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HIKITSUGI

4月になり、新入社員が4名入ってきてくれた。
このタイミングで、3名昇格してもらう。
今、皆その引継ぎの真っただ中。

『どう?やれそう?』
「いや、不安しかないっす」
そんな会話をしていたところ、ふと聞かれた。

『社長の引継ぎって、どうやるんですか?』

結論から言うと、私の場合はほぼなかった。

勿論、新入社員の募集の為の書類を作成してハローワークや高校に連絡する方法や、システム的な部分の使い方は引継ぎがあった。
しかしながら、社長が社長をする為の引継ぎと言うのは無いに等しかった。

思うに、引継ぎと言うものは、
①.方法を引き継ぐ
②.思いを引き継ぐ

この2種類がある。

この内、①の方がより具体的で、より詳細になっていく。
よりシステマティックにすることが望ましい。
そして、組織の最前線であればあるほど①の比重が大きく、
経営や管理であればあるほど②の比重が大きくなる。

私は、
この会社の社長としては4番目、
世代としては3世代目だ。

物心ついてから、
創業者の祖父は既に鬼籍に入っていたが、
当時会社を運営していた祖母や両親から
『継げ』と言われた事はない。

でも、創業時の苦労話や
創業者の祖父の考え方は、何度も何度も聞いていた。
つまり、自分が継ぐと決めた時点で、
②の引継ぎは終わっていたと言える。

昨年ごろだったか、
私よりも少し年下の方から相談を受けた。
その方は以前の私と同じく、
オーナー一族であり、いずれお父様が社長をなさっている今の会社を引き継ぐであろう立場でいらっしゃる。

『現社長の父のようにやれる自信がない』

そう、置かれた立場の苦しさを吐露なさった。
お話を伺っていく中で、
現在の会社の在り方と今の時代とのギャップ
そこに危機感を覚えてらっしゃることを痛いほど感じた。

「お父様のコピーになる必要は全くないと思います」

無責任かもしれないが、
そのようにお伝えした。

激動の時代と言われる。
100年に一度の大変革と言われる。
でも、50年前の日経新聞には、

今まさに時代は変革の時期を迎えたと言える。今までのやり方は通用しない。時代の変化に合わせ、どのように組織を変革していくかが重要だ

そんな内容の文章がある。
つまり、激動でない時代など存在しない
常に新しい価値観が生まれ、
常に新しいテクノロジーが生まれ、
常に【常識】は書き変わる。

その中で、
日々お客様や機械や関係各所とやり取りしてくれているフロントマンである方々はまだしも
組織全体を俯瞰して進むべき方向を決める役割の人が、今までの【やり方】を引き継ぐことにどれだけの意味があるのだろう。

引き継ぐべきは、この組織が
【誰のために】
【何のために】

ここに存在しているのか、
その【思い】で十分じゃないか

あとは、時代に合わせ、社員の方々に合わせて変えていけばいい。
分からなければ、新しく作ればいい。
そうして、自分のやり方を確立させればいいんじゃないか。

そう考えると、
フロントマンの方々の引継ぎも、
【思いや理由】
ここを抑えてもらえれば、
あとはやりやすく変えてもらえればいい。

忙しそうにしている3名を見て、
ふとそんなことを考えた。

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