンが今回明らかにされたと思われます。
発表されたエンジンは、
1.5L 直列4気筒 NAと過給
2.0L 直列4気筒 過給
※NA:Natural Aspiration 自然吸気の略
という2つのガソリンエンジン。(NAと過給を分けるなら3機種)
トヨタCTOからのコメントによると、特徴は以下。
・燃費と出力の両立。
・エンジンの体格がコンパクト。
・電気とエンジンのパワーバランスのバリエーションを複数選べる。
・2.0L過給は、モータースポーツも視野に。
現在のトヨタの最新ガソリンエンジンラインナップは、以下の6機種かと思います。
1.5L直列3気筒、2.0L直列4気筒、2.5L直列4気筒のNA。
1.6L直列3気筒、2.4L直列4気筒、3.5L V型6気筒の過給。
それぞれトランスミッションやHEVトランスアクスルとの組み合わせで、さらに複数のバリエーションが存在します。
これらの1.5L NA~2.4L過給までを発表されたエンジン2機種でカバーしていくことが説明されました。
今回発表された2機種もこれまでと同様に、トランスミッションやHEVトランスアクスルとの組み合わせがあると思われますが。
電気とエンジンのパワーバランスのバリエーションを複数選べるようにし、各国の環境に合わせたHEVを出す。
このようなコメントから,従来のHEVありなしという単純な仕様だけでなく、同じエンジンに対して、HEVトランスアクスルの組み合わせを変えることで、カバーする車格を変えるということになりそうですね。
発表されたエンジンの特徴であるコンパクトで、燃費と出力の両立。これをどのように実現するのかというと、
今よりもショートストロークで実現する。
ショートストロークでも混合を良くできるようになったことがカギ。
という趣旨のコメントがありました。
ショートストロークというのは、エンジン1気筒のストローク長さ÷ボア径の比(ストボア比)が小さいことを言います。
ストボア比は、一般的に数字が小さいほど出力が大きくできますが、熱効率は低下するというトレードオフの関係になっています。
ちなみに、先ほど挙げたトヨタの最新エンジンのストボア比は、1.13~1.2辺りですね(除く1.6L 過給)。
エンジンをコンパクトにすれば、クルマのデザインの自由度を高くできるという趣旨のコメントもありました。
そのようなことから、現在よりもショートストローク化でエンジンの出力を高めて、ダウンサイズにより熱効率を挽回したり、HEVでカバーしたり、クルマの空気抵抗(投影面積等)を良くすることによって、クルマ全体として燃費向上や商品性強化を狙っているのか?と勝手に想像したりしました。
2.0L過給エンジンは、モータースポーツも視野にしているとのことなので、スペックが気になりますね。
是非一般市民にも手が届くクルマに載せてほしいところです(笑)
マツダ
マツダからは、ロータリーエンジンが発表されました。
しかも、2つのバリエーション。
1つは、1ロータ横置き。もう1つは、2ロータ縦置き。
どちらもロータリーEVとして発表されておりましたが、ロータリーエンジンがこれからも無くならないことはファンにとって非常に嬉しい発表ではないでしょうか。
ロータリーエンジンの特徴として説明されていたのが以下2点。
・様々な燃料に対応できる雑食性
・コンパクトで搭載の自由度が高いこと
燃料の雑食性とは、燃えにくい燃料はきっちり燃やせるし、燃えやすい燃料や潤滑が厳しい燃料にも対応できることだと説明されていました。
私は、ロータリーエンジンについて、あまり詳しくないのですが。
この雑食性は、これから出てくる様々な燃料を視野にしていると思われ、同じシステムで対応していけるという点は、かなり魅力的に感じました。
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もう1つの売りがロータリーエンジンの体格が通常のエンジンよりも小さく、補機類の搭載自由度が高いこと。
そのため、クルマのデザインの自由度を高くすることができるし、BEVのボンネットに収めることもできるそうです。
これらの特徴を活かすことができるロータリーエンジンを存続させたい。
という非常に強い意志を感じました。
課題は従来と同じく排気ガス規制対応ですかね?
マツダCTO自らロータリーは、オワコンと言ってはいましたが、実は(?)現在もマツダはロータリーエンジンが載っているクルマを販売しています。
それがMX-30。このクルマにはBEVグレードに加えて、BEVだけど航続距離を伸ばすために、ロータリーエンジンを発電機として積んだロータリーEVというグレードがあります。
レンジエクステンダーEVと呼ばれる位置付けと理解しています。
後程、ハイブリッド方式について少し触れますが、こちらはシリーズ式に分類されます。
現在販売されているロータリーエンジンも1ローター横置きですが、今回発表された横置き1ロータ―との違いは分かりませんでした。
マツダも、スタイリッシュなクルマにも載せられることを考えているようなので、昨年のモーターショーで発表されたICONICのようなスポーツカーに縦置き2ロータリーが搭載されることを期待しちゃいますね!
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スバル
スバルからは、水平対向エンジンと組み合わせた次世代HEVパワートレインが発表されました。
新しいハイブリッドシステム(e-BOXER)は、従来のパラレル方式からトヨタハイブリッドシステム(THS)を採用したシリーズハイブリット方式へアップデートされ、燃費向上を図るとのことです。
そして、駆動方式は、もちろんシンメトリカルAWD。
過去にマツダもTHSを採用したことがありましたね。
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水平対向エンジンがなくなったら、スバルのアイデンティティは何なのか?というコメントもありましたが。
これからも、水平対向エンジン+シンメトリカルAWDは、健在のようですね。
水平対向エンジンのメリットは、エンジンが低重心で全長が短いこと。
発表されたHEVシステムは、このメリットを活かしたパッケージ。かつ、リーズナブルにAWDにすることができることが売りだそうです。
この新HEVをまずはクロストレックへ搭載するとのことです。
3社の発表中、唯一車両まで決まっていたのは、これだけでしたね。
エンジン本体については、水平対向エンジンであること以外に多くは語られませんでしたが、画像を見る限りNAエンジンのように見えます。
現在のクロストレックe-BOXERには、FB20という2.0L水平対向4気筒NAエンジンが搭載されています。
エンジンは現行のFB20のまま、今回発表された新HEVへアップデートされることになるかもしれないですね。
水平対向エンジンの課題は、燃費と後処理、カーボンニュートラル(CN)燃料への適用だそうです。
エンジン側の進化は、参戦しているスーパー耐久のようなレースの場も活用しつつ、引き続き開発が進められていくものと思われます。
スバルは、スーパー耐久参戦車両を現在のBRZからWRXに変更することが先月発表しました。
現行のWRXには、FA24という2.4L水平対向4気筒過給エンジンが搭載されており、過給エンジンの進化が楽しみですね。そして、次世代HEVの車種展開も期待されますね。
最後にご参考ですが、各エンジンの違い(直列、ロータリー、水平対向)について絵を載せておきます。
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3社からの新しいエンジンやパワートレインに関する発表は、個人的にはものすごくワクワクするものでした。
ただ、その反面、これが各社最後のエンジン開発になってしまうのではないか?と不安になったりもします。。
今回も最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。